小川フミオのモーターカー

ファンカーといえば「ミニ・モーク」

  • 世界の名車<第167回>
  • 2017年6月19日

当初英国ではオースチンとモーリス、二つのブランド下で販売された(画像はすべてBMW AG提供)

  • 車体と同色のスチール製のシート土台に薄いクッションでオリジナルの快適性は低かった(画像はすべてBMW AG提供)

  • 豪州で生産されたモークはイスラエルの陸軍にも納品され、平和主義的な愛好者のあいだで物議をかもした(画像はすべてBMW AG提供)

  • 幌(ほろ)使用のためのバーはオプション(画像はすべてBMW AG提供)

  • 快適性向上のため立派なシートを装着するオーナーも(画像はすべてBMW AG提供)

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 クルマにはいろいろな用途がある。なかにはファンカーというジャンルも。荷物の積載能力とか快適性には乏しくても“乗ったら楽しそう!”と思わせるクルマだ。代表的な1台が英国のミニ・モークである。

 ミニをベースに開発されたオフロードテイストの車両で、1964年に発売された。ゴルフカートみたいと思うひともいるかもしれないが、元々は英海軍の要請により開発がスタートしている。

 英軍は航空機で運べる小型の軽量車両を欲しがり(米軍で使用されたアルミニウム車体のジープ・マイティマイトみたいなもの)、ミニを設計したアレック・イシゴニスが担当した。

 結果は力不足かつオフロードの走破性に乏しいということで受注できなかった。たしかに848ccの小排気量エンジンに10インチの小さなタイヤで少ないロードクリアランスというミニのままのスペックでは、なかなか軍での採用は難しかっただろうと想像に難くない。

 そこで当時ミニを手がけていたBMCは一般に販売することに。おもしろいのは当初、税金が低い商用車登録をねらった点だ。税制上、シートは1席のみ。あとの3席はオプションだった。

 シートはスチールの土台に薄いスポンジのクッションが載せられているだけ。ダッシュボードも床もスチールむき出し。ルーフも窓もなく雨の日は薄いポリ塩化ビニール製の幌(ほろ)をかけるようになっていた。側面も同様に。ジッパーで留める仕組みだ。個人的な体験として雨の日にひと晩停めておいたら、雨漏りして室内がプールのようになっていて、バケツで雨水をかきだしたことがあった。

 英国で人気をよんだテレビシリーズ「ザ・プリズナー」(同地で67年放映)で使用されてそれなりに人気は出たものの、モークの販売はかんばしくなかった。64年の発売開始から68年までに1500台弱が顧客の手に渡ったにすぎないという記録がある。

 しかしそのあとオーストラリアやポルトガルなどで生産が継続され、前者は81年までに2万6000台が、後者は83年までに1万台が作られた。日本には90年から生産権を持っていたイタリアのカジバ(ドゥカティやMVアグスタなどを傘下におさめていたメーカー)製のモデルが輸入されていた。

 なんにもついていないけれど、クイックな操舵(そうだ)応答性などミニのいいところを備え、それなりに運転が楽しめるクルマだった。衝突時の安全性を考えると現在の交通環境に適しているとはいえないものの、東京近郊でいうと河口湖(山梨県)や熱海(静岡県)や九十九里(千葉県)などで乗ったらさぞかし気持ちいいだろう。そんなことを想像して楽しめるのもファンカーのファン(楽しみ)たるゆえんである。

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

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クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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