私の一枚

偶然が重なって出会えた人生初のオーロラ なだぎ武さん

  • 2017年6月19日

2015年12月末、カナダ・イエローナイフにて。様々な色のオーロラが見られるが、この時は鮮やかな緑色だったという

  • ミュージカルの舞台で主演するなだぎ武さん

  • 7月6日から始まる、なだぎさんが主演する「ソーォス!」

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 2015年の年末、カナダのイエローナイフという場所で、人生で初めてオーロラを見ました。雪原の空にぶわっと大きな緑色のカーテンのようなものがゆらゆらと揺れていてね。オーロラ観光で有名な場所ですが、毎日見られるわけではなく、しかもこんなに鮮やかなのは珍しいとか。そもそも僕はこの場所に来たことさえ偶然で、この体験はさまざまな偶然が重なった奇跡のようなものだったんです。

 この時は、ウルクハクトックというカナダの北極近くまでロケに行く予定でした。しかし乗り換え地のイエローナイフに来たら、現地がブリザードで飛行機が飛ばず、次のフライトは2日後。やむなくイエローナイフに滞在することになったんです。2日間することがないと思っていたら、コーディネーターさんから「明日からオーロラ観光のシーズンが始まりますが、今日の夜、よかったら行ってみますか?」と言われたんです。

 実は人生で一度はオーロラを見てみたいと思っていたので、連れて行ってもらいました。ホテルから車で1時間ほど。むちゃくちゃ寒くて、現地のカナダグースのダウンを借りて着込み、車から降りた瞬間にこの景色が目にとびこんできた。本当にすごいものを見た時は、人間は言葉を失い、ただただ見入ってしまうんだということがわかりました。

 じっと見ていたら涙も出てきてね。夜中の12時まで3時間ほど見入って、「次の日、また来ますか?」と言われて、また見られるならぜひと翌日も行ったんです。すると今度は全く出ておらず、防寒テントに入って待っていたのですが、結局出なかった。その時、日本から来ていた観光客の方には「オーロラは見られなかったけど、なだぎ武は見られた」と言われて(笑)。コーディネーターさんに後で聞いたら、その週は僕が見た日以外、一度も出なかったそうで、本当に運がよかったんだなぁと思いました。

 このロケは、ウルクハクトックに住む少年を訪ね、伝統文化と新しい文化のはざまで彼が何を考えて生活しているのかを取材するもので、5年前に今井雅之さんが行ったロケの続きだったんです。ただ、成長した少年に再び取材するのに今井さんはこの年の5月に亡くなっている。そこで今井さんとつながりのある人にということで、舞台「THE WINDS OF GOD」で共演した僕が選ばれた。だからこのオーロラは、もしかしたら今井さんが天からプレゼントしてくれたのかなと。「なだぎ、俺のために悪かったな。現地はマイナス40度で過酷だ。ちょっと飛行機を止めたから、その間にオーロラでも見て、がんばってくれ」と言ってるような気がしてね。そんなこともあったんじゃないかと思えるほど、奇跡のような忘れられない思い出です。

     ◇

なだぎ・たけし お笑い芸人、俳優。1970年大阪生まれ。NSC大阪で学び、2007年、08年のR-1ぐらんぷりで史上初の2連覇。スミス夫人、ザ・プラン9などを経て、現在は一人で活動。近年は俳優としてドラマや映画に出演する一方、09年には宮本亜門演出の舞台「ドロウジー・シャペロン」に出演以来、ミュージカルや演劇の舞台に積極的に出演している。

◆なだぎ武さん主演のミュージカル「ソーォス!」が7月6日から上演される。アメリカンドリームをかなえた男、ヨシダソースの創業者、吉田潤喜氏のサクセスストーリー。京都に生まれ、幼い頃、右目の視力を失い、そのせいでいじめを受ける。そんな彼に強い心を持たせようと母が空手を習わせるが、すっかり不良になった吉田は「もっと強くなりたい」と単身渡米。そこで人種差別などを受け、極貧の中から、空手での出会いや縁を頼りに事業を成功させていく。今や西海岸でイチローの次に有名な日本人となった彼の、ジェットコースターのような波瀾(はらん)万丈の人生をミュージカルで描く。
7月6日(木)~13日(木)全労済ホール/スペース・ゼロ(新宿)。出演:なだぎ武、渡辺大輔、ドルニオク綾乃、モト冬樹、杜けあき他

「以前から吉田潤喜さんのことはテレビなどで見て知ってまして、豪傑なオッチャンがいるなと思っていたんですが、この役をいただいて初めてご本人にお会いしました。本当にパワーのある方です。彼の壮絶な人生をどうお芝居にするのかと思っていたら、ミュージカルだったので驚きました。実は関西弁のセリフは初めて。仕事ではいつも標準語だったので、かえって緊張します。歌も十数曲もあって、覚えられるか赤信号です(笑)。あまり理屈っぽくならず、明るく、見るだけで元気をもらえるような、そんな芝居にしたいと思っています」

(聞き手:田中亜紀子)

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