本音のマイホーム

マンション価格が急落? 2020年問題は本当に起こるか

  • 山下伸介
  • 2017年7月5日
  • 東京オリンピック前後にマンション価格は本当に急落する?

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 昨年来、住宅購入検討者向けのセミナー講師の仕事をたびたびいただいている。リアルタイムにマイホーム購入を検討している人たちに会い、質問も受けるのだが、多くの人(特にマンションを検討している人)に共通する悩みが伝わってくる。それは「東京オリンピック前後に、マンション価格が急落するのではないか」という懸念だ。

 住宅業界では「マンション2020年問題」と呼ばれるが、2013年から上昇傾向にあるマンション価格が、2020年前後にいくつかの要因で下落に転じる、とする説だ(なかには「暴落」とまでいう記事もある)。未来を正確に予測することは不可能だが、真剣にマイホーム購入を検討する人に、「わからない」の一言で済ませるのは申し訳ない。そんなわけで、昨年来、そうした説を語る記事を読みあさり、諸説の検証を行ってみた。

 雑誌やwebサイトの多くの記事が価格下落の根拠として挙げていたのが、「東京都の人口が2020年にピークアウトする」という都が2014年に発表した人口予測だ。つまり、人口が減れば住宅余りになって価格が下落するという理屈だ。首都圏のマンション販売は東京都が全体の4~5割を占め、東京の価格相場が動くと周辺も影響を受ける。そうしたことから、2020年以降、東京の人口減少が起点となって都内から周辺部へ価格下落が広がっていくとする説が、少なくとも昨年から今年はじめまでは、根強く語られていた。

 しかし実は、今年3月におもしろいことが起こった。というのは、東京都が発表した最新の予測で、都の人口のピークが2020年から2025年に5年間後ろ倒しになったのだ(参考:2060年までの東京の人口推計)。しかも、全体的に予測人口が増えていて、たとえばピークから10年後の2035年にいたっても、2015年当時の人口より20万人以上多いのだ(2015年は1352万人)。

 これで「東京都の人口減少を要因とした」2020年前後の価格下落説は成立しなくなったわけだ。それどころか、予測が正しければ2035年までは今と同等以上の人口が維持されるわけで、人口減少が理由で今より価格が下がるとすれば、さらにその先ということになる。

 人口減少のほかには、アベノミクス初期の円安による割安感で日本の不動産を買った外国人が手放すことで相場が暴落するとか、オリンピックの建設需要がなくなることで建築費の相場が下落して価格も下がる、といった説が主な根拠として語られていた。これらの理屈についても、さまざまなデータで検証してみた(スペースの問題で詳細は省略する)が、いずれの説にも説得力を感じなかったというのが筆者の正直な感想だ。

 セミナーで質問を受けると、客観的なデータから確信をもって言えることだけ答えるようにしている。もちろん、筆者の分析が正しいかどうかは未来にならないとわからない。2020年でなくても「そのうち価格は下がる」と考えて、それまでマイホーム購入を待つのも個人の自由だ。

 ただ、今マイホームが欲しい人には「欲しい事情」があるわけで、待つことでそれが満たされないまますぎる数年は、もったいなくはないか。必要な時に理想のマイホームで過ごす時間の価値を考えてみてはどうか。そんなアドバイスも、最後に付け加えるようにしている。

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PROFILE

山下伸介(やました・しんすけ)エディター&ライター

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京都大学工学部卒。株式会社リクルート入社。2005年より週刊誌「スーモ新築マンション」の編集長を10年半務める。これまで優に1000名を超える住宅購入者、検討者の実例を見てきた経験から、損得では語れない住まい選びの勘所に詳しい。2016年に独立し、住宅関連テーマの編集企画や執筆、セミナー講師などで活動中。一般財団法人住宅金融普及協会住宅ローンアドバイザー運営委員(2005~2014年)も務めた。ブログはこちら

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