女子アスリート応援団

技の理論を学び直し、戦い方を再構築 レスリング・宮原優さん

  • 2017年7月4日

女子レスリング53キロ級選手の宮原優さん

  • 普段は明るい笑顔が魅力的だが、練習中は表情を崩すことがない

  • 相手の動きをよく見ながら、技をしかけるタイミングを計る

  • 2017年6月17日に行われた明治杯全日本選抜選手権2017で戦う宮原優さん(右)  (C)博報堂DYスポーツ

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 昨年のリオデジャネイロオリンピックで、全6階級のうち金メダル四つ、銀メダル一つを獲得した日本女子レスリング。吉田沙保里、伊調馨、登坂絵莉と、熱狂的なレスリングファンでなくても主だった選手の名前を挙げられるほど、その強さは広く知られている。そんなスター選手たちの陰で、挫折を味わいながらも努力を続ける選手がいる。53キロ級の宮原優さん(23)だ。東京オリンピック出場を目指し、ファイティングスタイルを再構築している。

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伸び悩んだ大学時代

 小2でレスリングを始めた。元レスリング選手の父親のもとで腕を磨き、中1のときにオリンピックや国際大会で活躍できるアスリートを育てるために新設されたJOC(日本オリンピック委員会)エリートアカデミーを受験。翌年1期生として入校すると在籍中の5年間でめきめきと実力を伸ばし、中3で46キロ級の中学日本一に。高1でユースオリンピック46キロ級優勝、高2で全日本選手権51キロ級優勝を果たす。返し技が得意で向かうところ敵なしだったが、東洋大に進学した2013年に出場した世界選手権51キロ級で2回戦負けを喫してから活躍にかげりが見え始める。

 女子レスリングは全8階級あるが、オリンピック階級は6階級しかなく、51キロ級の出場枠はない。53キロ級には“霊長類最強”の吉田選手、48キロ級には国内外で無敵の強さを誇る登坂選手。上げても下げても「いばらの道」だったが、急ごしらえで53キロで勝てるパワーをつけるより、48キロに落として調整する方が勝算があると判断し、2013年に階級を51キロ級から48キロ級に下げた。しかし、48キロ級で挑んだ2015年初夏の全日本選抜で人生初となる初戦敗退を経験。「自分はここまでの人間なんだ。オリンピックは目指せない」。失意の底に沈んだ。

 抜け出すきっかけになったのは、肩の故障で欠場した同年冬の全日本選手権だ。初めてリングの外から試合を見て、激しく心を揺さぶられた。「勝者も敗者も、どちらもすごいと心から思えた。全選手の戦う姿勢に尊敬の念を抱きました」。もう一度自分もその舞台に立ちたいと、2016年から53キロ級の選手として再スタートを切ることに決めた。東京オリンピックまで4年。体に負担がかかる減量を続けて48キロ級で戦うよりも、上の階級でじっくり力をつけることを選んだ。

自分だけのスタイルを探して

 この春から博報堂DYスポーツマーケティングに入社し、現在は1988年ソウル・オリンピックレスリング男子フリースタイル52キロ級金メダリストの佐藤満さんの指導を受けている。「佐藤監督と出会って、『自分はまだレスリングの初心者なんだ』という気持ちにさせられました」。技の決め方、相手のバランスの崩し方、タックルにいくタイミング。これまで感覚的にやってきたことを、「理論として学び直している感じ」と話す。

 スパーリングの最中にも、監督から「前、前!」「優、がぶって!」と声がかかり、その都度動きを修正していく。「がぶり(相手に覆いかぶさるような姿勢)、うまくなってきてる」の声に少しほっとしたような表情を見せることもあれば、思うように動けない自分に腹を立てているような表情を見せることも。だが、充実感を得ているのはその姿から伝わってくる。

 6月17日にあった全日本選抜の53キロ級で優勝を目指したが、“ポスト吉田”との呼び声が高いタックルの名手・向田真優選手(20)に決勝で敗れた。宮原さんは話す。「勝てなくて結果がついてこない現状は苦しい。でもこれまでレスリングをやってきて今が一番楽しい」。次から次に新しい技に挑戦していった小学生時代のおもしろさとは違う、これまでの素地を生かし監督の指示が体現できるという楽しさを感じている。

 課題は自分のファイティングスタイルを改めて確立すること。レスリングでは体格差が勝敗を分けることはない。身長差や腕の長短といった自分の体の特徴を生かせる戦い方を身につけることが勝利につながるという。「日本女子は世界最強。日本で一番になることは、世界一と同じこと。自分だけの武器を探しながら、目の前の一戦一戦を大事に戦っていきたい」

(文・渡部麻衣子、写真・高嶋佳代)

    ◇

宮原優(みやはら・ゆう) レスリング女子フリースタイル53キロ級選手。1994年4月生まれ。富山県出身。博報堂DYスポーツ所属

 宮原さんにとってレスリングは、食べることや寝ることと同じくらい生活の一部として体に染み付いている。「3日も練習しないでいるとじんましんが出ちゃうほど」。これまで、レスリング以外に興味を持ったスポーツはない。「実は運動神経が悪くて、走るのも泳ぐのも苦手。レスリングもたぶん、得意というより、すごく好きでそれだけを突き詰めてやってきたからうまくなっただけだと思います」

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