私の一枚

女王に披露した「レ・ミゼラブル」が人生を変えた 島田歌穂さん

  • 2017年7月10日

1987年、ロンドンでエリザベス女王と握手する島田歌穂さん。周囲にいるのは各国の「レ・ミゼラブル」の公演から選ばれたミュージカル俳優たち

  • ミュージカルの舞台に挑戦し続ける島田歌穂さん

  • 島田さんが出演するミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」。東京は7月19日から10月1日までTBS赤坂ACTシアター。大阪は10月15日から11月4日まで梅田芸術劇場メインホール

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 これは1987年、英国王室主催の「ロイヤルバラエティーパフォーマンス」というチャリティーコンサートに出演後、エリザベス女王陛下に謁見(えっけん)した時の写真です。この一連の出来事はまるで夢の中のことのようで、こうして写真に残っていなければ、絶対夢だったと思ったでしょう。だからこの女王陛下と握手している瞬間を撮影していただいたことに感謝ですね。

 このコンサートは毎年、各国の著名アーティストが招かれ、女王陛下の前でパフォーマンスを披露するもので、その昔ビートルズが出演したこともあるという伝統的なものです。当時、ミュージカル「レ・ミゼラブル」が世界各国で始まった頃で、いろんな国から俳優を集め、女王陛下にお目にかけようということになり、ロンドン、ニューヨーク 、イスラエル、そして日本からはエポニーヌ役の私が招待されたのです。

 私の自宅にある日、大きな立派な封筒が届いたんです。「ロイヤルって書いてある……なんだろう?」と思いました。開封すると英国王室からの招待状。「えええ?」と信じられぬまま、私と事務所の社長、東宝のプロデューサーの方と3人で急きょロンドンに向かいました。

 すごい弾丸日程だったと思いますが、あっという間にリハーサルから本番に。当時始まったばかりの「オペラ座の怪人」からサラ・ブライトマンさんが招待されていたり、私が大好きな歌手メル・トーメさんと盲目のピアニストのジョージ・シアリングさんの素晴らしいデュエットが披露されたり、層々たるアーティストばかりがそろっていて、稽古で出番の時以外は衣装を着たまま客席でかぶりつきで堪能し、サインもかなりもらいました(笑)。

 私たちの「レ・ミゼラブル」は、10分ぐらいのメドレーで各国の出演者が少しずつ歌い、私のソロ部分は日本語、イスラエルの方はヘブライ語、他のパートや全体部分は英語で歌い、無我夢中のうちに終わりました。

 謁見で女王陛下が「ワンダフル!」と握手してくださった時、練習していった丁寧なあいさつの言葉はふっとび、「オー、サンキュー。ベリーベリーマッチ」しか言えませんでした(笑)。

 この素晴らしい体験の後、私は、レ・ミゼラブルの全世界の公演の中で、ベスト・キャストに選ばれ、レコーディングに参加した90年の「レ・ミゼラブル/インターナショナル・キャスト盤」がグラミー賞を受賞する光栄な出来事にも恵まれました。

 両親の影響で音楽に囲まれて育った私は子役としてデビューし、アイドル歌手になったものの売れなくて、もんもんとした時期がありました。18歳の時にミュージカルに初挑戦し、「これが私のやりたかったことだ」と開眼したのですが、その後、数年間は鳴かず飛ばず。そんな時、「ダメもと」で挑戦したオーディションが日本初演の「レ・ミゼラブル」でした。自分が選ばれるなど思ってもみませんでしたが、それが30年前のこの出来事につながり、ミュージカルという世界の扉、そして人生の大きな扉を開いてくれた。私にとって本当に大切な作品です。

    ◇

しまだ・かほ 女優・歌手。1974年、子役デビュー。87年、「レ・ミゼラブル」で脚光を浴び、出演回数は1000回を超えた。「ウエストサイド・ストーリー」「飢餓海峡」など出演多数。女優、歌手として、舞台やコンサートなど幅広く活躍。芸術選奨文部大臣新人賞、紀伊国屋演劇賞個人賞など受賞多数。大阪芸術大学教授。

◆7月19日から島田歌穂さんが出演するミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」が上演される。80年代炭鉱ストライキに揺れるイギリス北部の街で一人の少年がバレエの才能を見いだされる。夢に向かって歩き出した少年の姿は、いつしか周囲の人々の心を変えていく。島田さんは、その少年を導くバレエの先生役。
出演:加藤航世 木村咲哉 前田晴翔 未来和樹 山城 力/吉田鋼太郎 益岡徹/柚希礼音 島田歌穂

「この作品は2009年にブロードウェーで見て、感動と衝撃で席から立ちあがれませんでした。そんな素晴らしい作品に出られる機会をいただけて感謝でいっぱいです。子供が主人公ですが、社会背景ごと描いた大人たちの骨太の物語。エルトン・ジョンの音楽に乗せた、スパイスの効いたショー・ナンバーが、より深くテーマを伝えます。必ずお客様お一人お一人にとっての大切な何かを持ち帰っていただけると思います」

(聞き手:田中亜紀子)

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