ファッションニュース

惑わされない、とらわれない服 18年春夏パリ・メンズ

  • 2017年7月11日

コムデギャルソン=[1]

  • サカイ=[2]

  • バレンシアガ=[3]

  • ヴァレンティノ=[4]

  • ルイ・ヴィトン=[5]

  • ベルルッティ=[6]

  • ランバン=[7]

[PR]

 フェイクニュースに翻弄(ほんろう)され、テロにおびえる現代社会を生きるための服とは何か。2018年春夏のパリ・メンズコレクションは着る人に内面を意識させ、人間性を保つようにうながすような服が提案された。

 フェイクファーやスパンコールを縫い付けたジャケットを身にまとうモデルたちが、次々とステージに上がる。ダンス、ステップ。楽しげなディスコ。ただ、よく見ればジャケットはリバーシブル。つまり「内面」が外に表れている。

「内面」を表現■アスレジャーの進化

 コムデギャルソン=[1]は表層的な情報に踊らされ、人間性がうつろな時代への抵抗を表現するかのようだった。装飾性の高いジャケットも、ひっくり返せば正統なテーラードになる。さらにモデルが踊りながら見せびらかしたシャツの縫製は、後ろ前。それらが見事に縦のレイヤード(重ね着)を構築する。どれがあなたの本質なのか、と服が着る人に問う。デザイナーの川久保玲は「中身が大事ということです」と語る。

 「真実は何か、判断できない時代。人々がそれぞれに考えるしかない」。サカイ=[2]を手がける阿部千登勢は、そう話した。Tシャツに記した「UNIFORM」(ユニホーム)には「制服が正しい訳ではない」との主張がこもる。フリンジを施したスリーピースは、正しさを押しつけられることへの抵抗でもある。左右違いの靴下など、自分の好きなように服を身につける。

 一方、危機感ばかり高まる現代の新たな「美しさ」を提言したのがバレンシアガ=[3]だった。テーマは「父親の休日」。欧州の都市はどこもテロを恐れ、銃を持った軍や警察が市内を見回っている。ショー会場は、その対極にあるような森のなか。首回りが合わないよれよれのシャツ、大きすぎるジャケット、のびたTシャツ。それは居心地の良い家族の記憶。いまやそれこそが「美しい」のではないか、と。

 緊張から解放されたい。それは近年、アスレチックとレジャーを合わせた造語「アスレジャー」など、スポーツ要素を混ぜたスタイルがトレンドになっている背景の一つだろう。

 進化形を示したのがヴァレンティノ=[4]だった。トラックスーツ(ジャージー)には先住民のデザインを思わせるストラップをのぞかせ、ドレスシャツは襟元にスカーフのような布がたなびく。ただ軽さの演出ではなく、そこに気品を加えてみせた。

 それはルイ・ヴィトン=[5]も同じだ。テーマは島々への旅。登山やビーチでの休息に使うバッグやサンダルに、伝統のモノグラム柄を用いて美しい調和を描いた。ベルルッティ=[6]も、上質なレザーとスポーティーなジョギングパンツなどを組み合わせ、心安らぐ柔らかな色合いに昇華させていた。

 心が解放されても、私たちはスマホやSNSをついのぞいてしまう。情報から離れられないなら、受け止める。ランバン=[7]は、その方法を探った。様々なワークウェアの「情報の断片」を服に組み込み、調和させていく。つなぎにジャケットを合わせ、コートも作業着にテーラードを重ねる、といったように。ショーの最後は、人種も服のスタイルも違うモデルたちが縦横無尽に会場を行き交った。

 デザイナーのルカ・オッセンドライバーは「(情報化社会では)誰もがどんどん拍車をかけてくる。それを魅力的なものにして抱きしめたかった」と話す。

 服を「選ぶ」ことは情報の海におぼれず、生き方を表明する一つの方法でもある。さあ、明日は何を着よう。

 (パリ=高津祐典)

 <写真は大原広和氏撮影>

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!