私の一枚

カシオペア・野呂一生さん、インド一人旅で体験した貴重な時間

  • 2017年7月18日

インドでシタール弾きのおじいさん(中央)の演奏を聴く野呂一生さん(右)。野呂さんが着ているシャツは現地で購入したもの

  • 活動40周年を迎えたカシオペアのリーダー、野呂一生さん

  • カシオペアの40周年を記念した初のセルフ・セレクション・ベスト・アルバム「VESTIGE」

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 1982年、インドへ一人旅した時の写真です。民族楽器のシタールに以前から興味があり、「名手がいる」と言う現地ガイドに連れて行ってもらったのが、絨毯(じゅうたん)や調度品が置いてある店の軒先。シタールの独特な響きと、名手と言われるおじいさんの技術のすばらしさにしばし聞きほれてしまいました。

 当時はまだカシオペアがデビューして数年の頃。所属レコード会社から「今後、海外でも活動を広げたいので、メンバーそれぞれが自立して行動できるように、一人旅をしてこい」という提案があったんです。そこで、それぞれが行きたい場所を選びました。

 他のメンバーはヨーロッパやニューヨーク、ブラジル、僕は普段なかなか行けそうにない場所がいいと考えてインドにしました。特にシタールが気になっていたのと、カレーが好きだったので、本場のカレーを食べてみたいと。行ってみたら3食カレーでがくぜんとしました(笑)。

 初めての海外一人旅は最初から波乱含みでした。インド経由のフランス行きの飛行機だったのですが、巻き舌の英語の機内放送がまったく聞き取れなくて。インドに着陸した時に降りずに座っていたら、「今降りないとフランスに行っちゃうよ」と言われ、慌てて降ろしてもらいました。すると、出発時間ぎりぎりに変なやつが降りてきたと思ったんでしょう。空港のガードマンに銃を向けられ、人生初のホールドアップを経験しました。

 旅は、北のニューデリーから入って、アグラ、スリランカ、ネパールと回り、またインドに戻りました。シタールを聞きに行ったのは、帰国する2日ほど前。遠巻きに立って聞いていたところ、珍しい外国人がずっと聞いていると思ったのか、おじいさんが喜んでくれたんですね。「こっちに来て座って聞け」とかまってくれ、つたないながらも会話ができた忘れられない時間となりました。翌日には大小二つのシタールを買い、小さいほうのシタールは今も持っています。また、この旅の間にアイデアを書きためていたものが「スパイスロード」という曲になりました。

 インドではひげを生やしていないと子供に見られるらしく、それ以降ひげをたくわえるようになり、今では僕のトレードマークになっています。旅を通して、インド人特有の「時間があってないような」流儀を見て、「こうでなくてはならない」という堅い考え方がなくなりました。それまでの僕は仕事に関して義務感が強かったのですが、自分の中で常にフレッシュな音楽を生み出せていければいいと考えるようになりました。いろんな形で影響を与えてくれたと思っています。

    ◇

のろ・いっせい 1957年、東京生まれ。ミュージシャン。カシオペアのリーダーであり、メインコンポーザー。79年にデビュー以来、フュージョン系のバンドとして常に第一線で活動。2006年に活動を休止したが、東日本大震災で苦しむ人を勇気づけたいとカシオペア3rdとして再始動。また08年に結成した「ISSEI NORO INSPIRITS」も結成10周年を迎え、アルバム「TURNING」をリリース。

◆カシオペア結成40周年を記念したアルバム「VESTIGE」が7月19日に発売される。1977年の結成以来、日本のフュージョンシーンのど真ん中を走り続け、2012年に劇的なメンバーチェンジを経て活動を再開し40周年を迎えた、その全活動を網羅した初のセルフ・セレクション・ベスト・アルバム。新曲「WHAT HAPPENS NEXT」も収録。3枚組5926円(税別)。

「自分でも40年間、よく続けてきたなと思います。僕にとって曲作りは日記を書くようなもので、演奏活動以外のすべての時間を使うライフワークとなっています。今まで作った曲は約600曲。今回は苦心して選曲し、年代別に編みました。ファンの方に楽しんでいただきたいことはもちろん、ぜひ若い方たちに聞いていただき、40年の年月で変わっていく様を実感してもらいたい。今20代で音楽をしている方が、自分たちの未来を見るような、そんな風に参考にしていただけたらうれしいですね」

(聞き手:田中亜紀子)

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