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体格を生かしたダイナミックな演武で魅了 武術太極拳・本多彩夏さん

  • 2017年8月1日

8月下旬の「ユニバーシアード競技大会・武術競技」に日本代表として出場する、武術太極拳選手の本多彩夏さん

  • 長拳の競技時間は約1分半。手足の長さを生かせる構成を、自ら考える

  • 2015年 第13回世界武術選手権大会 槍術

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 太極拳と聞くと、早朝の公園でやっている健康体操というイメージを持つ人が多いかもしれないが、近年では若年層を中心に「武術太極拳」という競技として取り組む人が増えている。法政大4年の本多彩夏さんもその一人だ。健康のために太極拳を習っていた祖母に勧められ、4歳から習い始めて20年近く。8月下旬には日本代表として、「ユニバーシアード競技大会・武術競技」に出場する。

本多彩夏さんの演武写真はこちら

 武術太極拳の種目は大きく分けて、ゆったりとした動きの「太極拳」、両足を踏ん張り発声しながら力強く拳を打ち出す技が多い「南拳」、そして一般に“カンフー”として知られる素早い所作が特徴の「長拳」の三つ。剣や刀、槍(やり)、棍(こん)といった武器を使う種目も含めると全10種目となる。それぞれ決められた競技時間の中、敵と戦っているという設定で攻撃や防御の動きを模した演武を行い、技の正確さや表現力を競う。

自分の体格を生かして勝利をつかむ

 本多さんが取り組んでいるのは、長拳、長拳短器械(剣術)、長拳長器械(槍術)の3種目。「ゆったりとした太極拳よりスピード感のある長拳の方が、じっとしていられない性格の私には合っていたみたいです」。力強く床をけって跳び上がり、そのままくるりと宙返り。着地したらすぐさま次の技へ移る。カンフー映画のアクションスターさながらの身のこなしだが、体操競技で使われる床と違って武術太極拳の床はクッション性はあるものの、スプリングはない。「開脚したまま着地する時などは、経験豊富な選手でも痛いときは痛いですね」と笑う。跳躍が必須な長拳にはケガはつきものだといい、本多さんも椎間板(ついかんばん)ヘルニアとうまく付き合いながら競技を続けている。

 10種目の中で最も習得まで時間がかかると言われているのが、槍術。槍を持って長拳の演武をするのだが、得物が長いぶん扱いが難しくバランスもとりにくい。しかしその槍術で、本多さんは2015年にシニア日本代表として初出場した世界選手権で銅メダル、2016年のワールドカップでは銀メダルを獲得した。勝因は「自分らしい演武ができたこと」。長拳の競技者は小柄な人が多く、165センチの本多さんは長拳選手としては大柄だ。「背の高い選手は小柄な選手と同じ技を同じ速さでやっても、印象として遅く見えてしまう。だから私は構成を考える際に自分の体格を生かせるダイナミックなジャンプや、動作が大きく見える技を組み入れています。あと、体をピタッと止める停止動作も多いかもしれません。他の選手より大きいぶん、見栄えがいいので」。自分の個性が生きる構成を考え、正確にこなすことが高得点につながるのだ。

人生経験も表現の幅を広げる

 小3で南関東大会の初級長拳(18歳未満の部)で初めて優勝して、誇らしかったこと。高1で初めてジュニア日本代表に選ばれてアジア選手権に出場したものの、代表メンバー12人のうち自分だけがメダルを取れず、「今でも思い出すたびしんどい」ほどの挫折感を味わったこと。これまで競技を通して様々な経験をしてきた。ただ、決して武術一色の人生だったわけではない。

 バレエや硬式テニスも習い、小学生の頃には海外に興味を持って英語の勉強を始め、高校で1年間のアメリカ留学も経験した。大学では国際関係学を学びながら、競技の遠征費用を稼ぐためにコーヒーショップでアルバイトに励んだり、友人と遊びに行ったりと充実した日々を送った。大学生活も残りあと半年、「やり残したことはないです」ときっぱり言う。「演武にはその人の内面がにじみ出る。人生経験を生かして自分にしかできない演武をしたい。見た人に『美しい』と感じてもらえたら、すごくうれしいですね」

(文・渡部麻衣子、写真・岡村智明)

    ◇

本多彩夏(ほんだ・あやか) 武術太極拳・長拳選手。1995年8月生まれ。埼玉県出身。法政大学在籍。武術太極拳は2020年東京オリンピックの正式種目として採用が検討されたが、スカッシュ、ボウリングと共に落選。本場中国を中心に、アジアでの人気が高い。

 試合の時の衣装は紫。「本当は大好きなピンクにしたいんですけど、コーチが『紫にしなさい』って言うので紫に。私は顔が濃いから、その方が映えるんだそうです」

>本多彩夏さんの写真特集

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