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ビットコインに迫るもうひとつの仮想通貨「イーサリアム」とは?

  • 2017年7月28日

ビットコインに次ぐ地位を築きつつある仮想通貨「イーサリアム(Ethereum)」。[Lightboxx/getty images]

 円やドルといった既存の通貨と同じように、インターネット上で取引することができる仮想通貨「ビットコイン」は、最近の過熱ぶりや暴落などがニュースで報じられている。

 しかしその背後で、もうひとつの仮想通貨がビットコインに迫ろうとしていることは、あまり知られていない。それが、去年だけで時価総額にして40倍も成長し、ビットコインに次ぐ地位を築きつつある「イーサリアム(Ethereum)」だ。

 イーサリアムはビットコインと何が違うのだろうか? そして仮想通貨は、私たちの実生活でどのように利用されるのだろうか? ちょっとだけ、仮想通貨の未来をのぞいてみよう。

そもそも仮想通貨(暗号通貨)とは?

 ビットコインやイーサリアムは、国や銀行などに縛られないインターネット上で取引される仮想通貨だ。その成り立ちから「暗号通貨」とも呼ばれている。暗号というと何かを隠すような怪しい印象があるが、「暗号通貨」の場合は取引を記録する上で改変や詐称がないことを保証するために、数学の暗号理論が応用されていることから、そう呼ばれるようになった。

 一般的な通貨の場合、貨幣の発行や取引の安全性確保は国や銀行などが行う。日本の電子マネーも、運用会社が集中管理しているのが当たり前だ。だが、仮想通貨は分散化したブロックチェーン(分散台帳)という仕組みがそれを受け持つ。しかも、どこかに代表的なサーバーが存在して通貨を集中管理しているのではなく、世界中に分散したネットワークで管理されているのだ。

 クレジットカードより決済の手数料が安く、使用者の個人情報も必要無いなどの利便性から、仮想通貨はネットショッピングの決済方法としても人気となり、通貨としての価値がどんどん高まってきている。

 ビットコインはそうした仮想通貨の先駆者で、2009年に登場して以来成長を続け、4月の時点で時価総額は2.3兆円にまで達している。そこに急速に迫ろうとしているのが、カナダの仮想通貨研究者でありプログラマーのVitalik Buterin氏によって2013年に提唱された「イーサリアム」だ。

イーサリアムとビットコイン

ビットコインとイーサリアムは同じ暗号通貨だが、成り立ちがまったく違う。[alfexe/getty images]

 イーサリアムとビットコインを比較するのは、ライオンとサメを比較するようなものだといわれている。それぞれ陸の王者と海の王者であるが、直接比較することが難しいというわけだ。

 両者の違いは、ビットコインは、最初から「通貨」として設計されていたのに対して、イーサリアムは「分散コンピューティングの仕組み」として設計されている点だ。

 イーサリアムのブロックチェーン上には独自のプログラム言語が用意されていて、ユーザーはそれを使って基軸となる通貨「イーサ」をやり取りする。その仕組みは、ネット空間に浮かぶ巨大なコンピューターをイメージさせるところから、イーサリアムが目指すものを説明する際に「世界コンピューター」と表現する人も多い。

 イーサリアムでは、「イーサ」をやり取りする“仕組み”も自由にユーザーがプログラムできる。例えば、私たちが株に投資をする際には、預金を取り扱う銀行や実際の取引を行う証券取引所といった中間の存在が不可欠だ。しかしイーサリアムでは、それら中間の存在は不要で、その役割をブロックチェーン上に記述されたプログラムが担ってくれるのだ。

 それを実現させたのが、イーサリアムのもっている「スマートコントラクト」という機能だ。スマートコントラクトは、ある条件が満たされると送金を実行するなどといった小さな契約を履行するプログラムで、それ自体はどこか特定のサーバー上ではなく、イーサリアムのネットワーク上で実行されている。ビットコインが通貨の分散化した台帳をもっているのと同じように、イーサリアムは分散化した契約の集合体といってもいい。

 スマートコントラクトを組み合わせれば、イーサと引き換えにデジタル的に表現されたコンサートのチケットの権利を入手するといった簡単なものから、ユーザー同士の売り買いの注文を制御する証券取引所のような複雑なものまで、さまざまな権利と取引を扱う仕組みを作ることが原理的には可能だ。

 全世界を覆う、価値の流通と取引を可能にする分散型コンピューター、それがイーサリアムなのだ。

身近になってきた暗号通貨の利用

 ビットコインであれ、イーサリアムであれ、こうした暗号通貨の利用はまだまだ投機的なものが多く、それが実生活において活用されているケースは少ない。しかし意外なところで、暗号通貨の利用が話題になることも増えてきた。

 今年5月に世界中150カ国23万台以上のPCに感染したランサムウェア「WannaCry」は、ハードディスクを利用できないように暗号化してしまい、その解除のために身代金を要求するという悪質な手口を使っていた、そのときに振り込み手段として指定されていたのがビットコインだったのだ。これは暗号通貨の取引の匿名性が悪用された形だ。

 一方で、ビックカメラのように、決済にビットコインを導入する企業も増えてきている。こちらはビットコインの利用者に中国人が多いことを見込んで、海外観光客の利用を取り込むのが狙いだ。

 イーサリアムにおいても、その特徴を利用した動きは活発化している。6月末には、イーサリアムの分散ネットワークに接続する機能をもったスマートフォン上のメッセージアプリを開発している会社が、4400万ドルの出資を集めたことが報じられ、この分野の静かな過熱ぶりを印象づけた。

世界を変えてゆく仕組み

イーサリアムを使った新しいビジネスモデルが誕生する可能性は大きいだろう。[BackyardProduction/getty images]

 抽象的でわかりにくい仮想通貨の世界だが、その可能性は私たちの生活を小さなところから次第に変えてゆくことが予想されている。

 例えば、LINEで個性的なスタンプを購入する場合を考えてみよう。現在はクレジットカードを通した決済が必要なため、こうした少額の取引をビジネスとして成立させる上で手数料が乗り越えるべき壁となっている。だが、ここに暗号通貨が導入されたなら、手数料が格段に安くなり制作者もリターンを受け取りやすくなるだろう。

 さらに、先ほどのイーサリアムを導入したメッセージアプリが実現すれば、さらに先進的なこともできる。ユーザー同士の送金だけでなく、アーティストがファンに対して特典を提供し、ファンがその権利を売買するといったことが簡単に実現するだろう。暗号通貨の普及によって、新しいビジネスモデルが誕生する可能性は大きいだろう。

 これらの延長線上に、ブロックチェーン上で記述された配当を分配する「株式会社」のような組織も考案されている。DAO(Decentralized Autonomous Organization、自律分散型組織)と呼ばれ、暗号通貨で楽曲を売買したりサービスを提供したりといったケースへの利用が想定されている。

 特に、イーサリアムの場合にはプログラム化した「会社」としてブロックチェーン上に存在させることになるので、透明性の高い運営ができるだろう。ただ、その可能性に注目が集まる一方で、法的な根拠や規制の方法など、解決すべき課題は多い。

通貨は「血液」、ブロックチェーンは「心臓」

経済の流れが、その裏側ですべてブロックチェーンとイーサリアムによって作り変えられてゆく。その可能性が、次第に現実味を帯びてきた。[derrrek/getty images]

 イーサリアムを含む暗号通貨には不安要素も大きい。加熱を続けたビットコインは、取引急増にともなう手数料の高騰などを背景とした事業者の分裂が取りざたされるなど、値動きが不安定になっている。

 イーサリアムにおいても、6月末に数百万ドル規模の売り注文を処理する過程で連鎖的な売却が発生し、その価値が一瞬だけ99.9%失われてから回復するという事件もあった。

 そうした背景もあって、暗号通貨の本質は通貨そのものではなく、むしろブロックチェーンそのものだと指摘する声も多い。通貨は取引を実現させるための血液にすぎず、むしろそれを循環させる仕組みとしてのブロックチェーンこそが「心臓」だというわけだ。

 そしてイーサリアムは、高機能な「心臓」を生み出すためのベースとして、ようやく認知され始めたばかりと言っていい。

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 友人への簡単な送金から、人気アーティストへの支援、クラウドファンディングの集金、将来性のある会社への投資などに至るまで、これまであった経済の流れが、その裏側ですべてブロックチェーンとイーサリアムによって作り変えられてゆく。その可能性が、次第に現実味を帯びてきたのだ。

(文・ライター、ブロガー 堀 E.正岳)

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