女子アスリート応援団

「恩返しのため」なら自分の限界も超えられる 空手・山田沙羅さん

  • 2017年8月15日

空手女子組手選手の山田沙羅さん。2016年の世界選手権(55キロ級)では銅メダルを獲得、全日本選手権でも準優勝を果たした

  • 食べることが大好きで、ラーメンが一番の好物。「最近はあまり時間がとれませんが、お菓子作りも好きなんです」

  • 2016年 第23回世界空手道選手権大会 オーストリア・リンツ(画像提供:公益財団法人 全日本空手道連盟)

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 「空手に対してストイック」「相手選手の分析をするのが好き」「びっくりするほど大食い」。大正大学空手道部の学生に、昨年まで同部主将を務めていた山田沙羅さんの人柄について尋ねると、声を弾ませながらそう教えてくれた。2016年、大学4年時に出場した世界選手権(組手、55キロ級)で銅メダルを獲得、全日本選手権(組手、体重区分なし)で準優勝した山田さんは、現在母校に事務職として勤務。後進の育成にも力を注ぎながら東京オリンピック出場に向けて努力を重ねている。

山田沙羅さんの写真特集

いっぱい食べて、いっぱい練習

 組手は、相手と距離を取りながら好機と見るや一瞬で間合いを詰めて突きや蹴(け)りを繰り出す対人競技。女子の試合時間は2分で、取得ポイントの数を競う。寸止めが基本とはいえ、端で見ていると当たるんじゃないかとハラハラするほどのスピード感だ。時に当たってしまうこともあるというが、故意でなければ減点にはならない。

 練習中は張り詰めた空気も、終われば一変。大食いについて尋ねると、少し恥ずかしそうに「聞きました?」と表情を緩ませた。「つけ麺(めん)1キロ食べたのは本当です。『山田と行くなら食べ放題』とも、よく言われます」と明るく笑う。

 よく食べて、よく練習するのは子どもの頃から。7歳のときに「空手と柔道、どっちやる?」と両親に聞かれ、言葉の響きでなんとなく「空手」と答えたのがきっかけだった。それから16年、休みの日でも自主的に練習し、家に帰っても見るのは空手の動画ばかりという生活を続け、小学生の時に全国大会(小6の部)で初優勝。誰にも負けたくないという一心でさらに練習に熱が入った。「相手が技を出そうとした瞬間にカウンター」を武器に、全中やインターハイでも中1、中3、高2、高3と日本一に輝いた。

つまずいて気づいた、空手をやる意味

 だが大学でつまずいた。世界で活躍する選手に「まだ1年生だから勝てなくても仕方ない」と考えたのが良くなかった。「負け癖」がつき、中高時代に勝てた相手にすら負ける時期が続いた。転機は3年生で出場したインカレ団体戦。準優勝に終わったが、大学として決勝まで進めたのは数年ぶりのことだった。「尊敬する先輩と決勝にいけたことがとてもうれしかった。同時に『私は優勝できないままでいいのか』と奮起するきっかけにもなりました」と話す。

 その後はひたすら空手に没頭した。自分はもう伸びないんじゃないかと不安になったり、他の選手をうらやんだり、時々そんな思いにかられることがあったが、「考える時間がムダ!」と気持ちを切り替えた。それも空手に打ち込む理由が「自分が勝ちたい」から「恩返しがしたい」に変わったからだ。「結果がついてこなくても熱心に指導してくださった監督や先輩の恩に、日本一になって報いたい。そのために私はがんばるんだ」と頭の中で繰り返すたび、雑念はスーッと消えていったという。

 「調子が良かったころにやっていたことは全部やろう」と、高校時代に続けていた練習記録を書き留めることを再開したのもこの頃だ。試合前にノートを見返す習慣も復活し、「これだけ練習してきたんだ。負けるわけがない」と強い心で臨めた。そして大学最後のインカレ個人戦でついに優勝。小中高大と日本一を獲得したのは女子組手史上初の快挙。この経験が世界選手権や全日本選手権での好成績につながっていった。

 目標はオリンピック出場だが、「あまり先を見過ぎずに目の前の試合一つひとつに集中していきたい。周りの期待や応援も自分の力に変えながら、一歩一歩オリンピックという大きな山に近づいていけたらと思っています」

(文・渡部麻衣子、写真・高嶋佳代)

    ◇

山田沙羅(やまだ・さら) 空手女子組手55キロ級選手。1994年5月生まれ。東京都出身。大正大学所属。身長167センチ。組手の試合は国内では階級関係なく行われるが、国際大会では5階級にわかれる。東京オリンピックは55キロ級、61キロ級、61キロ超級の3階級で行われる予定。

「試合で勝つと、いろんな方が連絡をくださるんです」とニッコリ。「『お祝いに何でも好きなものをごちそうするよ!』って、大会後はしばらくごはんの予定がぎっしりになります。思わぬ“副賞”というか……。食べることが大好きなので、本当に幸せです」

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