密買東京~遭遇する楽しみ

逆転のデザイン 読書灯になるしおり「bookmark light」

  • 2017年8月10日

リチウム電池を挟むとLEDが点灯する、しおり

 デザインという概念自体を逆転させることで生まれたプロダクト。それがこの「bookmark light」です。

 透明なシートに特殊なインクでプリントされた回路と、そこに付けられたLED。それ以外の全てをそぎ落とし、最小限の要素で構成するというデザインの発想は、アート作品の制作から導かれました。

ドイツの「German Design Award 2017」で「Excellent Product Design」部門のSpecial Mentionを受賞しました

 これまでも「密買東京」のサイトで何度かプロダクトを紹介している「共栄デザイン」。そのデザイナー岡本光市さんは、いつも気になっている存在のひとりです。

 ここ数年の岡本さんは、アーティストとしての活動にシフトしていた印象。インスタレーションを表現手法にすることが多いので、なかなか商品として作品を紹介する機会もなく、拠点が静岡ということもあって、会えずにいたのですが、久しぶりに岡本さんのアトリエを訪ねてきました。

岡本さんのアート作品。左が「form of light force transmission」。右が「light of thought」

 岡本さんとは何者なのか。それを特定するのは、なかなか難しく……。

 デザイナーとして、革新的なプロダクトの数々を生み出していますが、実はデザインの教育を受けたことはなく、その創作活動は音楽制作から始まっています。

 個人名義では、アート作品も数多く発表しています。デザインにおいてもアートにおいても、極めてシンプルな方法を用いながら、思いがけない方向から本質に迫るような作風に特徴があります。

 特に、狂気すら感じるほど、ミニマルさと圧倒的な数で表現されるものが多くて、「やられた!」と思うことがしばしば。例えば近作では、溶かしたハンダをひたすら垂らし続けて巨大な一枚の板にした「form of light force transmission」。その板に電極をつなぎ、電球を取り付けることで明かりがともります。

 ハンダの滴が無数に集まってできた平面は、メタリックな抽象画のようで、迫力がありますが、電球をともすという目的から見れば、単に電源ケーブルが巨大化したものとも考えられます。しかもむき出しなので、感電注意!

 同じようなアプローチの作品に、「light of thought」があって、これは一見すると脳のイラストに見えますが、脳のヒダを表す曲がりくねった線が、全てハンダの粒の連なりで描かれています。

 これも一粒一粒つなげていく作業を考えると気が遠くなりますが、起こる現象は先ほどと同じで、電気が通るだけと至ってシンプル。脳の中心にある小さなLEDがひとつ、かすかにともります。

しおりとしても美しいデザインです

 そんなアート作品の数々を発想するプロセスから生まれたのが「bookmark light」。

 上で紹介したふたつのアート作品では、どちらも圧倒的な手数や存在感と、そこから得られる現象の単純さ、というギャップに目が向きますが、実はもうひとつ、概念の反転ともいえる、ある共通項があります。

 それは通常は見えないように隠す構造や仕組み自体を、作品としているということです。光源を点灯させるということを目的にする場合、電気を供給するケーブルなどはうまく隠し、きれいに収めることに心血を注ぐのが普通です。

 でもこれらの作品ではその構造自体を見せることが目的であり、逆にそれが誇張されるかのように、存在を主張しています。

 岡本さんの他の作品も、私たちが生きているこの世界の根本となっている、重力や、音、環境やその循環といった、当たり前で普段は意識から排除されているような構造を、表現の対象としています。

透明なシートに電気回路がプリントされ小さなLEDがふたつ付いているだけの、シンプルなデザイン

リチウム電池のプラスとマイナスを、回路の+と―の位置に合わせて挟むとLEDが点灯します

 この「bookmark light」も、持っている機能としては、電池でLEDを発光させるというシンプルなものだけです。

 あ、あと「しおり」。

 そしてデザインも明快。透明なシートに電気回路がプリントされている。それだけ。あとは小さなLEDがふたつと、しおりの糸がついています。

 つまり作品と同じく、プロダクトデザインとして表れているのは、通電のための回路自体で、通常はそれを隠すことに向けられるデザインが、ここでは反転されている、という構造になっています。

 ちなみに補足すると、回路はインク自体に導電性を持たせ、インクジェット印刷で回路をプリントできるという特殊技術によって作られています。

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 これは東京大学発のベンチャー「AgIC」が開発した銀ナノインクという素材で、以前からある同種のものと比べて導電性能が飛躍的に向上しているのだとか。

 さらに偶然にもこのプロダクトを作ろうとしたタイミングで、ベースとなる特殊透明フィルムが開発・発表されたことで、この「bookmark light」が商品化できたそうです。

(文・千葉敬介 写真・yuichi yamaguchi)

税込み1728円。「密買東京」は、ここでしか買えないモノ、入手方法が良くわからないモノなどお気に入りのモノを、密かに発見する楽しみを提供するオンラインショップです。これまでにも共栄デザインのプロダクトをいくつか紹介してきており、他のアート作品についても商品ページ内でご覧になれます。「密買東京」の記事はこちら(※ここから先は「密買東京」のサイトです。商品を購入する際は「密買東京」の規約等を確認の上、ご自身の判断でご購入ください)

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