私の一枚

弘兼憲史 長年の憧れ「ラジオDJ」ますますマニアックに

  • 2017年8月21日

今年1月に放送されたNHKラジオの番組にて。近藤サトさん、北原照久さんと

  • このたび長年の料理経験をもとに、料理本を出版した弘兼憲史さん

  • 弘兼さんの執筆した『弘兼流 60歳からの楽々男メシ』

[PR]

 近年、年末年始に1回、NHKラジオで音楽番組をこの3人でやっています。テーマを決め、僕と北原照久さんそれぞれが選んだ音楽を放送して近藤サトさんが判定、2人の勝ち負けを決めるという内容です。北原さんはみんなが知っている曲を選ぶけど、僕はあえて人が知らないマニアックな曲ばかり選ぶので、近藤さんには不評なことが多くて(笑)。でもこの写真を撮った今年1月の放送では「ハッピーになる曲」がテーマで、僕が勝ちました。

 もともとこの番組のもととなる「音楽熱中倶楽部」という番組のDJを長年していたんです。最初は一人で毎週やっていて、後半は北原さんと隔週で担当。音楽が好きなこともありDJの仕事は夢でした。なにしろ自分の好きな曲を「どうだ、いい曲だろう」と無理やり人に聞かせる特権がある(笑)。DJの依頼は本業がものすごく忙しかった時期でしたが「やるしかない」とお引き受けしたのです。

 僕は子供の頃からラジオで音楽をよく聴いていました。出身の岩国は米軍基地の街で、FEN(Far East Networkの略。当時の在日米軍向けのラジオ放送)を聴いて育ち、小学生の頃はプレスリーやチャック・ベリーが好きで、ビートルズが出てきた時のこともよく覚えています。それから深夜放送も聞くようになり、DJへの憧れがずっとありましたね。音楽はジャンルを問わず好きです。特に昭和のムード歌謡の知識は他の人には負けない自信があります。でも音楽を仕事にしようと思ったことはありません。食べていけないと思ったんでしょうね。そう言いつつ漫画はある意味もっと食べていくのが難しいかもしれませんが(笑)、自分では漫画のほうが才能があると思っていました。

 漫画家になりたい気持ちもあり、大学時代は漫画研究会に入っていましたが、リスクを考え当時の松下電器産業に入社しました。そして宣伝部で絵を描かせてもらっていたのですが、当時、一緒に仕事をしていたデザイン事務所の人たちが夜中にみな、自分の作品を描いていたんですね。そのがんばりを見て、「よし! 自分も」と初志貫徹してみようと、会社を辞めて漫画を描き始めました。漫研時代は1コマ漫画ばかり描いていたので、一から修業して複数のコマがある漫画を作り応募するというのは、今考えると無謀で恐ろしい状況でした。でも3年経ってモノにならなかったら、デザイン事務所を起こそうと自分の中ではリスクヘッジをしていたんですよ。会社員時代に多くのデザイン事務所を見ていたので、経営のことは何となくわかっていたし。それに広告が元気な時代でしたからね。

 幸い漫画家になることができました。長年、アイデアはファミレスで考え、下書きとペン入れは事務所でという生活を続け、ペン入れの時はずっとラジオや好きな音楽をかけています。ともすれば閉じた生活になりがちですが、「島耕作」では財界の、政治漫画では政界の知己が増え、ラジオをはじめ、他の仕事もすることで、広い世界とつながっていくことも楽しんでいます。

 最近はYouTubeを見ていると、どんどんそこから音楽の旅が広がっていくので面白い半面、気が付いたらジョージア(グルジア)の曲にはまっているなど、ますますマニアックになっています。またこの写真のラジオ番組があったら、そんじょそこらの人が知らない曲をセレクトしちゃいそうですね(笑)。

    ◇

ひろかね・けんし 漫画家 1947年山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、松下電器産業( 現・パナソニック)に入社。73年退職、74年『風薫る』で漫画家デビュー。その後『人間交差点』で小学館漫画賞、『課長島耕作』で講談社漫画賞、『黄昏流星群』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、日本漫画家協会大賞、07年には紫綬褒章を受賞。『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』(海竜社)ほか、中高年の生き方に関する著作も多い。

◆弘兼さんが長年の自炊経験を生かした料理エッセー『弘兼流 60歳からの楽々男メシ』を7月に出版。多忙な生活を送る中、事務所のスタッフたちとのまかないメシをはじめ、長年気軽に自炊してきた弘兼さんならではの実用アイデアがたくさん。今日からでも生活に採り入れやすいレシピがほとんどだ。料理は企画力、計画力、段取り力など、仕事で培った能力がそのまま生かせるので、認知症の予防などにもいいし、料理することは人生を豊かにするなど、弘兼流の60歳以降の人生への考え方も参考になる。

マガジンハウス刊 1000円(税別)

「僕は子供の頃から料理が好きで、漫画家になるために会社を辞めた時、あいさつで第2志望は料理人と公言したほどです。仕事がどんなに忙しくても、ささっとおいしいものを作ってきたし、食べる方も高級レストランから居酒屋まで大好きなので、幅広く味わった経験も味覚や料理内容に生きていると思います。弘兼流の料理の何が特徴って、クックドゥなどの調味料やだしの素などをどんどん使うこと。最初からだしをとって……、などやっているとそこでつまずくし、ほとんどの家庭ではだしの素を使っていると思うしね。この本に載っているものは大体30分ででき、材料費も安いので、すごく作りやすいと思いますよ。また単なる料理のレシピ本ではなく、基本は読み物なので、僕の料理経験や思い、60歳からの生き方の提案など、盛りだくさんな内容となっています」

(聞き手:田中亜紀子)

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!