小川フミオのモーターカー

スズキ、抜群の企画力「フロンテクーペ」

  • 世界の名車<第177回>
  • 2017年8月28日

デビュー時は356cc水冷直列3気筒2ストロークエンジンをリアに搭載していた(写真提供=スズキ自動車)

  • GXCFはフロントにディスクブレーキを備えたモデルで72年に追加された(写真提供=スズキ自動車)

  • 67年発表のフロンテ360(写真提供=スズキ自動車)

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 いつまでもとっておきたいクルマというのは、コンセプトがはっきりしたものだ。この1971年発表のスズキ・フロンテクーペなどは好例。スズキ自動車の企画力は、この時代から抜群だったのだなあと感心させられる。

 このクルマをひとことで表現すると、軽のかっこうをしたスポーツカーとなる。車高は1200ミリ(現在のポルシェ911より低い)しかない。つまり重心高を低くして操縦性のよさをねらっていた。

 加えて37馬力と当時の軽としてはパワフルな2ストローク3気筒エンジンと後輪駆動方式の組み合わせ。ハンドルの動きにするどく反応して車体が向きを変えるシャープな操縦感覚は大いに話題になったものだ。

 もうひとつ、スポーツカー的とおもったのは、当初フロンテクーペは2人乗りとして開発されたからだ。スタイリングの原案は、当時マセラティのスポーツカーなどで名声を博していたイタリアのジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン。

 全長が2995ミリという制約のなかでジウジアーロも苦労したかもしれないけれど、上手な出来だと当時から感心している。スパッと切れたリア(コーダトロンカというスタイル)や躍動感のあるサイドウィンドーなど、とりわけ真横からみると美しく仕上がっている。しかもいまのスズキの製品に見られるモチーフがあり、ここが原点かと印象ぶかい。

 スズキ自動車の企画力はこのフロンテクーペに先立つフロンテ360(67年発表)でも際だっていた。なにしろ60ちかいオプション部品を用意して「レース仕様」や「ラリー仕様」が組み立てられる。それも極端にデフォルメされたかたちで、じつにカッコよいのだ。カタログ以外でこのパーツで組みあげた実車を見てみたいと思ったが、その夢はいまにいたるまでかなっていない。

 話をフロンテクーペに戻すと、2人乗りのスポーツクーペという明確なコンセプトで登場したものの、それだと不便だという市場の要望に押されて2プラス2の小さな後部座席が追加された。ポルシェ911だって2プラス2を重視しているのだから、しようがないのかもしれない。

 77年には当時の排出ガス規制に適合させた新エンジンを搭載し「セルボ」となって生まれ変わった。でも基本コンセプトは踏襲したまま82年まで生産されたのだから異例の長寿である。クルマを楽しみたい。そんな最も原初的な欲求に真正面から応えてくれたという意味でも、フロンテクーペの魅力は色あせていないようにおもえる。

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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