小川フミオのモーターカー

いままた新鮮、ディフェンダー初期型「ランドローバー」

  • 世界の名車<第178回>
  • 2017年9月4日

全長は4.4メートルで全高は2メートルを超えていた(写真提供=ランドローバー)

  • 英首相だったウィンストン・チャーチルとともに(写真提供=ランドローバー)

  • 1957年に英王室の“足”として視察に用いられた(ウィンドシールド下の文字は英海軍のドック型揚陸艦〈ようりくかん〉の名前)。背後の艦はアークロイヤルか?(写真提供=ランドローバー)

  • 最新の技術でフルレストアされたシリーズ1の車内(写真提供=ランドローバー)

  • ランドローバーでは現在このようにかつてのモデルをフルレストアする作業を行っている(写真提供=ランドローバー)

  • 当時の工場にて(写真提供=ランドローバー)

  • 49年型はこのようにフルオープンだった(写真提供=ランドローバー)

[PR]

 「バナキュラー シック(vernacular chic)」という英語の表現がよく似合うクルマだ。もう少し平たくいうと、ローカルな味わいがある雰囲気のいい製品。昔のプロダクトには国ごとの特徴があった。それがいままた新鮮だと思う。このランドローバー(の初期型)も典型的な1台だ。

 初代が発表されたのは1948年。設計者のモーリス・ウィルクスは第2次世界大戦中、米国のジープを使っていて、その出来のよさに強く印象づけられ、同様の車両を英国で作ろうと決心したと伝えられている。

 当初はウィルクスが作ったジープのシャシーに、ローバー(英国首相らも乗った当時の高級セダン)のエンジンを載せていた。そののちすべてを自社製に切り替えていった。

 実際に乗ってもよく出来ていた。サスペンションアームがよく伸びてデコボコが大きい路面での地面のグリップを失わないし、エンジンだって高速は不得意だが、低回転域でのトルクが太いから急勾配の斜面などで力強さを発揮した。

 日本では最後は1000万円以上もする高額車になったが、現地では生活の大事なパートナーとして扱われてきた。英国のクレイアニメーション「ウォレスとグルミット」にも登場する。そこで見られるように、田園地帯で泥まみれになった姿がもっとも似合うクルマだ。日本のランドクルーザーと近い存在感である。

 英国にはほかにも“バナキュラー シック”な製品は多くある。たとえば日本でも人気の“バブアー”のロウびきのフィールドコートや、“ハンター”のゴムブーツがすぐ思いつく。雨も多く、田園地帯に出かける機会も多い英国ならではの製品。よその国からすると、そんな異国性こそ大きな魅力とうつるわけで、ランドローバー(のちにディフェンダーという名称になった)も同様だ。

 スタイリングも直線と曲線で構成されているだけで複雑な面はない。そこに割れても交換が容易な規格品の丸型ヘッドランプがはまっているだけだ。それでいていい雰囲気がしっかりある。自動車デザイナーに言わせるとその理由は、車輪とボディーのバランス、専門用語ではプロポーションがいいためだそうだ。

 スタイリストという職業が確立されておらず、マーケティングという概念もほとんどない時代の製品に、半世紀以上たっても魅力的なものが多いのはどういうわけだろう。

 いままた英国でメーカーによる初代のレストア(新車同様に修復)と販売が始まった。それを見ていると(今回のカラー写真はレストア後のもの)、デザインとはひとの生活から生まれるという大原則を思い出す。それがグッドデザインであり、そのよき証明がこのランドローバーなのだ。

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!