横田尚哉 誰のため?何のため?

視聴率って何のため? これからの時代の測定法を考えてみる

  • 文・横田尚哉
  • 2017年9月4日

視聴率って何のためにあるのだろう?(c)gettyimages

 最近は、テレビで情報を得るよりも、インターネットを通じて情報を得るコトのほうが多くなってきたようです。多くの人が、テレビの画面を見ている時間よりも、スマホの画面を見ている時間のほうが多くなってきたのではないでしょうか。防災上の緊急速報を国民に伝える手段も、テレビよりも、スマートフォンを使うほうがより確実になってきました。

 そうなると、テレビの視聴者総数は減少していくということであり、番組を評価する指標としての視聴率の役割は変わっていくような気がします。そもそも、視聴率って何のために存在するのでしょうか。気になったので、ファンクショナル・アプローチで分析してみました。

 視聴率が注目され始めたのは、カラーテレビが一気に普及した1970年代前半です。カラーテレビの世帯普及率は、「主要耐久消費財の普及率」(総務省)によると1970年で26.3%、1975年で90.3%です。たった5年間で一気に普及しました。

 普及の背景には、一億総中流階級の意識と豊富なコンテンツの提供でした。キャンディーズ(73年)やピンクレディー(76年)がデビューし、「太陽にほえろ」(72年)や「徹子の部屋」(76年)がスタートしています。『第三世代の経営力』(致知出版社)でも詳しく書いていますが、70年代は、人々の生活のすべてが大きく変わった時代でもあります。

 番組提供者側は、無料で《コンテンツを流す》コトで《視聴者数を増やし》、それを媒体にして《広告枠を売る》。そうして《収入を得る》ビジネスモデルを考えたのです。つまり、視聴率には、スポンサーに対して《広告到達度を伝え》、広告媒体としての《価値を示す》という重要な使命があります。その結果、《視聴率を上げる》コトは《広告掲載費を高める》コトにつながり、ビジネスとしての《収益性を上げる》のです。番組の内容よりも、広告到達度に意識が集まるほど、視聴率至上主義に陥っていくのです。

 その《視聴率を知る》ために調査しているのが1962年に設立された株式会社ビデオリサーチです。対象世帯のテレビに特殊な装置を取り付けて、視聴率を集計しています。設立当時、このような方法で調査するというのは、画期的で革新的だったでしょう。ただ、その装置を設置した世帯や技術は明らかにされず、独占的に展開していきました。

映像配信サービスの普及は、“視聴率”の持つ意味を変えつつある(c)gettyimages

AI搭載スマートスピーカーで測定できる!?

 しかし、《視聴率を知る》方法は他にないのでしょうか。テレビに取り付けないとダメなのでしょうか。ファンクショナル・アプローチ的に考えれば、どの番組が選択されているかがわかればいいわけです。

 たとえば、リモコンの操作からデータを取得することも可能だと思います。テレビに付属しているようなリモコンではなく、もう少し賢いリモコンであれば、いまテレビがどの番組を映し出しているのかを把握することは簡単なのではないでしょうか。

 折しも、今年はAI搭載スマートスピーカーが注目を集めています。これは、音声で指示すれば、AIがその指示を認識して、音楽再生や家電を操作してくれる装置です。インターネット接続が前提の装置ですから、今後さまざまな機能が追加されていくことでしょう。アマゾンの「Amazon Echo」、グーグルの「Google Home」、アップルの「HomePod」、LINEの「Clove WAVE」などが出ています。

 リビングでテレビを見る時に、スマートスピーカーで操作する世帯が増えてくると、AIがデータを解析して《視聴率を知る》コトが可能になってくるでしょう。もしかしたら、番組中に、リアルタイムで画面に表示させることも可能になってくるかもしれません。

 視聴率のデータの取得と解析は、今の時代、もっとオープンに行われていくべきだと思います。そうすれば、自由度は増し、さらに最新のテクノロジーを取り入れ、時代にあった姿に進化していくでしょう。

 むしろ、視聴率から広告到達数を間接的に計算するのではなく、インターネット広告のように、CMの表示回数を直接カウントするほうが明確なように思います。技術的には、スマートスピーカーにしか聞こえない音声信号をCMで流したり、CM中の言葉や音楽で簡単に識別したりすることも可能だと思います。

 CMビューよりも番組ビューが評価されるような、質の高いテレビ番組が増えることを願っています。

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ファンクショナル・アプローチ(FA)では「役割=ファンクション」を《》で表しています。

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PROFILE

横田尚哉(よこた・ひさや)

横田尚哉

経営コンサルタント、改善士。株式会社ファンクショナル・アプローチ研究所代表取締役社長。大手コンサルタント会社、本社部長から単身独立。世界最大の企業・GE(ゼネラル・エレクトリック)の改善手法をアレンジして10年間で総額1兆円分の公共事業の改善に乗り出し、コスト縮減総額2000億円を実現させた実績を持つ、業界屈指のコンサルタント。著書に『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ』『問題解決のためのファンクショナル・アプローチ入門』(いずれもディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ビジネススキル・イノベーション』(プレジデント社)、『第三世代の経営力』(致知出版社)、『問題解決で面白いほど仕事がはかどる本』(あさ出版)など。

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