キャンピングカーで行こう!

キャラバンサロン2017リポート その3

  • 文 渡部竜生
  • 2017年9月13日

ユニークなデザインのCOCO(デスレフ社)。後部から側面まで回り込んだオーニングは25m²もある(写真:Dethleffs GmbH&Co.)

 今年も大きな変化はなかった……とは言うものの、ヨーロッパキャンピングカー業界にとっては新型発表の重要なショーです。各社の2018年モデルがずらりと並んだ会場で、いくつか気になった車両やパーツをチェックしてみました。

小型・軽量化もここまでいくかとびっくり!

■デスレフ社「COCO」

 日本では自走式が多いデスレフ社(ドイツ)ですが、元々はトレーラーのメーカーです。ここ数年は他社同様、大型モデルのトレーラーばかりでしたが、今年のキャラバンサロンで発表されたプロトタイプ・COCOは車両総重量638kg! 日本でいえば「けん引免許不要サイズ」です。軽量を売りにしたモデルではありますが、軽量=小型かといえば、さにあらず。むしろ「これで638kg?」と思うほど大柄です。ブースにいた担当者に聞けば「素材から見直して軽量を実現した」とのこと。

 確かに室内に入ってみると、従来よく見たヨーロッパトレーラーとは雰囲気がかなり違います。各設備は必要十分な内容ながら、素材は従来のものとは違った質感。使用されているパネルや木材は十分吟味され、言葉どおり、軽量さと耐久性を追求したなと感じられます。

 インテリアはよくある木目調は一切なし。白とグレーを基調とした、一言でいえばシンプルモダンなデザインです。見た目は色数を抑えてシンプルですが、収納の数はむしろ多め。使い勝手はよさそうです。収納が大きいぶん壁面をとられ、ヨーロッパ製トレーラーとしては窓が小さめですが、室内は十二分な明るさ。それもそのはず、大きな天窓が三つも設けられています。

 設備関係はヨーロッパのトレーラーらしく、キッチン・トイレ・シャワーとフル装備。現時点ではまだ参考出品とのことで詳細なスペックは発表されていませんが、単なるデザイン提案にとどまる出展ではなく、展示された車両自体かなりのところまで煮詰めて作り上げられた印象でしたので、具体的な商品化は視野に入っていることでしょう。この内容なら、ファミリーで使うのにも十分な仕様になりそうです。

 外観も曲面を多用したユニークなデザイン。黒い帯状窓枠のルックスも、なかなかモダンです。

 展示では後部からサイドに回り込む巨大なオーニングが取りつけられていました。このオーニング、通常の巻き取り式に比べると設置にはひと手間必要ですが、なにしろ大きく(資料によれば25㎡!)快適そうです。オプションになるのか、標準装備になるのかも気になりますが、見た目、機能ともに注目していきたいです。

 さて、このCOCO、価格はいかほどになるのか。市販はされるのか? 日本への輸入は? いろいろと気になるところです。

■Possl社「CAMPSTER!」

 多数並んでいた小型バンコン(商用バンをベースに室内にキャンピング装備を架装した車両)の中でも、特に目立っていたのがPossl社の「CAMPSTER!」でした。

CAMPSTER!(Possl社)のベース車両はシトロエン・スペースツアラー(写真:Possl Freizeit und Sport GmbH)

 運転席や助手席を回転式にしてダイネット(ダイニングスペース)兼用にしたり、2列目3列目シートのスライド量を大きくして取り外せるようにしたり、多彩なシートアレンジはもはや定番ですが、「CAMPSTER!」はさらに一歩進んで、キッチン部分が丸ごと取り外し式に! シンクとコンロ部分を車外に持ち出せばアウトドアキッチンがすぐ完成、というわけです。また、調理の予定のないキャンプなら、外して家のガレージに置いてくることだって可能。それだけ室内は広々と使えます。

 あいにく日本では、法制度的に問題がありますが(キッチンは8ナンバーの構造要件なので取り外し式にはできないなど)コンパクトなクルマの使い勝手を向上させる、一つの方法といえるでしょう。

■増えた? スライドアウトパーツ

 使用環境の問題なのか、ヨーロッパでは一部の大型モーターホームを除き、あまり装備されてこなかったスライドアウトですが、今回のパーツ展示館には複数の会社の展示がありました。

トレーラーに設置できるスライドアウト機構の展示。複数の企業がこうした提案をしていたので、来年以降、スライドアウトが増えるかも?

 いずれもトレーラーや小型のキャンピングカーを意識したもので、あくまでB to B(ビジネス客向け)展示です。後付けはできませんが、各社技術やアイデアを競って「いかにコンパクトで」「効果的な」スライドアウトができるかをアピールしています。車両の小型軽量化が進む一方で、車体は小さく、居住空間は大きく、という要望の表れともいえるでしょう。室内レイアウトの定番化が進むマーケットも、こうした流れを受けて、来年以降変化があるかもしれません。

興味深いプロトタイプも

■デスレフ社「e-mobile」

 シェル全面に太陽電池が張り付けられた、ちょっと異質ないでたちで目立っていたのがE-Mobile。なんと電気自動車のキャンピングカーです。イタリア・イヴェコ社の電気自動車デイリー・エレクトリックのシャシーに架装を施したキャブコン(専用のキャビン付きシャシーに居室部分のボディーを架装した車両)で、装備はキッチンのセラミックコンロをはじめコンプレッサー式冷蔵庫に蓄熱式床暖房などオール電化仕様。

全身に太陽電池をまとったデスレフ社のe-mobile。航続距離の点などで、実用というには「?」がつくが、未来のキャンピングカーはこうなるのかも?

 ただし、ベースとなったデイリー・エレクトリックは近距離の集配用などを前提にしたモデルで、走行距離は1回の満充電で280km(それもトラックとして発表されている数値ですので、この架装ではもっと短いでしょう)と、ちょっと物足りません。

 今回の展示はあくまでプロトタイプで純粋な提案、にとどまっています。ただ、ヨーロッパ各国が相次いで化石燃料使用の新車の販売禁止を発表する中で、それをにらんだ動きともいえるでしょう。各自動車メーカーとも電気自動車の開発はますます加速するでしょうから、その余波がキャンピングカーにどう及ぶか。こちらも要注目です。

■フィアット・デュカトに4X4登場か?

 こちらもあくまでプロトタイプの話で恐縮ですが、市場を席巻するデュカトの4輪駆動仕様車がフィアットブースに展示されていました。

 実は一昨年のキャラバンサロンにも4駆タイプは登場していましたが、今回のものはそれとは別物。ドライブトレーンは非常にコンパクトになって床下に収められており、きれいな仕上がり。見た感じ、試作感があまりありません。

 それもそのはず、駆動システムを製作したフランス・ダングル社は4輪駆動への改造を専門に行う会社で、デュカトOEMのシトロエン・ジャンパーをその改造ラインナップに加えています。そんな「社外製造」をフィアット社のブースに並べること自体、同社が4輪駆動を意識している証拠でしょう。

 ブースのセールス担当者に聞いてみると「市販化は未定ですが、反響次第では……」と含みのある返答。多様性を模索するキャンピングカーマーケットですから、もしかしたら……と期待せずにおれません。

 毎年通っていると、大きな変化のある年ばかりではありません。しかし市場拡大中の日本のキャンピングカー業界から見れば、成熟したヨーロッパ市場は、一歩先を行く先輩の姿です。

 地球規模で叫ばれる、化石燃料使用の是非や環境問題もひとごとではありません。キャラバンサロンで展開されているものすべてが、日本に影響するわけではありませんが、毎年見続け、詳細に比較することで見えてくるフィロソフィー(哲学)の面白さを実感した、今年のドイツ視察でした。

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PROFILE

渡部竜生(わたなべ・たつお)キャンピングカージャーナリスト

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サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫7匹とヨメさんひとり。

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