マッキー牧元 エロいはうまい

<39>旅のお供に。贅沢感が味わえるちらし寿司/八竹

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2017年9月14日

京風上ちらし

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 贅沢(ぜいたく)な食事とは、別に2万円や3万円を支払う食事だけではない。

 日常に少し余裕を持たせて、豪華にするだけで、贅沢な食事を演出することができる。

 例えば東京駅から新幹線に乗って、旅に出るとしよう。

 東京駅で駅弁を買う。

 今日本で一番駅弁が充実している駅であるから、選びがいがあるが、それではあまり贅沢は味わえない。

 僕の場合は、時間より早く出て、四谷に寄り、「八竹(はちく)」でちらし寿司(ずし)を買うのが、贅沢の準備である。

 「京風上ちらし」2700円。駅弁なら3個変えてしまう値段である。

 しかし、値段が高いので、贅沢感が味わえるというのではない。内容が極めて質が高いのである。

 ふたを開ければ、華やかな光景が広がっている。

 小鯛〆にサヨリ、トコブシに穴子、小魚佃煮(つくだに)にエビ、栗にタケノコ、サヤインゲンに酢ばす(酢れんこん)、はじかみに瓢箪(ひょうたん)の漬物、焼き蒲鉾(かまぼこ)にシイタケにキャラブキと、15種類の種がひしめき合って、早く食べてねと手招きしている。

 さあどこから手をつけようか。サヨリから行って、タケノコ、酢ばす、小鯛と続き、最後は穴子で締めるという味の淡いものから濃い味へ移行していこうか。

 それとも、上の種だけでビールや日本酒でやってから、後でじっくりご飯を食べようか。

 さらには、小鯛や穴子は、酢飯と一緒に握り寿司風にして食べてもうまい。

 いやあ、思いは千々に乱れる。

 いやどう食べても一つ一つの種の完成度が高いので、受け止めてくれる。

 エビはしっとりした食感でパサつかず、ほのかな甘みがあって、頭には少しだけミソもある。

 サヨリは厚く存在感があって、小鯛の締め具合がちょうどいい。

 トコブシはむっちりとして歯が喜び、穴子はツメが甘すぎずに、穴子自体の香りがある。

 食べやすいように包丁目を入れられた焼き蒲鉾は、香ばしく、タケノコは歯ざわりよく、上品なだしがしみている。

 そして隠れた主役、薄焼き卵はふんわりとして、優しい甘みに満ちている。

 つまり一分の隙もないのである。

 だから種を一つ食べるたびに、笑みがこぼれる。

 裕福な気分になれる。2700円で幸せになれるのである。

 そして何より、新幹線の車内でこの弁当のひもをといて、ふたを開けた瞬間、隣の人が羨望(せんぼう)のまなざしを送るのが、たまらない。

     ◇

八竹
〒160-0014 東京都新宿区四谷3の11
電話番号:03-3351-8989
http://yotsuya-hachiku.co.jp/

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大阪寿司の店。ふんわりと厚めの薄焼き卵で包まれた「茶巾ずし」(1ケ)490円、鯖(サバ)や鰺(アジ)、穴子や小鯛の「バッテラ」(1人前)1480円~、「太巻」(1本)950円、鯖や鰺の握り寿司の上にゆず風味のおぼろ玉子を乗せた「黄味ずし」1480円~など、どれを食べても、上等。持ち帰りのほか、四谷は店内でもいただくことができる。

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PROFILE

マッキー牧元(まっきー・まきもと)タベアルキスト&味の手帖編集顧問

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1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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