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メルカリはもはや「ライフスタイル」。その拡大する経済圏の未来とは?

  • 文・ライター、ブロガー 堀 E.正岳
  • 2017年10月3日

 メルカリの快進撃が止まらない。スマートフォン上のフリーマーケット(フリマ)アプリの「メルカリ」は、今年6月の時点で国内ダウンロード数は5000万を突破、月間の流通額は100億円超に達するという成長ぶりだ。

 アメリカ、イギリスなどでもサービスは拡大しており、米国でのダウンロード数は2500万を越えるなど、これまでオークションサイトeBayの独壇場だったシーンにおいても、次第に存在感を強めている。

 それだけではない。メルカリは近所のほかのユーザーと会って製品の売買や貸し借りを可能にする地域コミュニティアプリ「アッテ」のサービスや、本・CD・DVD専用のフリマアプリの「カウル」、ブランド品に特化した「メルカリ メゾンズ」を立ち上げるとともに、自転車シェアリングサービスの「メルチャリ」のサービスを都内で2018年に始めるべく準備を進めている。

 スマートフォンを軸足にして仕掛けられてゆくさまざまな戦略は、まさに「メルカリ経済圏」の誕生といってもよい広がりを見せ始めている。

手軽さがウリのフリマアプリ「メルカリ」が人気だ

メルカリという、ライフスタイル

 メルカリの人気の秘密は、とにかく手軽なところだろう。普段の生活で使っていないものを見つけたら、スマートフォンで撮影、値段を決めたらサッと説明を書いて10分ほどで出品が完了。そして、売れ行きをアプリからチェックできるという、わかりやすい仕組みになっている。

 もともとファッションや化粧品、アクセサリの取引が中心で、20-30代の女性に人気が高かったが、最近は40-50代の男性の出品が増加している。

 筆者の周囲でもそうした「中年」メルカリユーザーの登場はあとを絶たない。そうしたユーザーが取引しているのは車や自転車のパーツ、パソコンやその周辺機器などといったものだ。

 彼らが口をそろえて言うのが、「メルカリは中毒性がある」「身の回りのものを全部売ってしまいたくなるくらい」という使用感だ。

 それは単に欲しいものを安く見つけて購入し、納得のゆく価格で売ることができたというだけではない。気軽なチャットで取引を決めてゆくところに、「自己肯定」されたような喜びがあるのだという。

スマートフォンで撮影、値段を決めたらサッと説明を書いて10分ほどで出品が完了

 また、メルカリに出品されている商品にも特徴がある。「トイレットペーパーの芯」などの小学校の工作の材料や、既製品の一部のパーツのみといったように、これまでのECサイトがカバーしきれていなかったミクロな需要まで取り込んでいるのだ。

 地域コミュニティアプリ「アッテ」も、地元についての気軽な質問のやりとりから、催し物の集客や簡単な古物の取引に至るまで、従来のECサイトが可視化できていなかった人と人のつながりを誘引する動きをみせている。

 つまり、メルカリの「経済圏」は、単なる商品の販売だけで構成されるのではない。スマートフォンを軸にしたユーザーの自己実現や、ユーザーのニーズの拾い上げによって成り立っているといっていい。少し大げさに言うなら、メルカリという「ライフスタイル」がアプリを通して私たちの日常に入ってきているということでもあるのだ。

「メルカリの使い勝手の良さは、家中のものを売ってしまいたくなるほどだ」 [gettyimages]

Amazonの歴史からみるメルカリの未来

 いまのメルカリと同じような状況が、かつてAmazonがたどった道であることを思い出してもよいだろう。

 今のサイトからは想像がつかないかもしれないが、1994年の創業当初のAmazonはオンライン上の書店に特化しており、その主な競争相手はバーンズ&ノーブルのような店舗型の大型書店だった。

 Amazonが他業種にも拡大を開始したのは1998年、創業から4年が経過してからのことだ。それからは音楽CD、コンピューター周辺機器、Zappos社の買収に伴う靴の販売や服飾など、ブラウザ上のアマゾンのサイトのトップにリンクが一つ増えるたびに、Amazonの経済圏が広がっていった。

 Amazonの歴史は、現実の店舗がウェブ上のECサイトによって置き換えられ、やがてクラウド上で書籍も音楽も映画も消費されるというこの20年の消費の変化の歴史そのものだ。

 メルカリもまた、似たような経済圏の広まりを体現し始めている。Amazonの成長を牽引したのがパソコン上のブラウザだったのに対して、メルカリの成長を支えているのはスマートフォン利用者の拡大、いわゆる「スマホシフト」の流れだ。

 かつてのAmazonで商品のカテゴリが増えたのと同じように、カウル、アッテ、メルカリ メゾンズと、アプリが一つ増えることが、現実において可能になる取引やサービスが一つ増えることを意味している。

 では「スマホシフト」で一体何が変わったのだろうか? メルカリは「スマホシフト」の時代のECサイトであると評価されることが多いが、このスマホシフトにも2段階があることを意識すると、今後向かう先がみえてくる。

 前段は、パソコンのブラウザでできていたことが、スマートフォンでも可能になるという意味でのスマートフォンへのシフトで、これについてはほぼ完了したとみてよい。

 後段の、今まさに進んでいるスマホシフトは、ひとり1台が当たり前となったモバイル端末ならではの仕組みだ。日本ではあまりなじみがないが、Uberのようなライドシェアリングサービスをイメージしてほしい。位置情報などを元にして依頼者を特定し、本人確認も、決済も、すべてがアプリの中で完結する。スマホがすべての鍵となり、サービスが運用されるタイプのものだ。

 メルカリの匿名配送の仕組みや、アッテなどといったコミュニティが成り立つのも、スマートフォンが本人とサービスを紐付ける導線となるからだ。

「スマホシフト」の時代のECサイトには、単なる物の配送だけではない可能性が生まれてきている [gettyimages]

 この仕組みは、これからの対面型サービスを飲み込んでゆく大きな可能性をもっている。

 たとえば、アッテの仕組みを応用して、家庭教師や、訪問型のマッサージといったサービスの派遣を考えることも可能で、その一部はメルカリが出資する外国語学習のシェアリングアプリ「フラミンゴ」で実現している。

 また、メルチャリのサービスの先に、近所の個人が別の個人に対して荷物を配送するサービスといったものの構築も不可能ではない。

 メルカリとその姉妹アプリの魅力が製品の売り買いだけでなく、スマートフォンを通したユーザーの自己実現や出会いといった側面をもっているのには、そうした未来に向けた意味合いもあるとみてよいだろう。

広がる経済圏、増える問題も

 その一方で、メルカリには現金などの出品や、盗品の流通などといった問題点の指摘もある。

 9月にはコンピューターウイルスの入手方法がメルカリ上で販売され、大阪府の中学生が児童相談所に通告されるなど、これまでは考えられなかったような出品が行われるケースも増えている。

 また、犯罪性はなくても、大学の出席カードが販売されていたり、学校に提出するレポートの原稿が販売されるなど、常識を逸脱した出品も散見される。

 こうした問題を背景に、ヤフーとメルカリが共同でサービスの安全性に向けた課題に取り組むEC事業者協議会が設置されるなど、対策に向けた動きも活発化している。

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 特殊な、問題のある出品が行われるのは、メルカリがいままで可視化されていなかったニーズや、社会のクラスタにまで届いたということの証しとも言える。

 メルカリを通して新しいECサイトの可能性がひらきつつあるのと同時に、今後もしばらくは問題対策の観点で未知の領域が続いていることを意識する必要がありそうだ。

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