私の愛用品

AR三兄弟・川田十夢さんの発想の可能性を広げる、AR(拡張現実)対応ファブレット

  • 2017年10月5日

 AR(拡張現実)アプリケーション開発ユニット・AR三兄弟の長男として設計を担当する川田十夢さん。きゃりーぱみゅぱみゅの舞台演出や、ラジオのナビゲーター、『情熱大陸』などのTV出演、舞台の脚本・演出、ファッションブランド・アンリアレイジとのパリコレでのコラボレーション、著書『AR三兄弟の企画書』(日経BP社)の執筆など、ジャンルを問わない活躍をされています。まだこの世にないものを作り出す、川田さんのその自由な発想をサポートする、デジタルな愛用品をうかがいました。

  

ARが使えるファブレットで叶(かな)えられる世界がたくさんある

――川田さんの愛用品は「Lenovo Phab 2 Pro」。これはスマホとタブレットの間の「ファブレット」と呼ばれるものですね。

 メーカーから「すごい機種が出るから、使ってみて」と言われ、気軽に使い始めたら、明らかにいろいろなことができて、面白いと思いました。最近のスマホはカメラが二個に増えたことで人間の目に近づき、二方向からステレオカメラでだいたいの距離を測り、立体を認識できるようになりました。この「Lenovo Phab 2 Pro」は、二個のカメラにさらに赤外線センサーが付いていて、正確な空間の距離や長さが常に計れるのです。それができることによって叶(かな)えられる世界がたくさんあると思います。

  

――AR三兄弟では、これをどう活用していますか?

 AR三兄弟の中で僕は設計を担当していて、このような端末に対応するアプリケーションをどんどん開発しています。一番わかりやすいのが、空間をその場でポリゴン化して、エクスポートする技術。これをメールで送ったら、受信先では、空間を空間のまま読み込める。技術的に何がすごいかというと、360度カメラだとカメラの周りしか見えなかったのが、このアプリでは全体を回り込んで撮影できてしまう。

――それが初めて可能になった機種ということですね。

 そうです。こういう使い方は世界的にもまだされていません。ちょっと未来が変わりそうでしょう? 今、自分たちでいろいろな場所で試しています。たとえば、これで撮影しながら渋谷のスクランブル交差点を渡り終えたら、自分が歩いていたところがデータ上で俯瞰(ふかん)して見えちゃうのです。空間をスキャンしているから、上からも見ることができる。

 ドローンを飛ばして撮影したような感じで、新しい体験でした。空間を測る建築用のセンサーはすでにありますが、とてもじゃないけど一般の人は使えないし、大きいし、値段も400〜500万円と高い。でもこれは5万円くらいで、持ち歩ける大きさで、最新テクノロジーが使える。これが普及すると、ライフスタイルが変わるのではないかと思います。

  

――そのアプリは、具体的にはどういう使い方ができるのでしょうか?

 今、知り合いの写真家などにこのアプリをどう使うかを聞いてまわっています。レガシーな写真家は「やめてくれ」って言いますけどね(笑)。後から空間に割り込んで、写真を撮り直したり、フォーカスを変えたりもできるから。他にもアニメーション作家、家具屋、建築家など、プロユースの場面はドラスティックに変わっていくと思います。でも、僕は一般の人が「すごい!」、「よかった!」と驚いてくれることを目指しているので、一般の人向けの使い方を考えています。いちばん一般の人にとって画期的なのは、例えば朝に撮影した写真を夜の場面に変えること。時間や時代をさかのぼることが、テクノロジー的にはできてしまうのです。そうなった時に、次の段階の芸術が生まれるのだと思います。

――川田さんはプライベートではどういう使い方をしているのですか?

 AR三兄弟の次男の部屋を撮ってもらって、僕の部屋に居ながら次男の部屋を体験するというのはやっています。全然おもしろくないですけど(笑)。でも、これがたとえば好きな相手やアイドルの部屋だったら、かなり気分が上がりますよね。空間を再現するアプリなので、そういう試し方もできます。

  

小さいころから見続ける悪夢から、今までにないARアプリが生まれた

――そのような仕事のアイデアはどういう時に思いつきますか?

 形にしていないだけで、いつも思いついてはいて、基本的に自分のアイデアは紙とペンから生み出します。プログラム言語にする前に、紙にまずイメージを書き起こし、ラフをたくさん書いて、そこから何を実装しようかと考えます。

――どんどん案件が来る中、別々の新しいアイデアを考えなくてはならない状況かと思いますが、同時進行で進めるポイントは?

 案件ごとに頭の中で区切っちゃうとダメだと思いますね。区切っていたら、やっていられないです。次から次へと仕事がくるから。たとえば以前、きゃりーぱみゅぱみゅさんのライブの舞台演出のようなことをやった時、それは、プログラムを組むことやアプリの仕様を考えるのとはまるで違う仕事なのですが、他の進行している仕事も頭の中にあることで、別のジャンル同士が繋がったりして普段考えつかないものが生まれたりします。だから、“斬新な方法で人を楽しませたい”というエンターテインメント的な大きな枠で、全部の案件を見渡すようにしています。

  

――川田さんが仕事をする上でのルールはありますか?

 午前中に打ち合せを入れないことですね。夜型なので、眠いから(笑)。そういえば、なぜか小さいころから同じ悪夢を繰り返し見るんです。その中でも「無実なのに殺人を疑われる夢」が多くて、だいたい無実を証明できないまま目覚めていました。でも、このあいだ僕が開発した、空間をポリゴン化できるアプリを自分で夢に持ち込んだら解決したんですよ(笑)。「このアプリで殺害現場を記録してあるから、角度変えて、この足跡の影を追ってくれ!」と。そのときは、かなり目覚めがよかったですね(笑)。その悪夢を見る度に「証拠写真のようなものを撮っておけばいいのになぁ」と小さいころから思っていて、きっとそれが潜在的に開発に結びついたのだと思います。

――まだこの世にないものを開発する秘訣は、夢にあったのですね。

 アップル社も公式にARに取り組んで行くことを発表して(ARKit)、ARというものがいよいよ世界的な市場になるタイミングです。最近は、現実に着飾るよりも、Instagramの中でかっこよく「いいね!」をたくさん集めた方がいい、という風潮がありますよね。いろいろなものの在り方の比重が変わってきているのが面白い。どこかの時点で、現実とバーチャルの価値観の入れ替えがあるだろうと思います。そういう時に、先んじてこういう新しいテクノロジーを示していくのは大事だなと思います。“AR”と名前に付いているユニットは、まだ世界中に僕らしかいないですから。

(取材・文 安達薫、編集 スケロク)

〈今回紹介した愛用品〉

Lenovo/Lenovo Phab 2 Pro

紹介者のプロフィール

川田十夢
開発者、AR三兄弟、公私ともに長男。2014-2016年 J-WAVE『THE HANGOUT』火曜ナビゲーター。WIRED・TVBros.・季刊猿人などで連載を持つ。情熱大陸、課外授業 ようこそ先輩、ANREALAGE 2017 S/S PARIS COLLECTIONに参加。わりとジャンルを越えている。通りすがりの天才。

公式twitterアカウント:cmrr_xxxar3bros

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