密買東京~遭遇する楽しみ

誰もが知っている、未知の素材 その名も「PE(ペ)」

  • 2017年10月5日

革のようにしわがあるけど、触ってみると全く違う。未知の素材で作られたプロダクトのシリーズ「PE(ペ)」

 誰もが見たことあるのに、見たことない。不思議で、魅力的な新素材?

 そんな謎の素材でできたプロダクト、名前は「PE(ペ)」。

 職人の技術力、科学者の分析力、そしてデザイナーの創造力。どれが欠けても実現しないこのプロダクトは、その全てを兼ね備えた一人のデザイナーによって、全工程手作業で作られています。

色や大きさ、形によって、同じ素材でも凹凸感や表情にはかなり幅があります(撮影・千葉敬介)

 しわのあるこのテクスチャーは革のようにも見えるけれど、触れてみると全く違う、驚きの軽さと弾力、さらにしなやかさも。

 見たことのないこの素材。実はその材料となっているのは、ポリエチレンの薄いフィルム。つまりゴミ袋やレジ袋として毎日見ている、おなじみのあれです。

 薄さ0.02~0.04ミリというそのシートを重ね合わせ、電気コテで溶かしながら接着し、空気を含ませつつ何層もの構造にしていくことで、ありふれた材料は、未知の素材へと生まれ変わるのです。

小さなカードケースから、大物が入る袋まで、豊富なラインアップも楽しめます

 最大で64層にもするという溶着(ようちゃく)作業は、材料となるフィルムの色や厚み、重ね方によって、そして作業時の熱のかけ方、力のかけ方から、冷やし方によっても、大きくその表情を変えるといいます。

 だから完成品であるPEのプロダクトは、同じ形であっても色によって異なる表情を見せたり、あるいは同じ色でも形や大きさによって全く違うテクスチャーになったり、という変化を見せるのです。

材料となるポリエチレンのフィルムの色により、さまざまなバリエーションができます

 実は前々から見たくて仕方がなかった、このPEの製作現場。

 「薄いポリエチレンのシートを、熱で溶かしながら重ね合わせていく?」それは一体どんなことになっているのか。

 ポリエチレンが熱で溶けるなんて、少し想像しただけでも体に悪そうだし、「大丈夫?」っていう感じです。「まさか命を削りながら、このPEを作っているとか?」なんてことがないのは分かっていても、やっぱりこの目で見たい。ということで、半ば強引に押しかけた、京都のアトリエ。

 そこにあったのは、勝手に想像していた、化学物質が溶け出す作業場的なイメージとは正反対の、ホッとするさわやかな空間でした。

PEが作られるPULL + PUSH PRODUCTS.のアトリエ

 気になるその製作工程も、ポリエチレンがドロドロ溶けるなんてこともなければ、危険なニオイが鼻を突く、なんていうことも特になし。

 デザイナーである「PULL + PUSH PRODUCTS.(プルプッシュプロダクツ)」佐藤延弘さんの、穏やかな人柄そのままに、作業は淡々と進んでいきます。いや、進んでいるように見えました。

全ての工程を、デザイナーの佐藤さんが手がけます

 しかし……一つひとつの作業を説明してくれるその口から出てくる言葉は、まるで科学者が実験を語るように分析的。

 ポリエチレンは熱で溶ける。冷えて固まる。単純に言えばその繰り返しによって、ごくごく薄いその物質が重なって厚みを持ち、溶着され、やがて立体のプロダクトになる。それだけのこと。

 けれど2枚が4枚になるときと、4枚が8枚になるときでは、その条件は全く異なり、作業台自体も徐々に熱を蓄え始め、さらにいえば毎日の気温も湿度も、変数となってPEの完成に影響を与えることになるのです。

 その微妙な変化をリアルタイムで読み取り、作業へと変換する職人の技と、それを分析・蓄積し、新しい手法へと改良を重ねる科学者の頭脳、そしてそれらを統合して形を生み出すデザイナーの感性。どれ一つ欠けても成立しないのが、このプロダクトPEなのです。

製作に使う道具は、他の業種のものを流用・改良したり、自分で作ったりしているのだとか(撮影・千葉敬介)

 そしてもう一つ。そんな佐藤さんの仕事を、いつも厳しい目で見つめる、「心の師匠」の存在が、この特殊プロダクトPEを支えているのだといいます。

 当然ながら、同じものを作っている人が誰もいないPEという商品。そのクオリティーを保つため、佐藤さんが自分の心の中に作り出した存在が、「師匠」。その師匠に見張られて、PEは日々作られています。

 なんて……そんなほほ笑ましくも楽しい話を聞きながら作業を見ていると、あっという間に数時間が経過していました。

 というか、これは想像を絶する作業量だ……。

 このPEを手にするときには、そんな佐藤さんの仕事と、師匠の存在を思い出しながら使ってもらえたらと思うのです。

(文・千葉敬介 写真提供・PULL + PUSH PRODUCTS.)

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