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仕掛け人に聞く、マンホールカード誕生の軌跡と人気の秘密

  • 2017年10月6日

ずらりと並んだマンホールカード。これまでに全国で227種類発行された。北海道、東北、北陸など地域別に色が異なる。コレクションの仕方は自由自在。自分なりのコレクション方法を見つけて楽しみたい

 ご当地キャラクターや名所、名産物がデザインされたマンホールの蓋(ふた)を紹介するコレクションカード「マンホールカード」を持っているだろうか。自治体や企業で組織された「下水道広報プラットホーム」(GKP)が発行するマンホールカードは、10月15日で227種類(194自治体)となる予定で、発行枚数は累計100万枚を超えている。最近は、このカードを集めるマンホールファン、通称“マンホーラー”の数も増えている。

 下水道といえば「くさい」「汚い」というネガティブなイメージを持たれることが多いが、人々の生活には欠かせない重要なインフラだ。そこで、下水道のイメージアップのために生み出されたのがこのカード。仕掛け人のひとりで、現在はGKPのプロジェクトリーダーの山田秀人(やまだひでと)さんに、誕生から成功までの軌跡と制作の舞台裏を聞いた。

職人が色づけを行うカラフルなマンホールの蓋。その土地の名所や名産物が一目でわかるデザインになっている。このような緻密でデザイン性豊かなマンホールは日本のオリジナル文化だと言える

――改めてマンホールカードが生まれた経緯を教えてください。

山田さん 下水道は人々の生活にとって重要なものですが、残念ながら良いイメージはありませんでした。そこで、イメージ改善のため、国土交通省の呼びかけで下水道関係者が集まり、2012年に「GKP」が誕生しました。マイナスイメージを改善するアイデアを出し合ったところ、その一つとしてマンホールのデザインがおもしろいという話になりました。

 日本には約1700の自治体があり、自治体ごとにマンホールのデザインが異なり、共通の直径60センチのフレームの中に、その土地ゆかりのデザインが描かれています。身近にあるマンホールですが、実は、日本が世界に誇れる「路上アート」だと思います。

 そこでマンホールを使って、“楽しい”を追求しようということになりました。楽しければ興味・関心がわき、好きになり、自分で調べますよね? まず、14年3月に秋葉原でマンホール好きな人を集めた “マンホールサミット”を開催しました。マンホール好きな写真家やジャーナリスト、ファンが自分のマンホール愛を語るトークイベントです。このサミットは非常に好評で、6回目となる今年1月には3000人が参加してくれました。

 そして、サミットというイベントの次は、グッズという形でマンホールの素晴らしさを伝えようと、16年4月に生まれたのがマンホールカードです。

――マンホールカードが人気となる自信はありましたか?

「下水道広報プラットホーム」(GKP)のプロジェクトチーム「マンホール・エンジョイ・プロモーション」(マエプロ)のプロジェクトリーダーをつとめる山田秀人(やまだひでと)さん

山田さん マンホールカードを作る際、正直な話、私の自信はゼロに近い状態でした。下水道は公共事業の世界です。前例がないことを始めるためには、説明を重ね、熱意で押すしかありませんでした。

 また、第一弾のカードでブランドイメージが決まってしまいます。そこで日本を代表するような「富士山」「桃太郎」「大阪城」などのデザインのマンホールを持つ自治体にマンホールカードを作ってほしいとお願いに行きました。私は普段、マンホール屋に勤めているため、自治体は大事なお客様です。しかし、GKPという下水道を広報していく団体の一員としては、自治体と交渉して、マンホールカードを作って配布してもらわなければいけません。

 失敗すると信用を失ってしまう可能性もありましたが、16年の4月に第一弾を発行すると人気になってくれて、安心しました。各自治体の理解と協力のおかげです。

静岡県富士市のマンホールカード。表面にはマンホールの写真と位置情報、テーマ別のピクトグラムがデザインされていて、裏面にはマンホールのデザインの由来が紹介されている。遊び心をくすぐられるコレクションカードだ

――マンホールカードが今のデザインになった理由を教えてください。

山田さん マンホールカードの位置づけは「パンフレット」です。自治体に置いてもらうためには、存在する意味を持たせなければいけません。「これが私の街のマンホールです」と伝えながら渡せる物にしたいと思いました。

 また、マンホールの最大の魅力を生かすには切手やコインのような全国共通のフォーマットにしたコレクションカードの形がベストだと思いました。日本では遊戯王カードやポケモンカードといった対戦カードゲーム文化が盛んですから、カードはなじみやすい。ただ、対戦要素は趣旨と異なるため採用しませんでした。

全国のマンホール好きが集まる“マンホールサミット”では、「全国マンホールカード展示ブース」も設けられている。マンホール好きなら一度は参加したいイベントだ

――おすすめのマンホールカードのコレクション方法はありますか?

山田さん どんな順番でも、自分なりの集め方で楽しんでいただきたいですが、あえて一つ挙げるなら、自分が住む自治体や都道府県のマンホールカードから集めることをおすすめします。手の届く範囲からコンプリートすることが、オーソドックスですが一番楽しいコレクション方法だと思います。

 私たちが目指しているのは、マンホールカードの“定番化”です。訪れた街の記念品としてコレクションしてもらいたい。まだ全国で227種類しかないですが、将来的には当たり前にどの街でも手に入るカードになったらいいなと思っています。

――まだどこにも語っていない、マンホールカードの誕生秘話があれば教えてください。

山田さん GKPのプロジェクトチームである「マンホール・エンジョイ・プロモーション」(マエプロ)のメンバーには、実は本の編集者やデザイナーもいて、各自の得意分野のアイデアを出し合って、マンホールカードは作られています。例えば私は、おもちゃ屋で働いた経験を生かしています。そのようなメンバーの“経験値の結晶”がマンホールカードです。例えば、カードの表面右下のピクトグラムは当初、数字や漢字にしようという案が出ていたのですが、メンバーのデザイナーの意見で今のマークになりました。もしこれが数字や漢字だったら、今とはまったく違う印象のカードになっていたと思います。

――マンホールカードの制作で大切にしている方針はありますか?

山田さん コレクションカードとしての“統一感”を一番大切にしています。北海道で手に入れたカードと沖縄で手に入れたカードが、一つはペラペラで一つは厚かったり、写真の大きさが違ったり、色が微妙に違ったり、それだと集めたくなくなりますよね。

 そこで、マンホールカードは、統一感にとてもこだわっています。公平性やコストも考えつつ、クオリティーを維持していきたいですね。

         ◇

 国内のみならず海外からも「ジャパニーズマンホールカバー」として注目が集まっている日本のマンホール。欧米諸国に住むマンホールファンからのSNS経由での問い合わせも多いそうだ。まずは旅行先や、住んでいる自治体や都道府県のマンホールカードを手に入れ、オリジナリティーあふれるご当地デザインを楽しんでみたい。

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(文・写真 ライター 木下あやみ)

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