小川フミオのモーターカー

次世代エンジン「スカイアクティブX」お披露目、マツダが描くガソリン車の未来

  • 文 小川フミオ
  • 2017年10月11日

スカイアクティブXは「未来においても地球や社会とクルマが共存している姿を思い描く」というマツダによる超低燃費エンジン

 「未来のクルマは空を飛ぶようになる」。子どもの頃、そう思っていた。しかし2017年のいま、クルマの未来を楽観視しているひとは多くない、ように思える。遠くない将来、ガソリンやディーゼル、ひょっとしたらハイブリッドまで禁止されて、電気自動車の世界がやってくるという言説が多いからだ。

 「そこまでいっきに進むことはないと考えています」。そう言うのはマツダだ。さきごろ、ディーゼル車なみの燃費でスポーツカーのような走りが出来るというガソリンエンジン「スカイアクティブX」をお披露目してくれた。加えて新世代のプラットフォーム(クルマの土台)も。まだ試験路で走れるだけだったが、試作車の走りはおどろくほど楽しかった。

外観は現行アクセラだがそれは偽装で、これから本格的にデザインが始まる

 実用化の目標は19年だとか。それを聞いて、いまさらガソリンエンジン? という軽い驚きをおぼえるひともいるだろう。ぼくも現場でそうでした。これからは電気自動車しか生き残れなくなる。そんなイメージがあるのは、イギリスやフランス、中国に関する最近の報道のせいだろう。

 イギリスとフランスが40年にはガソリン車とディーゼル車の販売を禁止するというニュースは大きな話題になった。中国も同様だ。19年に同国内で販売する自動車の10パーセントをクリーンエネルギー車にすることを義務付ける法律を発表したとか。

 なぜ? というと、課題はCO2削減だ。地球温暖化の元凶とされるCO2を減らすため、各国ではいろいろな取り組みを始めている。

 たとえば欧州委員会。20年に向けて設定したCO2の排出量の規制値はキロあたり95グラム以下。これより多くなると罰金が科せられるとされる。企業は罰金を払うのはいやだろうし、一般人としては環境が気になる。そこで電気自動車やむなしとなるわけだが……。

 ところがもう少し視野を広くみると、内燃機関から電気自動車に変えればCO2が激減するというものではないという意見もある。ベースになっている考えは「ウェル・トゥ・ホイール(燃料採掘から消費まで)」。トータルでCO2排出量をとらえたとき、たとえば石炭発電の出す量は大きい。

 石炭発電による電気で充電させて走るEVを例に、ウェル・トゥ・ホイールの考え方でCO2排出量をみると、キロあたり200グラムに達する計算もあるそうだ。「石炭発電による電気でEVを走らせても環境にいいことにはならない」。そう主張するマツダの技術陣が新しいエンジンの開発目標に据えたのがCO2排出量だという。

 「LNG(液化天然ガス)発電ではキロあたり100グラムなので、マツダのガソリンエンジンの実用燃費目標にしています」。マツダの常務執行役員で、シニア技術開発フェローとしてエンジン開発にたずさわる人見光夫氏は、試験場でそう語ってくれた。

ディーゼルなみの燃費にスポーツカーのような性能というだけあって力強いエンジンだ

 ディーゼルエンジンのように薄い混合気を圧縮着火することで低燃費エンジンが実現する。スパークプラグによる着火制御など、マツダが誇るべき技術がいろいろ盛り込まれており、希薄燃焼だがカリカリといった異常燃焼音はほとんど聞こえない。

 試験路では現行アクセラ(日本では売っていない2リッターエンジン車)と比較試乗できた。「スカイアクティブX」搭載の試作車は力がたっぷりあり、体感的にも楽しいものだった。「走りと燃費の両立による走る歓びの実現」とマツダはこの「スカイアクティブX」の価値を表現する。ぼくは自動車好きとして、この考え方を応援したい気持ちがおおきい。

 しかも車体の考えかたも一新。ボディーは剛性感が増すとともにサスペンションシステムの性能は大きく上がっている。別の言い方をすると、ハンドリングはより良くなって応答性が上がり、一方で段差を越えるときや悪路での乗り心地ははるかにしなやかになっていた。あんまりホメるとマツダの宣伝をやっているみたいに思われてしまうけれど、明るい未来の話なのだ。

次世代ビークルアーキテクチャーといい、自然な姿勢でスムーズに運転ができ、かつ剛性感がありスポーティーな操縦性を持つシャシーが開発されている

 ガソリンにしたってディーゼルにしたって(排出ガス規制など)やるべきことをやっていれば、クリーンなパワートレイン(駆動装置)になりえるのだ。低燃費ということは、つまり走行キロあたりのCO2排出量は減少するのである。ハイブリッドや電気の話でなく、根幹の燃焼技術の革新というのが、まことにすばらしいと感じた。

 もちろんガソリンエンジンや今後でてくる新世代のディーゼルエンジン単体だけでなく、ハイブリッド技術を組み合わせたモデルも、マツダでは開発中という。

次世代ガソリンエンジンというスカイアクティブXは希薄燃焼をスパークプラグ着火でコントロールしつつスーパーチャージャーでパワーを出す

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

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クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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