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最新リノベーションの現場から、「家の性能」を考える

  • 2017年10月16日

提供:株式会社リビタ

 近年、中古住宅を購入してリノベーションするという住まい購入の選択肢が一般的になってきた。リノベーションというと、おしゃれな内装に目が向きがちだが、好みの住まいに長く暮らすには、性能が重要だ。今年7月、東京都世田谷区に高レベルの断熱と耐震性を追求したリノベーション住宅が竣工した。今回は、最先端のリノベーション現場から今後求められる住宅性能についてリポートする。

何年住んでも工夫できる、「余白」をつくる

 リノベーション大手のリビタとYKK APが協働した「代沢の家」は、東京都世田谷区代沢の一軒家で、敷地面積126.82平米・建物面積144.38平米、木造在来工法地上2階+RC造地下1階、築30年の注文住宅をリノベーションした。販売価格は、土地建物で1億5900万円。

 玄関扉から土間が廊下のようにフラットに突き当たりまで続いていて、左右に和室と洋室がある。三和土(たたき)はなく、靴を脱ぐ場所は住む人が自由に決める。土間の途中に階段と吹き抜けがあり、1階にいても2階の人の気配が感じられるようになっている。

提供:株式会社リビタ

 2階はリビングルームとキッチン・ダイニングルームがある。仕切りをつくらずに広いワンルームにして、キッチンとダイニングは一段上がったところに置いて、空間を見渡せるようになっている。リビングルームにはクローゼット等の収納はなく、どこに収納スペースをつくるのか、住む人の判断に委ねている。
 このように、家族構成や趣味・嗜好(しこう)の変化に応じて住む人が空間を工夫できる“余白”を残し、そこにDIYなどで好きに工事を行うことが近年のリノベーションのトレンドだ。

提供:株式会社リビタ

 リビングルームの窓は、外の景色を借景として見られるように高さを変えている。実物の景色や日当たりを確認しながら設計できるのも、リノベーションならではだ。

提供:株式会社リビタ

自分たちで“家をメンテナンスする”という発想

 この家の床材は、すべて無垢材もしくは突き板で、壁紙は貼らずに塗装している。
 新築では木目シートの床が多いが、リノベーションでは無垢材を使う場合も多い。無垢の床は傷がつくため新築では敬遠されがちだが、“傷も味のひとつ”と考える人や、自分たちで塗装する人が増えているためだ。代沢の家でも、床や壁を自分たちでメンテナンスすることで、住まいに愛着を持ってほしいという狙いも込めて無垢材や突き板を使っている。

提供:株式会社リビタ

リノベで中古住宅の流通活性化は進むか

 2013年に総務省が発表した住宅・土地統計調査で、空き家が820万戸にのぼったことは大きく報じられた。特に、世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えのために取り壊すこととなっている住宅等が318万戸(38.8%)と、前回調査(08年)から約50万戸増えている(※1)。

 株式会社リビタ戸建事業部の黒田大志氏は、戸建てリノベーションでできる中古戸建ての流通活性化策があると話す。「中古の良いところは土地も建物も大きいことです。この広さをPRしつつ、収納率や設備数などの数字ではなく、住む人を主役にした一戸建てリノベーションの土壌を育てていけば、中古戸建ての流通が進められると考えています」
 中古戸建てが活発に流通すれば、空き家化する家が減る可能性は高まるだろう。

リビタとYKK APが協働したリノベーション住宅「代沢の家」
提供:株式会社リビタ

中古住宅の「耐震・断熱の心配」を取り除く

 中古住宅購入で懸念されるのが、耐震基準への適合、給排水管の交換、断熱状態などの基本的な住宅性能の部分だ。
 代沢の家は、「震度6強の地震でも倒壊・崩壊はせず軽い補修程度で住み続けられるレベル」という耐震基準に、断熱は2020年以降の新築物件で義務化される予定の約2倍レベルまで高めた。さらに、太陽光発電設備とオール電化によって「消費エネルギーと家がつくりだすエネルギーの差し引きゼロ」というベルス・ファイブスター・ゼッチを取得した。黒田氏は「リノベーション住宅でも、今後はこれが標準性能になっていかなければいけない」と話す。

 住宅性能を上げるために必要なのが断熱だ。断熱性能の低い家で、暖房のある部屋と冷えた廊下などの温度差は10度以上といわれ、真冬の急な温度差で起こるヒートショックによる死亡事故は後を絶たない。また、無断熱の住まいと1999年省エネ基準まで断熱性能を高めた住まいでは、年間冷暖房費用を約13万3千円から約5万2千円に節約できるという試算もある(※2)。

代沢の家は地下1階・地上2階、144.38平米という広さだが、エアコンは2階に1台のみ。高断熱の住まいで、空間が一体的であれば、各部屋にエアコンを設置しなくていい

 断熱性能で課題となるのが、熱損失の大きい窓などの開口部だ。窓ガラスは複層ガラスやLow-Eガラスなど高性能なものが浸透してきたが、いまだサッシはアルミが多い。樹脂や木に比べてアルミニウムの熱伝導率は、約1000倍も高い。

樹脂サッシの上下に入った断熱材。断熱材+樹脂サッシ+Low-Eガラスで、外気を取り込まず、室内の温度を一定に保つ効果がある

 「アルミサッシについては、私たちが反省する部分もあります。高度成長期で家が多く建った時代に、加工がしやすく、耐火性・耐久性のあるアルミサッシを大量供給しました。今は、リフォーム・リノベーション事業主に向けて、アルミと樹脂サッシの性能の違いを知ってもらい、樹脂サッシを採用してもらう機会を設けています」と、YKK AP株式会社リノベーション本部の石井喜大氏。
 ただ、今でもYKK APで出荷しているサッシの約半分はアルミだという。仕様によって異なるが、樹脂サッシの価格はアルミサッシの約1.5倍のため、安価なアルミが選択される現実があるのだろう。

樹脂サッシと、窓を門型に囲む耐震フレーム。これを採用することで、窓部分が壁として耐震計算できるようになる。代沢の家では、耐震フレームと樹脂窓がセットになったYKK APの商品をを採用している

 新築同様かそれ以上の性能を持つ中古住宅は、これから増えるだろうか。外から見えない部分だけに、基本的な住宅性能への投資は、リノベーションをする人次第になる。近年、住まい選びの選択肢は急速に広がってきた。安心して理想の住まいで暮らすために、最適な選択をする賢さが求められている。

※1 総務省平成25年住宅・土地統計調査
※2 国土交通省 低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議資料

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文:石川歩

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