マッキー牧元 エロいはうまい

<41>混ぜて混ぜまくって真価を発揮するスリランカカレー/アチャラナータ

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2017年10月12日

ランチメニュー。ポークカレー、豆カレー、ソヤミートカレー、カボチャカレー、ポルサンボルにパパド(パパダム)が添えられている

  • ランチメニュー。ポークカレー、豆カレー、ソヤミートカレー、カボチャカレー、ポルサンボルにパパド(パパダム)が添えられている

  • 三分の一ほど食べたら混ぜる。様々な味わいが口の中で渦を巻く

  • さらに、パパドをちぎってふりかけると、食欲が増していく

 懐かしい。

 日本から遠く、6700kmも離れた異国の地の料理なのに、どこか懐かしい、遠い記憶を呼び起こす暖かさがあった。

 「アチャラナータ」。東京・中野のスリランカ料理店である。

 昼のランチのカレーは、800円。その日はポークかチキンを選べ、インゲン豆のカレー(パリップ)、ソヤミート(大豆で作った肉状のもの)カレー、ポルサンボルなる薄オレンジ色のふりかけ状のものと、パパド(パパダム)という薄焼きパンが添えられる。

 さらに、ナスと玉ねぎを辛いビネグレットソースであえた「ナスのモージュ(210円)」と「ルヌミルス(150円)」なる、唐辛子と塩、玉ねぎとモルディブ・フィッシュをあえたスリランカの漬物を追加注文した。

 それゆえにご飯の上は、満載の豪華感が漂っている。

 まずは優しい甘みに満ちた豆カレーを一口食べた。

 その瞬間に、「おや」と思った。

 続いてヒリリと辛いポークカレーを食べて、異国の香りを感じ、そこへポルサンボルを参加させると、やはり「おや」と思う。

 どこかに思い出の味がある。

 これはデジャブだろうか。

 原因は、モルディブ・フィッシュである。

 スリランカでは、ハガツオをはらわた入りのままゆで、燻煙(くんえん)し、天日で乾燥させたモルディブ・フィッシュを、味のベースとして使う。

 つまりかつお節である。

 他のアジアでこの食文化があるのは日本しかない。

 遠く離れた地で、なぜ似たようなものが生まれたかは定かではないが、それが親近感を覚える味となって舌を包むのである。

 さらにこのカレーは、混ぜてこそ真価を発揮する。

 三分の一ほど食べたら混ぜる。混ぜて混ぜまくる。

 混然一体となったものを口に運ぶ。

 ポークカレーの黒コショウの刺激とローストしたスパイスの香ばしさに酸味、ルヌミルスの突き刺す辛み、モージュの甘み、ポルサンボルの懐かしいうまみ、パリップの甘さと酸味、素朴なソヤミートの味わい、ジャスミンライスの華やかな香りが口の中で渦を巻く。

 単体で食べるより、このカレーとぐっと近づける。

 口腔(こうくう)内の様々な味を確かめていると、なにやらカレーとディープキスをしているようなコーフンもある。

 さらにパパドをちぎってふりかける。

 パリッ。パリッ。響くその音が食欲を加速させる。

 ああスプーン持つ手が止まりません。

    ◇

「アチャラナータ」
東京都中野区中野2-27-14 丸萬ビル 3F
スリランカカレー専門店。
ランチカレーは基本的にチキンとポークを選択、それ以外の付け合わせが変わる。デザート付き。その他、砂肝のアンブルティアル 210円、エッグアーッパ (米粉とココナツミルクで作ったクレープに卵を加えたもの)210円もおすすめ。夜はスリランカ料理が数種ある。店名「アチャラナータ」は、梵名の「アチャラ」が「動かない」、「ナータ」が「守護者」を意味し、不動明王のことである。

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

マッキー牧元(まっきー・まきもと)タベアルキスト&味の手帖編集顧問

写真

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!