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「幸せ」じゃなくてもいい女の子たち。大島智子さんが「エキストラになれる街」渋谷で個展開催

  • 2017年11月8日

  

 若い世代を中心に人気のイラストレーターで映像作家の大島智子さんが、初めての個展を開く。その名も「パルコでもロイホでもラブホでもいいよ」(2017年11月10日~19日、GALLERY X BY PARCO)。

 街の片隅で、なんともいえない表情で、淡々とたたずみ、たばこをくわえ、時に男と体を重ねる女の子たち。繊細でやわらかな線で、彼女たちの「普通」を切り取ったイラストやGIFアニメは、性別を超えて、作品を見る者の心に寄り添ってくる。

 人がたくさんあふれた都会にいるのに、ポツンと一人で過ごしているような、不思議な魅力に満ちた女の子たちの世界は、どのように生まれたのか。大島さんに、自身の歩みと作品について聞いた。

    ◇

――個展のタイトルは、かつて発表されたGIFアニメ『ガストでもロイホでもラブホでもいいよ』(第17回学生CGコンテスト最終ノミネート作品)へのオマージュですね。2010年ころからウェブ上で、イラストを元にしたGIFアニメを発表されてきましたが、それらをまとめて作品化したのが『ガスト~』でした。

  

 あの作品も、渋谷を舞台にしていたものでした。今回の展示でも、いまの渋谷を描き下ろしたものがあります。昔ほどは来なくなりましたが、大学生のころは、目的もなく渋谷を歩くのがすごく好きで。目的がなくてもいられる場所というか……エキストラみたいになれる場所ですよね。

――そうした場所にたたずんでいる女の子たちが、とても印象的です。

 周りにはよく、「退屈ではかない女の子を描いている」といわれるのですが、自分ではあんまり意識していません。うーん……「その辺にいる女の子を描いています」という感じです(笑)。

――「普通」や「平熱」というのは、大島さんの作品のキーワードですよね。普段、「描きたい!」とスイッチが入る瞬間は、どんな時なのでしょうか。

 SNSを見ているときが多いかもしれません。ツイッターなどを見ていて、とても普通っぽいというか、そんなことはいわないだろうと思っていた女の子が突然、「好きな人に殴られたい欲求しかない」みたいなつぶやきをしているときとか……。

――ちょっと衝撃を受けますね。

 そういうツイートは、すぐに消えちゃったりするんですね。そういう場面を見かけたときに、「ああっ!」となります(笑)。

――「描きたい」というスイッチが入る、と(笑)。女の子が誰かと話したり、遊んだりしている時の「普通」ではなくて、ひとりでいるときの「普通」に引きつけられるのでしょうか?

 そうですね。たぶん、好きな人に殴られたい気持ちも、その人にとっての「普通」だと思うんですが、みんな隠しているじゃないですか。そうした「隠れた普通」のほうを描きたい。

A4サイズに収まる世界を描く

――今日はスケッチブックを持ってきていただいていますが、いつもラフはそれに描くのですか?

 はい、机のわきに置いておいて、何か思いついたら描く、みたいな。スケッチブックはあくまでアイデアを描くもので、きちんと作品にするときは、パソコンを使ってペンタブで下絵を描きます。その出力した紙をライトボックスの上において、もう一回シャープペンシルでなぞっていくんです。

  

――スケッチブックはA4サイズですが、11月29日に出される作品集のタイトルも『Less than A4』(DLEパブリッシング)。常日頃から「A4に収まる世界」を描きたいとおっしゃっていますね。

 やっぱり、A4が描きやすいですね。大きな絵を手がけたこともありますが、そこまでのサイズで描いたり、あるいは筆を使ってまで、伝えたいことはないな、って思うんです……(笑)。特別なことはしたくない。A4サイズで、シャーペンで描いた方が、自分にはしっくりきます。子どものころに、自由帳に描いていた少女漫画の延長のような感触を大切にしたいんです。

――幼少期から、絵を描くのは好きだったのですね。

 親によれば、気づけば鉛筆を握っている子どもだったみたいですね。

――やっぱり鉛筆なんですね(笑)。

 そうですね(笑)。鉛筆を握って、そのころ好きだった『りぼん』みたいに、毎月自由帳1冊に自分で何作も作品を連作していました。

――すごいですね、『自分りぼん』を毎月つくっていた。

 はい、まさに『自分りぼん』(笑)。

――その後、奈良美智さんのようなタッチを経て、現在の画風に至られたようですね。

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 小学6年生から中学1年生のころでしょうか、『パラッパラッパー』(編注:1996年に発売されたプレイステーション向けゲームソフト、ないしそれを原作としたテレビアニメのタイトル)のような、ポップなイラストが流行して。その延長線上で、奈良美智さんを知り、かなりまねをしていました。

 でも中学2年生のときに、奈良さんのまねをしているだけじゃダメだ、と気づいて。しばらくイラストを描くのを我慢したんです。そんなある日、普段からつけていた日記に挿絵をいれようと思って、好きだった先輩のイラストを描いたのですが……我慢した後に自然に描いたそのイラストが、今の画風の原型みたいなタッチでした。「あ、これは私の“線”だ」と思いました。

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