小川フミオのモーターカー

自信に満ちたクルマづくり、日産「セドリック(430系)」

  • 世界の名車<第187回>
  • 2017年11月14日

堂々たる雰囲気をもっていた4ドアハードトップ280Eブロアム(81年型)

 個人的に1980年代の日本車のデザインが気に入っている。世界の自動車デザインの中にあっては傍流だったり、場合によってはキワモノ的だったりするものも多い。でも自信に満ちあふれている。

 1979年に登場したセドリック(「日産」および「日産モーター」の系列店で販売)およびグロリア(「日産プリンス」)も、当時の日産自動車の開発者の強い自信が感じられるようなクルマである。

 シリーズ5代目にあたり、430系と、いわゆる型式で呼ばれることもある。最大の特徴はL28Eという当時の日産の上級モデルの代名詞といえた直列6気筒エンジンに、集中電子制御システムを搭載した点だろう。

燃料噴射式のL28型2.8リッター直列6気筒型エンジンにはこのときエンジン集中制御システムが採用された

 L28Eは前のモデルからの継続だが、従来の2.8リッター直列6気筒エンジンをベースに燃料噴射タイミング、排ガス還元量、アイドル回転数、フェールポンプ制御などをすべて電子制御化したのが新しかった。

 エンジンとしてはもうひとつ特筆すべきことがある。国産車として初めてターボチャージャーを装着(L20E・T型)したのだ。

 日産自動車はターボ化の理由を(石油ショックの影響下にあった社会でアピールする)省エネと強調していたが、むしろパワフルさが目立った。それも大きな個性だ。

 スタイリングも個性があった。大きな長方形のヘッドランプとともに、直線定規でデザインしたような外観である。

多くの部分が平面と直線という感じのスタイリングだが存在感がある

 スタイリング上のもうひとつの見どころは、4ドアハードトップだろう。より厳密にいうとピラーレスハードトップといい、当時の日本の高級車が得意とした車型だ。前のドアと後ろのドアの間にBピラーと呼ばれる柱がない。

 前席ドアと後席ドアのウィンドーを開けると大きな開放的な空間があらわれるのが、乗員にとって魅力的だった。

米国車的なイメージが色濃い4ドアハードトップ280Eブロアム(81年型)のダッシュボード

4ドアハードトップ200ターボブロアム(80年型)のダッシュボード

シートのデザインといい完璧といってもいいぐらい米国車的な雰囲気の4ドアハードトップ280Eブロアム(81年型)

 外観上も恩恵がある。すべてのピラーを極力細くしていることで、透明感といえばいいのか、窓ガラスとピラーという構造体で構成されるキャビンの重さが感じられない。

 71年発表の3代目(230系)から採用されたピラーレスハードトップは、87年の7代目(Y31系)まで続く。

 セダンという利便性を持ちながら、運転を楽しむ「ドライバーズカー」というパーソナル性を追求した結果、確立されたスタイルだったのだ。

 “側面からの衝突安全性の面でピラーレスハードトップは難あり”と紹介した衝撃のテレビ番組もあり、それを境として姿を消すことに。

 かわりにサイドウィンドーの窓枠だけなくして(サッシュレスという)、外観上は軽やかなピラーレスハードトップに見えるというスタイルが取って代わった。

 “能天気”と言うと言葉が悪いかもしれないが、クルマがスタイルだけを追求していればよい時代はこうして終わった。

 衝突実験はドライバーを守るためにたいへん大事なので、おおいに賛成だ。ただ誤解を恐れず言うと、“これ、いいでしょう!”とでも言いたげな、自信に満ちたクルマづくりがなくなってしまった気もする。当時のセドリックにはこの点、売り手の熱気が感じられたのだ。

まったくイメージが違うフォーマルな雰囲気の4ドア280Eブロアム(81年型)も同時に発表された

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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