小川フミオのモーターカー

しびれるほどカッコよかった、トヨタの初代「レビン」「トレノ」

  • 世界の名車<第189回>
  • 2017年11月27日

車体は2ドアのみでサスペンションにはラリー用のものが使われていた(カローラレビン)(写真提供=トヨタ自動車)

 1970年代を代表する1台がトヨタ「カローラレビン」と「スプリンタートレノ」という姉妹車だろう。この時代のクルマを語ろうとすると、きれいに二つに分けられる。前半は高性能の後輪駆動車、後半は省エネの前輪駆動車だ。

 レビンとトレノは、パワーを追い求めた70年代のひとつの側面を代表するようなモデルだ。ベースはカローラ、スプリンターなので、いわゆるクラスは違うが日産自動車なら「スカイラインGT-R」に相当するような存在といってもいいかもしれない。

 ここで取り上げる初代は1972年に発売されて74年までしか作られなかった短命車種だけれど、この時代のトヨタ車というと、「セリカ」とともにぼくはすぐこれを思い浮かべる。モータリゼーションが発展して市場の大きな一角を占めた若者たちのスポーティー志向に応えたモデルである。

 トレノはスペイン語で“雷鳴”を、レビンは英語で“稲妻”を意味すると説明された。ふつうの英語の辞書には出ていない単語で、ウェブ上の辞書では古語とある。トヨタ開発陣の高い知性のなせるわざなのか。いずれにしても音の響きは耳に心地よい。

 レビン、トレノは数世代あるが、登場時のインパクトが強かった初代。「TE27」という型式でファンが呼ぶモデルである。最大の特徴はエンジン。1.2リッターで開発されたカローラ、スプリンターの車体に1.6リッターを搭載した。

油温計や油圧計を備えるがラジオや時計はオプションで、さらに(写真ではわからないけれど)スポーティーなセミバケットシートだった(写真提供=トヨタ自動車)

 「2T-G」と呼ばれるこの1.6リッターエンジンはヤマハ発動機の協力で開発されたといわれている。ツインカーブレター(carburetor)を組み合わせた4気筒DOHCエンジンで、当初は「セリカ」と「カリーナGT」(ともに70年)に搭載された。

 出来のいいエンジンとされ、後にイタリアの会社がこのエンジンをチューンアップして「F3」という当時存在したフォーミュラレースのために供給。大半のコンストラクターがこれを採用した時期もあった。

 「2T-G」によって馬力はオリジナルのカローラの86馬力から115馬力へと大きくアップ。4メートルを切る全長に、860キロ程度という軽量さのため、ひとことでいうと、とても速かった。最高速は時速190キロと発表された。

全長3965ミリ(スプリンタートレノ)、全幅1595ミリ、全高1335ミリで速いのだから、いまでも理想的なサイズ感だ(写真提供=トヨタ自動車)

 加えて加速性。性能の重要な指標だった「ゼロヨン加速」、つまり静止から400メートルを走りきるのに要する時間は16.3秒。「16秒」が高性能車のひとつの目安だったので、この点でもおおいに評価された記憶がある。

 トヨタの開発者はラリーイメージを強く盛り込んだ。市場に先駆けてグリップのいいラジアルタイヤ(175/70HR13と太くて立派なサイズ)を装着し、ホイールアーチの上にはオーバーフェンダーがボルトオンで取り付けられていた。これだけでも当時はしびれるほどカッコよかった。

 実際にこのクルマでラリーに参加するひともいて、本当の意味でのファンカー。手に入れるとその先の楽しみを提供してくれるクルマだったといえる。70年代はクルマとライフスタイルが一体化していたのだ。

ギアボックス直結型の5段マニュアル変速機に後輪駆動というピュアな成り立ち(写真提供=トヨタ自動車)

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

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クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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