小川フミオのモーターカー

回して楽しいディーゼル BMW「X3 xDrive 20d」に試乗

  • 文 小川フミオ
  • 2017年11月28日

 BMWのSUV、「X3」がモデルチェンジして、日本でも2017年10月19日に発売された。外観がこれまで以上にアグレッシブな雰囲気になり、運転支援システムが充実したのが特徴といえる。その3代目の試乗会が11月に箱根で開催された。

140kW@4000rpmの最高出力を持つ1995ccディーゼルエンジンに4WDシステムを組み合わせている

 BMWが初代「X3」を発売したのは2004年。3シリーズのプラットフォームを使い、4輪駆動技術もセダンのために開発したものを共用。本格的オフローダーというよりスポーティーな、ドライブが好きな都市型のユーザーのためというイメージが新鮮だったのをおぼえている。

 初代は2010年まで作り続けられ、先代にあたる2代目にバトンタッチ。4輪駆動システムはBMW全体の製品戦略に合わせて「xDrive(エックスドライブ)」となった。スタイリングも上手にアップデートされ、円形を基本とした4灯をおさめたヘッドランプと大型化したフロントグリルが高級感を醸し出していた。

 新型は“Xモデルのスタイルを維持”とBMW自身がプレスリリースで書くように、キックアップしたリアクォーターウィンドウ(後席ドアの後ろの窓)など、初代からのデザイン要素を継承している。

全体の雰囲気は従来型から踏襲し、グリルやヘッドランプまわりに最新世代のBMWデザインアイデンティティーを盛り込んでいる

 オーナーは明らかな違いを認識できるはずだが、基本的なスタイリングは従来の延長線上にある。ドイツの他メーカーをみても「アウディQ5」なども同様。欧州では、変えるために変えるというモデルチェンジはあまりない。

 ボディーサイズは全長4720ミリ、全幅1890ミリ、全高1675ミリと従来型とほぼ同じ。ただしホイールベースは50ミリ延長して2865ミリだ。たしかに乗りこんでみると後部座席も余裕があって居心地がよい。

「X3」というとコンパクトなSUVという初代の画期的なコンセプトがいまだに頭にあるため、いまでも小さめなサイズと思ってしまう。しかし実際は数字からわかるように余裕がある。とはいっても、全長4910ミリ、ホイールベース2935ミリ の(ひとつ上の)X5より、日本では扱いやすいのが魅力だろう。

リアコンビネーションランプの意匠が新しい

 日本に当面導入されるのはエンジンの違いで2モデル。2リッター4気筒ガソリンエンジンの「X3 xDrive 20i」(639万円〜)と、2リッター4気筒ディーゼルの「X3 xDrive 20d」(662万円〜)である。

 ガソリン車は135kW(184馬力)の最高出力と290Nmの最大トルクを持つ。一方ディーゼルは140kW(190馬力)に400Nmと数値がより高い。ともに8段オートマチック変速機と、フルタイム4輪駆動システムの組み合わせだ。

 ガソリン車の導入は2018年になるとのことで、今回試乗できたのはディーゼルの「X3 xDrive 20d」。なかでもスポーティーなのが「M Sport」である。足回りの19インチホイールと、バンパー形状やシート、一部インテリアなどが専用のものとなっている。

 意外なほど回して走ると楽しいエンジンだ。これが乗っての第一印象。市街地の信号からのスタートなどではしっかり力を出してくれるだろうが、最大トルクが1750rpmから発生するという数値的なイメージより、3000rpm から上のエンジン回転を維持して走らせると活発。とりわけ高速などで気持ちいい。

 最新のBMWのディーゼルエンジンはこの「X3」の4気筒といい、「740d xDrive」に搭載の6気筒といい、静粛性、低振動性にすぐれるうえ、フィールがとてもよく回転マナーもガソリンエンジンに迫るものがあるほどだ。

「X3」でも変速機のマニュアルモードを使ってギアをホールドし、回転が上がっていくにつれて力強く加速していくドライブが楽しめる。スポーティーなクルマづくりを身上とするBMWならではの良さがしっかりとある。

 足まわりは、初めての採用になる横浜ゴムのランフラットタイヤを履いていた。マッチングにもうすこし時間がかかるかもしれないが、現段階ではなにはともあれソフトな印象だ。中立付近のタイヤの反応もやや甘めに感じるセッティングだった。

液晶を使うマルチディスプレイ・メーターパネルに、タッチパネル機能つきの10.25インチモニターを備える

 運転席まわりは最新の意匠で、操作系のコントローラーの数は整理されている。エアコンやシートヒーターのように常に調節が必要なものは物理的なコントローラーがあり、インフォテイメントシステムはステアリングホイールのスポーク部かダイヤル式コントローラー周辺、さらにモニターで行う。

 見た目の印象としては全体的にセダンに近く、造形や組み合わせる素材の使いかたは高級感がある。独自のデザインのギアセレクターといい、お金をかけるところにちゃんとかけているように見せるのは上手だと思う。

 ハンズフリーフォンへの応対などを指の動きでコントロールできるジェスチャーコントロールや、ディスプレイキーも用意されている。後者は液晶画面を備えており、時刻/走行可能距離、ドアやウインドウのロック/アンロック、パーキング・ベンチレーション機能などが操作できる。

 安全装備と運転支援システムの充実が、「X3」のもうひとつの眼目だ。ステレオカメラとミリ波レーダーを使った「ドライビング・アシスト・プラス」と呼ばれる最新のシステムが搭載され、ステアリングホイールやブレーキの操作に車両が介入する。

 ひとつは高速走行時のためのもの。車線の中央付近を維持するよう走行をサポートする「ステアリング&レーンコントロールアシスト」と、隣車線のクルマとの衝突をステアリングホイール操作への自動介入で避ける「アクティブ・サイドコリジョン・プロテクション」が備わる。

 もうひとつは日常生活におけるもの。駐車スペースから出るときや見通しの悪い交差点で他車や歩行者の存在があるときに警告する「クロストラフィック・ウォーニング」(前進時と後退時とも)は便利だ。

 渋滞時にも先行車追従システムとステアリングホイールの自動操作が働く。これをBMWでは“将来完成する自動運転技術を部分的に実現”したものとする。このように、いまのクルマの“進化”とは安全システムと同義になっているきらいがあり、新型「X3」もまたその路線にしっかり乗っている。

 そこにあってBMWに期待したいのは、実は、運転する楽しさを守ってくれることである。メーカー自身が自動運転の方向へ舵を切っているのに、アナクロ的な身勝手な思いかもしれない。しかし新型「X3」を試してみて、ドライブして楽しいという魅力が健在だっただけに、こう願うのである。

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

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クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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