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トヨタ「ハイエース」がマイナーチェンジ 衝突回避支援と新エンジン搭載

  • 文 渡部竜生
  • 2017年11月29日

 11月22日、キャンピングカーのベース車両として人気の車種、トヨタ「ハイエース」のマイナーチェンジが発表されました。大きなポイントは二つ。衝突回避支援パッケージの搭載と、ディーゼルエンジンのモデルチェンジです。

マイナーチェンジ後の外観。フロントグリルのエンブレム下、ミリ波レーダーを納めたわずかなくぼみを除けば、ほとんど変更はない(画像:トヨタ自動車)

安全性能の向上

 今回の目玉はなんといっても、自動ブレーキをはじめとする衝突回避支援パッケージ「トヨタセーフティセンスP」が標準装備されたことです。

 トヨタの衝突回避支援システムには「トヨタセーフティセンスC」と「トヨタセーフティセンスP」の2種類があります。これは自動ブレーキに使われるセンサーの違いなのですが、Cは単眼カメラとレーザーレーダー、Pは単眼カメラとミリ波レーダーです。

 PはCと比較するとより高機能で、具体的には

・歩行者が検知できる
・高い車速でも作動できる(Cは10~80km/hだったのに対して、Pは10~180km/h)
・回避できる速度差が高い(Cは速度差30km/h以内だったのに対して、Pは速度差40km/h以内)

といった違いがあります。

 ライバルである日産・NV350キャラバンが先んじてミリ波レーダーを利用した衝突支援回避システムを全車標準装備していましたから、それに負けるわけにはいかないというところでしょうか。

 さらに、「トヨタセーフティセンスP」では自動ブレーキに加え「車線はみ出し警報」「自動ハイビーム」機能も追加。

 その他にも車両の安定性を確保するVSC(Vehicle Stability Control)やTRC(Traction Control)、急な坂道での発進時に車両のずり落ちを一定時間抑えるヒルスタートアシストコントロールも全車に標準装備されるなど、安全面での機能が充実しました。

新タイプのディーゼルエンジン

 ディーゼル車には、新型の2.8Lクリーンディーゼルエンジン「1GD-FTV」(以下GDエンジン)が搭載されます。このエンジンについては、以前も記事にしたことがありますが(→キャンピングカー人気ベース車両、ハイエースのモデルチェンジを勝手に予想!)、その時点では「今後ハイエースにも搭載されるかも」という段階でした。それがいよいよ、正式に発売されたというわけです。

 GDエンジンはトヨタ・ランドクルーザー・プラドにも搭載されていましたが、プラド搭載のものと比較すると最高出力は177ps→151ps、最大トルク450N・m→300N・mと、商用車向けのチューニングが施され、旧型のKDエンジンとほとんど変わらないスペックとなっています。プラド並みのパワーを期待していたのに、その点はちょっと残念ですね。このモデルチェンジによるメリットは、KDに比べて「明らかに静か」「排ガスがきれい」「燃費がよい」というところでしょうか。

 さて、このGDエンジンに組み合わされるのは6速オートマチックミッションのみ。前モデルであるKDエンジンではMT・AT共にありましたが、今回のモデルチェンジでディーゼル×MTの組み合わせはなくなりました。

 また、前モデルとの大きな違いがもうひとつ。GDエンジンは排ガス浄化のために尿素水(AdBlue)が必要です。ハイエースの場合、尿素水の消費量は1000km/L。タンク容量は7.4Lですから無補給で7400km走れる計算です。少なくなると警告メッセージが出て補給を促しますが、尿素水はガソリンスタンドなどで簡単に購入できますから心配はいりません。

スペックの組み合わせには難点も……

 カテゴリー・サイズ・エンジン・駆動方式・内装グレードの組み合わせは非常に複雑で多岐にわたるハイエースですが、キャンピングカーに適した組み合わせについて考えてみると、今回のモデルチェンジには若干、難点が見受けられます。

 まず先に、ハイエースのカテゴリーを理解しておいていただきたいのですが……

バン=商用車。後部が荷室になっているもの
ワゴン=乗用車。最大10人乗り
コミューター=乗用車。14人乗り

 さて、車体に手を加えないバンコンバージョン(バンコン)では、少しでも広い空間が欲しいものです。その点、スーパーロング(ワイドボディー・ハイルーフ)×ディーゼルエンジンは最もバンコン向き。ですが、従来はパワーのあるディーゼルエンジン車に4WDの設定がなかったのです。それが今回のモデルチェンジで、「スーパーロング×ディーゼル×4WD」が復活しました。この組み合わせを待ち望んでいた方は多いのではないでしょうか。じゃあどこが難点なの?といえば内装グレードの問題です。

内装もほぼ変更はなしだが、「セーフティセンスP」搭載車は、全てのグレードでオプティトロンメーター(自発光式メーター)が標準になった(画像:トヨタ自動車)

 まず、この組み合わせが可能なのはバンタイプ(商用車)のみ。しかもスーパーロングのバンには3段階ある内装グレードのうち、トップクラス=スーパーGLがありません。

 具体的には、オートエアコンやスマート・キーシステムがないこと、シートの素材などが最も安価なタイプであること、などでしょうか。経済性最優先の商用車ですので「荷物をもてなす必要はない」というわけですね。しかし、キャンピングカーは居住性こそ重要なポイント。内装のグレードが低いのはマイナス要因です。

 一方で内装がトップクラス=スーパーGLしかない「ロング×ワイドボディー×ミドルルーフ」のディーゼルタイプにはもともと2WDしかありませんが、今回のモデルチェンジでも4WD導入はありませんでした。

 また、せっかく静粛性の高い新型ディーゼルエンジンにもかかわらず、ワゴン車(乗用車)には旧型同様、ディーゼル車は設定されませんでした。

せっかくの安全機能が搭載されない?

 今回一番の問題点は、特装車には前述の「セーフティセンス」が非搭載ということです。ハイエースをキャンピングカーにするにあたっては、居室を作りこむためにフロアカーペットや後部座席は取り外され、そのまま廃棄されてしまいます。せっかく取り付けても使われないまま廃棄されるのはもったいないですし、処理費のことも含めて、コストのロスにもなります。そこで、キャンピングカー・ビルダーはカタログにはない「キャンピングカー特装車」という特殊なグレードのハイエースを仕入れています。

 後部は鉄板むき出しの「がらんどう」状態ですが、運転席周りには通常設定にはない上級グレードの素材が使われるなど、価格を抑えながら「あるとうれしい」装備を盛り込む工夫がされてきました。

バックミラー裏の単眼カメラと、フロントグリル裏のミリ波レーダーが前方を監視する先進のシステム。キャンピングカー特装に装備されないのはなぜなのか……(画像:トヨタ自動車)

 ところが今回のマイナーチェンジ後は、キャンピングカー特装車は継続するものの、せっかく登場するはずの「トヨタセーフティセンスP」が非搭載だというのです。キャンピングカー特装車だけでなく、福祉車両(ウェルキャブ)のワイドボディー車や、車いす用リフト付きなどのTECS(メーカー完成特装車)にも非搭載なのです。

 この点についてトヨタ自動車に問い合わせたところ、「キャンピングカーなど後から架装される車の場合、どんな状態になるのかがメーカーとしてわからないので、誤作動などを防ぐ意味でキャンピングカー特装車はセーフティセンスなしとしています」とのこと。

 ビルダーでは車両総重量など、きちんとメーカーが規定した範囲内で架装を施していますので、その心配には及ばないはず。実際、日産・NV350キャラバンのキャンピングカー・ベース車には、自動ブレーキシステムを搭載していますので、トヨタ自動車には再考を促したいところです。

 もちろん、市販のバンやワゴンを架装すれば「トヨタセーフティセンスP」付きのキャンピングカーが誕生するわけですが、それでは車両価格が上がってしまいます。人が乗ることをメインに考えたキャンピングカーや福祉車両にこそ、必要な装備だと思うのですが、なぜそんな設定になったのか、不思議でなりません。

 マイナーチェンジには車両価格の上昇がつきものです。残念ながら今回も車両価格は上がっています。新型をベースにしたキャンピングカーが登場するのは、早くても来年2月のジャパンキャンピングカーショー以降になるでしょうが、各ビルダーがどんな工夫を凝らした車両で対応するのか、楽しみに待ちたいと思っています。

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PROFILE

渡部竜生(わたなべ・たつお)キャンピングカージャーナリスト

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サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫7匹とヨメさんひとり。

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