小川フミオのモーターカー

無骨なデザインが魅力「ジープ・ワゴニア」

  • 世界の名車<第190回>
  • 2017年12月4日

前輪独立懸架、当時の米国車唯一のSOHCエンジン、4WD車初のATなどメカニズムも特徴的だった(写真は78年型)(写真提供=FCA)

 世の中にはカッコいいんだか悪いんだか、にわかに判断がつかないクルマがある。それでいてなんだか魅力がある。ワークブーツとか寝袋はカッコよくないけれど魅力的というのと似ているかもしれない。クルマでいうその代表選手が「ジープ・ワゴニア」だ。

 全長は4.7メートル程度だが、プロポーションが悪いのか、やたら長く見える。加えて、クロームパーツによる装飾が過多で、“趣味がいい”とはあまり言えない。

 デザイン上もっとも大事なフロントマスクにしても同様。おおざっぱな意匠のラジエーターグリルと“SAE”という米国の平準化された規格に合致したサイズのヘッドランプがはまっているだけ。もうすこし“化粧”してはどうかと言いたくなる。

 このクルマはジープの乗用車版として開発された。ジープを生産していたウィリスは戦後、「ジープ・ステーションワゴン(1946年)」を手がけ、次に「ジープスター(48年)」や「ジープ・ステーションセダン(49年)」、さらに空力シェイプのセダン、エアロシリーズ(52年)を市場に投入した。

登場したばかりの63年型のワゴニアはフロントマスクの造型が後のモデルと大きく異なる(写真提供=FCA)

 ワゴニアは「ジープ・ステーションワゴン」の発展版として62年に登場した。メカニズムも基本的にはジープのものを使いながら、2.7メートル超のロングホイールベースによる室内の広さなど利便性の高さがセリングポイントだった。

 結局ジープは乗用車的なモデルの生産はあきらめ、60年代から70年代にかけてラインアップを整理。本家ともいうべきジープと、広い室内と大きな荷室をもったワゴニアが中心となった。

シリーズ中もっともクリーンなスタイルともいえる66年型(写真提供=FCA)

 当初は4.2リッター直列6気筒エンジンと、5.9リッターおよび6.2リッターのV型8気筒エンジンを搭載。パートタイム4WDシステムに3段マニュアル変速機の組み合わせだった。フルタイム4WDになったのは73年からだ。

2ドアはチェロキーと名づけられた(写真は74年型)がのちに4ドアも追加された(写真提供=FCA)

ワゴニアのスタイルはこの78年当時ほぼ完成されていた(写真提供=FCA)

 ワゴニアの2ドアはチェロキーと名づけられ、のちに83年にフルモデルチェンジして、日本でも人気を博した。新生チェロキーは力があるうえに乗り心地もよくて、クリーンなスタイリングとともに魅力あるクルマだった。

 そんなチェロキーを横目で見ながら、80年代も基本スタイルを守りつづけた4ドアのワゴニア。92年に「グランドチェロキー」としてフルモデルチェンジを受けるまで変わらなかったのが嬉しかった。

ボンネット先端に設けられたエアインテークをクロームのトリムで強調するデザインが後のモデルの特徴(写真は84年型)(写真提供=FCA)

 無骨なデザインが妙に男心(?)をそそるのである。言ってみれば土着的なアメリカのデザイン。“アーリーアメリカン”と呼ばれる家具だったり、薄いコーヒーだったり、通販「シアーズ」のカタログに出てくる化繊の作業着だったり。

 とりわけ日本にいるぼくたちは、異国情緒を感じながら、どことなく懐かしさのあるスタイルに通じるものを覚えたのだ。ニューヨークやロサンゼルスに住む米国人なら毛嫌いしそうなライフスタイルである。

木目パネルを張られたステーションワゴン(写真は89年型)という古き米国のスタイルを最後まで守っていた(写真提供=FCA)

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 マンハッタンではまず見かけないだろうが、東京なら60年代のワゴニアを自慢げに乗っていられる。そこが異文化間のギャップのおもしろいところだ。

 このあいだも20代とおぼしき家族が2トーンで塗り分けられた古いワゴニアのルーフにカヌーを積んでいるのを群馬県の榛名湖ちかくのダム湖で見かけた。最新のSUVよりはるかにスタイリッシュに見えたのは事実だ。

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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