体温で充電するスマートウォッチが目指す「チャージレス」な未来

  • ライター 堀 E. 正岳
  • 2017年12月22日

腕につけるだけ。体温で充電できるスマートウォッチが登場した

 いまや巨大なマーケットとなったApple WatchやAndroid Wearなどといったスマートウォッチだが、さらに普及するために乗り越えなければいけない壁がバッテリーだ。

 歩数やカロリー消費といった活動量を確認しつつ、メールを確認して音楽を聴き、通話を楽しむ。高度な機能が実現した一方で、朝、完全に充電した状態で家を出ても、夕方には充電が必要になる機種がほとんどだ。これでは、日常利用には少し心もとない。

 そんなスマートウォッチの充電事情を大きく変えるかもしれない製品が登場した。MATRIX Industries社の開発するMATRIX Powerwatchだ。この製品から、チャージレスなデバイスという新しい世界をみてみよう。

体温で充電する仕組み

激しい運動を行えば行うほど発電量は増える

 MATRIX Powerwatchを駆動しているのは手首につけた際の体温だ。装着している間の体温を電力に変換するため、通常利用していれば充電の必要がない。うそのように聞こえるが、原理自体は「ゼーベック効果」という、よく知られた現象を利用している。

 ゼーベック効果とは、ある物質の両端に温度差を与えると、その両端間の温度差が電圧に変換される現象だ。1821年にドイツの物理学者トーマス・ゼーベックによって発見された。

 人間の身体は休息中であっても全体で見るなら白熱電球に相当する100Wほどの熱を放出しており、運動中であればその数値は1kWに到達する。その一部を、ゼーベック効果で回収して充電に利用するわけだ。

 激しい運動を行えば行うほど、しかも外気温との差があればあるほど発電量は増えてゆき、その数値はディスプレイ上で確認することができる。こうした特徴を利用することで、MATRIX Powerwatchは他のスマートウォッチが歩数などから経験的に計算しているカロリー消費量を、実際の身体の発熱量から極めて正確に見積もることも可能なのだという。

 また、MATRIX Powerwatchは通常のスマートウォッチに求められる歩数の計算や睡眠の記録も可能であり、Android / iOS デバイスと連携して情報を同期することも可能になっている。

実際の身体の発熱量から、極めて正確にカロリー消費量を見積もることも可能

熱エネルギーの二次的な利用に期待が集まる

 この夢のあるデバイスを開発したMATRIX Industries社の創業者であるAkram Boukai氏と、Douglas Tham氏は、もともとカリフォルニア工科大学で材料工学を学んでいた研究者だったが、自分たちの研究してきた熱電変換素子を自ら製品化するために6年前に起業した。

 「世界中には無駄になっている熱エネルギーが膨大にあり、それを回収して二次的なエネルギーを生み出す自分たちの技術に大きな期待をかけている」とBoukai氏は語る(製品紹介動画より)。私たちの身の回りにある機器だけでも、イヤホンやペースメーカーといったように、ゼーベック効果によって電力を供給できる可能性がある製品は多いのだ。

 従来はこうした微少な電力を制御し、蓄積する方法がなかったが、近年の計算素子の小型化と高速化、そしてバッテリーの小型化によって実現した。

 「温度の差があれば、どんな場所でも発電ができる」というMATRIX Industries社の技術は、大きな可能性を秘めている。たとえば寒い屋外と屋内の差、乗用車のエンジンと外気といったように、人間の生活が生み出す熱の差はいたるところに存在するからだ。

 そうした熱を新しいエネルギー源として製品のデザインのなかに取り込むことができれば、現在よりもはるかに長時間利用できる機器や、IoT(モノのインターネット)とは無縁だった道具のスマート化にも道が開けるだろう。

 古くから知られている物理現象が、未来のエネルギーとして広範囲で利用され始めたことに、驚嘆と期待を感じずにはいられない。

シルバーとブラックの2タイプで展開

Matrix公式サイト

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