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フィンランド起源じゃなかった日本の『サ道』 建築×銭湯×サウナを語るイベントレポート

  • 2017年12月21日

トークイベントのタイトル画像(塩谷歩波さん提供)  

 銭湯の魅力をイラストで紹介する「銭湯図解」の作者で、東京・高円寺の銭湯「小杉湯」番頭兼イラストレーターの塩谷歩波さんと、フィンランド在住の公衆浴場研究家・こばやしあやなさんによるトークイベントが12月18日夜、東京都中央区の「BETTARA STAND 日本橋」で開かれた。

 トークのタイトルは「今、語りたい! 建築×銭湯×サウナ」。公衆浴場をこよなく愛する2人が、本場フィンランドの公衆サウナと日本の銭湯に共通する魅力や、逆に楽しみ方の違いを語った。

 まずは塩谷さんの自己紹介からスタート。塩谷さんは、設計事務所に勤務していた時に体調を崩して休職し、その療養中に銭湯に癒やされてすっかりハマる。そして、「銭湯への恩返し」のため、大学時代から得意の水彩イラストで銭湯を描き、「銭湯図解」としてSNSで発信し始めた。その精緻かつ、かわいいイラストの完成度の高さが評判となった。いまは小杉湯に就職し、番頭兼イラストレーターとして働きつつ、「週5日は小杉湯につかり、残り2日はサウナへ」という生活を送っている。ねとらぼ「えんやの銭湯イラストめぐり」と旅の手帖「百年銭湯」という二つの連載を持つ。

塩谷歩波さんが描いた「銭湯図解」

銭湯図解を描くようになった経緯を語る塩谷歩波さん

 塩谷さんは「SNSで発信してきた『銭湯図解』をはじめ、銭湯についていろいろ考えて来たことは、ひとつの学問にまとめられるのではないかと考えています。今後も銭湯の良さを発信していきたい」と語った。

 続いて、フィンランドでライター・通訳翻訳者として活動するこばやしさんが、現地のサウナ文化を詳しく説明するパートがスタート。こばやしさんは、フィンランドのユバスキュラ大で「現代社会における公衆サウナの新しい存在意義」という修士論文をフィンランド語で書いた専門家だ。

 こばやしさんの説明によると、フィンランド語の「サウナ」は、蒸気浴のことを指す。体を清潔に保ち、リラックスや療養を行い、家族や仲間と団欒(だんらん)する場所だ。

 そして、日本の銭湯とフィンランドのサウナには共通点がいくつかある。

 ■原則として裸で楽しむものである

 ■趣味やレジャーである前に、生活習慣である

 ■家族や近所の人と裸で付き合う

 ■風呂桶などの定番アイテムがある

 

 日本ではコーヒー牛乳がお約束である湯上がり後の飲み物は、フィンランドではビールである点などの違いもあるが、共通点の多さに、会場からも感嘆の声があがった。

 さらにこばやしさんの説明は続く。第二次世界大戦後に数を増やし、1950年代に最も増えたフィンランドの公衆サウナは、家庭用サウナの普及によって急速に姿を消す。しかし、2010年代に入って、カフェが併設されるような新しい形態の公衆サウナが建設されるようになり、「ルネッサンス期」(こばやしさん)が訪れている。ひっそりと生き残って営業していた老舗サウナの中にも、イベントを行って集客を図る施設も生まれており、最近では若者が老舗サウナに足を運ぶようになっているそうだ。

 こばやしさんは「フィンランドのサウナと日本の銭湯には、共通する時間を超えた価値があると思う。フィンランドでの研究成果を、日本の銭湯文化の維持にも何かの形で還元したい」と話した。

日本とフィンランドのサウナの違いで盛り上がったフリートーク

 続いて、最近、オンラインのサウナサロンを主宰した幻冬舎の設楽悠介さんが加わったフリートークに。ここでは、フィンランドと日本のサウナの違いが次々と明らかになった。

 ①タオルを振り回して熱波は起こしません

 「アウフグース」はドイツに由来する楽しみ方で、フィンランドでは、好きなタイミングで焼け石に水をかけて蒸気を直接浴びる「ロウリュ」法が一般的だそう。日本ではアウフグースとロウリュを取り違えて紹介されている例もあるようだ。

 ②テレビも12分計もありません

 テレビを見ながら、12分計をちらちら確認して「あと○分我慢」。よく見かけるサウナ内の光景だが、フィンランド人は、サウナは家族や友人と話しながら過ごすものでありテレビはないそうだ。日本のサウナにテレビがあって、みんなで静かに見ていることは、日本を訪れたフィンランド人にとっては鉄板の「日本で見つけたびっくりネタ」なのだとか。

 ③フィンランド人は「ととのわない」!?

 タナカカツキさんの『マンガ サ道 ~マンガで読むサウナ道~』が人気のように、サウナの楽しみ方の「作法」が話題になるのは日本だけのようだ。

 「『ととのう』って何ですか? 今回帰国して初めて聞いて、最初サウナの温度がちょうどいいぐらいに上がったことを指しているのかと思いました(笑)」(こばやしさん)

 どうやら、日本全国で楽しまれているサウナの入り方は、本場フィンランドや他の欧州諸国から輸入された習慣が、「ガラパゴス進化」したらしい。何事にも「型」を重視する日本らしい文化なのかもしれない。

 このあと、会場の参加者も加わって、それぞれ自分の「サ道」をこばやしさんに紹介し、トークは盛り上がった。

                   ◇

 イベントの最後に、塩谷さんとこばやしさんは、これからフィンランドのサウナや日本の銭湯についていろいろ協力して情報発信していく、と表明していた。二つの公衆浴場文化が、お互いの国で紹介されるようになることが楽しみだ。

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(文・&マガジン編集部 久土地亮)

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