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ミレニアル世代は伸びしろだらけ! ゼロベースのコミュニケーションが広げる世界

  • 株式会社グローバルエージェンツ代表取締役社長・山崎剛さんインタビュー
  • 2017年12月25日

  

 いまの30代半ばより下の人たちを「ミレニアル世代」(2000年以降に成人することから“ミレニアル”と名付けられた)と呼ぶ。その上の世代とは価値観や消費の傾向がはっきり異なるとよく評される。ただ、ティーンエイジャーから社会人真っ盛りの35歳までをひとくくりにしてしまうのはやや乱暴な気もする。

 社会で活躍するミレニアル世代の取材を通じて、これからの世界を動かしていくだろう価値観を理解するヒントを探した。

 初回は、1982年生まれで、ソーシャルアパートメントやライフスタイルホテルなど、コミュニケーションを重視したサービスを展開している『株式会社グローバルエージェンツ』代表取締役社長の山崎剛さん。同社は、社員の多くも、ターゲットとしている顧客層もまさにミレニアル世代だ。2017年7月には、京都にその名もずばり『ザ ミレニアルズ京都』というホテルをオープンさせた。

株式会社グローバルエージェンツ代表取締役 山崎剛(やまさきたけし)氏

「シェアすること」はスマートだ

 2005年設立の同社は、現在36棟の『ソーシャルアパートメント』を展開し、総部屋数は約2,000室にもなる。部屋の仕様は様々だが、9~12平米程度で、バス・トイレ、キッチン、洗濯機が共用の物件から、個室に備わるタイプまで幅広い。全ての物件にキッチン併設の広いラウンジがあり、ボルダリング施設やビリヤード台を置く物件もある。

 近年は、住人が集う広いラウンジだけでなく、「コワーキングスペース」の需要が増えているそうだ。

  

 「ツールが多様化して仕事がどこでもできるようになり、家に仕事を持ち帰る人やフリーランスの方が増えていると実感しています。住人の皆さんの希望もあり、最近の物件にはコワーキングスペースを設けています。このメリットは、ひとり静かに集中しつつ、他の入居者とも刺激し合えることです。これまではクリエイティブ系に限られていたコワーキングスペースの利用者が、他の職種にも広がっている。働き方の変化を感じます」

 

 山崎さんは、自分を含むミレニアル世代の「所有」に対する意識を次のように分析する。

『NEIGHBORS二子玉川』のコワーキングスペース。顔見知り同士の仕事場なので、ここから対話が生まれ新たなビジネスに発展することもあるという

 「シェアすることを負い目ではなく、むしろスマートだと感じています。それまでは、使うこと=所有すること、という価値観でした。しかし、この世代は、目的が達成されるなら所有にこだわる必要はなく、最も合理的な方法がシェアならそれを選びます。意思決定に際して見栄がなく、最適だと思うものをためらいなく選べる、選択肢の幅を上手に持っている世代だと感じます」

『NEIGHBORS宮前平』のラウンジにあるビリヤード台。アトリエや自転車乗りに特化した設備など、一人暮らしでは所有できない設備が使えるのもソーシャルアパートメントの特徴のひとつ

「多様な人との交流体験」が価値になる

 同社は、2013年に開業した『ホテルグラフィ根津』からスタートして、沖縄・札幌・京都でホテルも展開している。こちらも、共用キッチンやワーキングスペース、会議室、ダイニングなどを併設し、館内での体験を重視したつくりになっている。

2015年に沖縄県那覇市に開業した『ESTINATE HOTEL』のラウンジ

 「バックパッカーが泊まるホステルでの出会いや、一期一会の空気感がある空間には、潜在的なニーズがあると感じていました。そこには、旅先ならではの交流や新たな気付きがあります。また、ソーシャルアパートメントを運営して、住まいのなかで他者とコミュニケーションをとることに価値を置く人が多いことも分かってきました」

 「住まいを変えるには引越しというハードルがありますが、旅先の宿なら気軽に選べます。住まいから旅に場所を変えてホテル事業を行うことは、自然な選択でした。ゲスト同士やゲストとスタッフ間の交流が生まれるように、場所は多様な人が行き交う都市部にしました。観光客もいれば、終電を逃した地元の人、出張中の人もいる、多様性のある都市だからこそ生まれる空気感を大切にしています」

「リモート飲み会」が盛り上がる社内

 現在約250名の社員は、ほとんどが山崎さんと同じミレニアル世代だという。コミュニケーションサービスを生み出す社員は、どんな環境で働いているのだろうか。

  

 「まず僕が働きやすい環境をつくっています(笑)。出社は必ずしも必須ではなく、最も生産性が上がる場所でやってもらいます。出社時間を9時と決めて、全員がただ9時に来ればいいというのは違うと思う。例えばすごく仕事ができて、人間性も素晴らしいのに、どうしても遅刻してしまう人っていませんか? 僕は、それも一つの価値だと考えます。遅刻ばかりすることが社会人失格とは思わないし、そう決めつけることは思考停止だと思います。もちろん、仕事は周りの評価を得ながら進んでいくものなので、みんなが不快にならない信頼関係を築いているのが前提です」

 「ホテル事業を始めてから社員同士の距離が離れましたが、コミュニケーションが希薄になることはありません。どんなシーンでも、人と交流して対話をすることに長けているのだと思います。たまに、ホテル事業部が、各拠点を繋いだモニターを見ながら『リモート飲み会』をして、それが成立しているのが、はたから見ると面白いですね(笑)」

 

 オンラインの飲み会が盛り上がるとはデジタルネイティブらしい。社員間コミュニケーションは大切だが、それは必ずしも対面や電話である必要はないという考え方だ。

  

 一般的にミレニアル世代は会社への帰属意識が薄いと言われる。離職率を低くするための工夫はしているのだろうか?

 「絆を深めるための運動会とか、そういう団体で強制的に動くことはしていません。社長室を作らず、誰とでもフラットに接する環境づくりは心がけています。個人的に気をつけているのは、注意や反対をするなどマイナス行動をするときは感情で動かず、ロジカルに考えます。ここまで言うと僕はすごい人みたいだけれど、低血圧で起きられなくて、わりと遅刻しています(笑)」

 立場を超えたコミュニケーションを取れる状態にしておくことで、仲間を大切にするミレニアル世代をうまくまとめているようだ。ただ、社員の評価制度は試行錯誤をしているという。合理的に定量評価をするのは簡単だが、コミュニケーションを重視したサービスの特性上、定性部分の評価が難しいのだろう。

 山崎さんの口癖は、「ゼロベースで考える。業界の慣習に引っ張られない」。その言葉にも、見栄ははらず、目的達成までの合理的な方法を選択するミレニアル世代のひとつの特徴がよく表れている。

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文:石川歩 写真:野呂美穂

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