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紙の活字で、活版印刷!? 「発明」と呼びたいお手軽印刷キット

  • 2018年1月11日

紙で作られた活字を使って印刷をする「紙活字」。ポスターを刷るための大きな木の活字からヒントを得たこの活字は、普通に刷っても雰囲気のある仕上がりが楽しめますが……

 「紙活字」。たった3文字のその名前からして、魅力的かつ気になる要素が満載ですが、まずは写真でその世界をじっくり味わってから、魅力の秘密に触れてもらえたらと思います。

 「紙で紙に刷る」。それがコンセプト。一言で説明するなら、「紙でできた活字を使って印刷をするキット」ということになります。

 活版印刷の仕組みを使った印刷機ですが、直感的で自由度の高い表現ができ、手軽に使える。それが最大の魅力です。

 絵を描くより簡単に、かっこいいグラフィックを作れるこのプロダクト。絵やデザインの技術は不要。なのに、雰囲気のある作品が、きっと誰にでも作れるから、これはもう「発明」と呼びたいです。

文字の中に、テクスチャーがあるのが分かりますか? これこそが「紙活字」最大の魅力なのです

 魅力的に映るのは、それぞれの字が多彩な表情を持っているところでしょう。紙の活字だからこそできる、この表現。しかもどの家にでもある物を使って、簡単にテクスチャー(編集部注:物の手触り、感触、質感などを指す概念)が付けられるのです。

 例えば、ミニカーのタイヤをコロコロ転がしたり、フォークのようなもので引っかいたり、紙の一部を剝がしたり千切ったり。あるいは、活字自体を切ってしまうことだって、簡単にできます。

 もちろんきれいに刷ることも可能。むしろそこには猛烈にこだわったという、このプロダクトの生みの親、Paper Parade Printingの和田由里子さん。なんと8年もの歳月を費やして、書体の一つひとつから、印刷機まで開発したといいます。

活字が紙でできているので、表面に傷や模様を付けたり、紙自体を千切ったりすることで、テクスチャーが生まれます

 でも活字で印刷する一番の魅力は、味わいのある表情。ポスターを刷る大きな木の活字をヒントに作られたこの「紙活字」は、もともと表情を出しやすい作りですが、テクスチャーを与えることで、その魅力は何倍にも増幅されるのです。

 しかも1,000回も刷れる、というのも驚き。印刷するのに、特殊な機材は一切不要。直感的に作業ができるので、子どもも一緒に楽しめます。

 むしろ情操教育に使ってほしいという思いを込めて開発したのだとか。子どもの頃にこんなすてきなプロダクトに出会っていたなら、きっと人生が全然違うものになっていただろうと想像してしまいます。

テクスチャーだけじゃなく、レイアウトなどの作業を直感的に楽しめるところも、この印刷機の大きな特徴です

 印刷機と聞くと、いかにも“機械”なものを想像するのですが、紙活字の印刷機は、平らな面に活字を並べて、そこに紙を載せて刷るタイプ。

 この作りのメリットは二つあって、まずは見たままのレイアウトで刷れるところ。刷りながら位置を変えたりもできるので、直感的に作業ができます。

 そして平らなので余白を空けたり、狭めたり、あるいは斜めにしたりすることも簡単。これは普通の活版印刷機だと、かなり大変なのだそうです。

フォークやドライバー、ミニカーのタイヤなど、どこにでもあるものでテクスチャーが付けられます(写真・千葉敬介)

 シンプルな構造は、印刷機のデザイン面でも重要な要素です。

 木で作られているこの小さな装置は、家具と文具の中間というイメージ。デザインにもとてもこだわっていて、東京・台東区にある家具屋「WOODWORK」と一緒に開発したそうです。だから家具のように、そのまま部屋に出しておけるのです。

 実はこの印刷機には、箱がついていません。それは箱から出したり仕舞ったり、というひと手間が面倒になって、使われなくなってしまうと考えたから。気軽に、日常的に、印刷を楽しんでほしいという思いが、そこに込められているのです。

これが活字。紙でできているのに、なんと1,000回以上も刷れるというから驚きです。拭いて別の色にも使えます

 美大でグラフィックデザインを学び、今はタイプデザイナーとしてデジタルフォントの制作に携わりながら、活版印刷所でも修行をし、紙活字など自身の活動も展開しているという和田さん。

 そう聞くと、デザイン一直線の人なのかと思うのですが、8年にも及んだという開発話を聞くと、それだけでは説明できない、別の一面に気付かされます。

 それはとても分析的で、数学的な、科学者っぽい一面。そんな能力があったからこそ、新しい仕組みの発明にたどり着けたのでは、と思わされます。

和田さんに教えてもらいながら、実際に印刷してみました

 活字の素材としては、「合紙(ごうし)」という異なる種類の紙を貼り合わせる方法で、オリジナルの紙を作っています。

 ご想像の通り、普通の紙では活字に必要な性能を満たすことができません。でもコーティングのかかった紙や、クッション性のある紙を組み合わせることで、繰り返しの使用にも耐えながら、手軽にテクスチャーなどの加工ができる素材を生み出すことに成功したのです。

 その結果、最初は40回程度しか印刷ができなかった活字は、1,000回を超える使用が可能なものへと、進化を遂げたそうです。

  

 活字の加工はレーザーで。開発段階の初期、海外ではレーザーカッターが出てきたという情報は得ていたものの、日本では実用に耐えるものがまだありませんでした。

 そこで活字の開発作業をいったん中断。先にインキなどの開発に時間をあてながら、技術の進歩を待ったのだそうです。

 全てオリジナルで作っている書体も、デザイン面からだけでなく、レーザーカッターの特性や弱点を分析したうえで、最適な形を追求するため、膨大なテストを繰り返したとか……。

必要なものがセットになっている印刷機のキット(活字は別売)。印刷機は、5色のバリエーションがあります

 聞けば、デザインの道を選ぶ前は、ロボットを作るのが夢だったと語る和田さん。そんな一面がこのまれなプロダクトの成立に一役買っていることは、間違いなさそうです。

 本当に直感的に、手軽に楽しめて、しかも想像を超えるようなすてきなものが作れるプロダクト。まずは気軽に使ってみてもらえたらと思います。

(文・千葉敬介 写真提供・Paper Parade Printing)

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