小川フミオのモーターカー

緊張感のある美しさ、アルファロメオ「ジュリエッタ・スプリント」

  • 世界の名車<第195回>
  • 2018年1月15日

スカリオーネが手がけたスタイリングの妙がよくわかる側面の写真(写真提供=FCA)

 史上最も美しいクーペを選ぶとしたら、このクルマはトップ3には入れたい。1954年に伊のアルファロメオが発表した「ジュリエッタ・スプリント」だ。

 いまさら書くまでもないけれど、ジュリエッタとは英語でジュリエット。シェークスピアの作品を題材に、アルファロメオの社名とひっかけての命名なのか。真相はよくわからない。

 そもそも社名の由来はALFA(ロンバルダ・自動車・製造・会社の頭文字)と、中興の祖であるニコラ・ロメオからなので、有名な悲劇とはそもそも関係ない。ちなみにロンバルダとはミラノがあるロンバルディア地方のことである。

54年型のジュリエッタ・スプリントの全長は3980ミリとかなりコンパクト(写真提供=FCA)

 なにはともあれ、アルファロメオはクルマ好きにとって“ロマンチック”なメーカーだった。第2次大戦前は常勝のレーシングカーメーカーで、フェラーリを興したエンツォ・フェラーリがドライバーを務めていたこともある。

 戦後は会社の存亡をかけて一般乗用車作りに乗り出した。最初のヒットがこの「ジュリエッタ・スプリント」だったのだ。

アルファロメオ車を特徴づけている三つのグリル(写真提供=FCA)

 まず、このクーペが出て、遅れてスパイダー、そして4ドアセダンが登場した。クーペはラリーでも速く、とくに初期はポルシェやフェラーリを打ち負かしていた。

 「ジュリエッタ・スプリント」は当初1290ccのアルミニウム製エンジンを搭載していた。80馬力もあって、それに対して車体は比較的軽量の880キロだからよく走った。62年には92馬力の1570ccエンジンを搭載。車名も「ジュリア・スプリント」に変更された。

パッケージは2プラス2だ(写真提供=FCA)

 このクルマの真価はメカニズムだ。一例をあげるとエンジン。吸排気バルブの開閉タイミングを自分で微調整できる。

 調整可能なのは十数カ所。それによって走るコースに最適のセッティングが出来るのだ。レースで鳴らしたアルファロメオだけある。

 もうひとつ、大きな特徴はフランコ・スカリオーネが手がけたスタイリングだ。面には張りがあり、緊張感のある美しさだ。

61年型のジュリエッタ・スプリント(写真提供=FCA)

 真横からみると各ウィンドーのピラーに角度がつけられていて、すべてを延ばしていくと上の仮想交点で交わる。これも美しいスタイリングのひとつの定理である。

 ボディーのショルダーも側面からみるとゆるやかな弧を描いている。それが躍動感を生んでいる。みごとなスタイリングなのだ。

 車体を手がけていた会社はベルトーネ。ただしピニンファリーナが製作していたスパイダーは多くの個体が現存しているのに、このスプリントは少ない。一説によるとこの二つのカロッツェリアが使っていた金属の材質に差があったからだとか。

 もういちどこの「ジュリエッタ・スプリント」を作ってもらえたら、ぼくはまっさきに買いそうだ。

2万台以上生産のベストセラーだった(写真提供=FCA)

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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