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2018年もミニ四駆ブームは終わらない マンガ誌が広げる新たなファン層

  • 2018年1月12日

スタート直前、気合に満ちた表情でシグナルを見つめる参加者たち

 大人のミニ四駆ブームが続いている。かつて漫画やアニメに胸を躍らせ、モーターやギア、そしてボディーのカラーリングまでこだわって自慢のマシンをチューンナップしていた少年少女たちが、その頃の情熱そのままに、またミニ四駆を手にとっているのだ。

 タミヤが生み出したこのプラモデルシリーズの人気は、いま第3次ブームの最中だという。ブームを盛り上げているのは、2014年に小学館が刊行している青年向けの漫画雑誌『コロコロアニキ』の影響も大きい。2017年9月に行われたミニ四駆の大会「コロコロアニキ&タミヤpresents 『第2回 コロコロアニキカップ2017』」の会場の様子から、なぜ大人たちが夢中になっているのかをレポートする。

 レース会場に集まった約60人の大人たち。スタート直前まで熱心にマシンのメンテナンスをする人、仲間同士で和やかに談笑する人……、私たち社会人が日常で忘れがちな熱っぽさが、その場には満ちていた。

 この日の会場は、ミニ四駆好きの聖地として知られる、東京・新橋の「タミヤプラモデルファクトリー新橋店」。取材したのは、大人を対象にした、個人とペアそれぞれで頂点を目指す「レッツ&ゴー!!クラス」だ。

 設置された大きなコースは、単なる直線やカーブのみならず、バンクカーブ(傾斜のあるカーブ)まであるもの。シンプルにスピードやパワーだけあればいいのではなく、一度走り出したら止まらないマシンのバランスを、事前にどれだけ“調整”できるかがカギだ。自信満々で送り出しても勢いよくコースアウトすることもある。マシンが無事にゴールを迎えると、楽しそうな歓声があがっていた。

出走前には、大会規格に沿ったマシンかどうか、きちんとしたチェックを通らねばならない

 「僕も数年ぶりに(ミニ四駆の)大会に戻ってきたけど、こんなに盛り上がっていてビックリしました」と笑顔をみせる参加者の男性が、マシンのチューンナップの難しさを端的に説明してくれた。「一番楽しくて難しいのは、ブレーキ調整。速度についてはある程度やると分かってくるんですよ。その次は、コースに合わせていかにマシンの重量バランスを調整して、うまくブレーキをかけられるか、という世界になってくる。チューンナップしたマシンが結果を出してくれた瞬間は、本当にうれしいですね」

 少しだけ、ミニ四駆と、それをとりまく人気漫画作品の流れを整理してみよう。そのことは、いまも人気の小学生向け漫画雑誌『コロコロコミック』とミニ四駆のかかわりを振り返ることでもある。

 1980年代後半から90年代半ばにかけて連載されて人気を集めたのは、故・徳田ザウルスによる『ダッシュ!四駆郎』シリーズや『ダッシュボーイ天』といった作品だ。ミニ四駆ブームの黎明(れいめい)期から、解説本をふくめて全身全霊で情熱を傾けた徳田の作品群を経て(筆者も氏の解説本を見ながらマシンをいじり倒した)、90年代半ばから次なるブームをつくりあげたのが、こしたてつひろ著の『爆走兄弟!!レッツ&ゴー』である。

 これらの作品に登場した架空のマシンは、その後、細部まで再現して商品化され、当時の小学生たちを熱狂させた。特に『爆走兄弟!!レッツ&ゴー』のアニメ化は一大センセーションを巻き起こした。主人公がマシンに向けて叫ぶ「いっけー、マグナム!」という台詞(せりふ)を覚えている人も多いのではないだろうか。今回のレース会場に詰めかけていた参加者たちの大半も、この作品の影響を受けたであろう世代だった。

壁面との接触をスムーズにする「ローラー」、重心のバランスをとるためのポールのような「スタビライザー」、そしてカラーリング……こだわりは細部に至る

 こうしたかつてのミニ四駆ブーマーたちにとって、2014年に発刊された『コロコロアニキ』は驚きをもって迎えられた。まずひとつのビッグニュースが『爆走兄弟レッツ&ゴー!! Return Racers!!』という、こしたてつひろ氏本人の手による“続編”の連載開始。そしてもうひとつが、2006年に惜しくも亡くなった徳田ザウルスの遺志を継いで2015年からはじまった、『シャーマンキング』などの作者である人気漫画家・武井宏之による『ハイパーダッシュ!四駆郎』である。

 大人になったミニ四駆好きたちが、マンガによってふたたびあの魅力の世界に引き戻されていく――その流れのなかで2017年から開催されているのが、今回取りあげる「コロコロアニキカップ」なのだ。

 前述の『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の主人公兄弟のコスプレをして参加していた男性ふたりは、「大人になってから、改めて“こだわり”をもてることが楽しい。パーツも本当にいろんな種類があるので」「一度ミニ四駆から離れてから、2013年にまた盛り上がっているということで戻ってきました。職場の後輩と一緒にワイワイとやりながら、パーツを集めたりしています」と、口々にその魅力を語ってくれた。

 意外だったのは、かつてのブームを経験した30代だけではなく、若い女性のペアも参加していたことだ。参加のきっかけを聞いてみた。

 「『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の漫画からハマって。読みはじめたときには続編の連載がもうはじまっていましたね」「マシンに手を出し始めたのは昨年から。今日が初めての大会出場でした! マシンのセッティングなんて全然わからなかったから、必死にインターネットで調べて(笑)。とても楽しかったです、みんなすごくピュアな感じでした」

 こうした新世代のミニ四駆好きも含めて、まさに“ピュア”な喜びにあふれていた「第2回 コロコロアニキカップ2017」。ハッキリいって「うらやましい!」の一言だ。大人になって、こんなに一心不乱になって楽しめるホビーがあるなんて。

コロコロコミックからコロコロアニキへ――生み出された漫画作品やマシンは数多い

 2018年もすでに全国各地で大人を対象にしたイベントが開かれている。タミヤの公式サイトに掲載されているイベントだけでも、1月だけで大小約380件にのぼっている。もしあなたが忘れていた心の高ぶりを取り戻したいなら、いまミニ四駆はうってつけかもしれない。

(文・写真 ライター 宮田文久)

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