最先端メディア通信

炸裂する花火の中へ ロシアが世界に誇る空撮VR「AirPano」

  • 染瀬直人
  • 2018年1月15日

 VRコンテンツの素晴らしさを紹介する連載の2回目は、ロシアが誇る空撮集団「AirPano」が撮影した美しい360度VR動画をご紹介する。実際には行けない場所でも、現実以上に臨場感を楽しめる、究極の「仮想旅行」コンテンツばかりだ。

ドローンで戦勝記念日の打ち上げ花火の中へ~モスクワ

【YouTube】Want to fly inside the firework? 360°, 4К aerial video

 花火をもっと近くで見てみたい、広がっていく花火を内側からみたらどんな光景なのだろう? そんなことを思ったことがある人は多いのではないか。

 「AirPano」は、その夢を実現させた。

 2017年の5月9日、AirPanoは、モスクワのポクロンナヤの丘にあるビクトリア公園の上空で、ロシアの戦勝記念日の打ち上げ花火を無人ドローンで撮影した。もちろん当局の許可を得ての試みだ。

 空中で花火が破裂すると、大迫力の爆発音とともに、こちらの目の前に火花が飛んでくる!

 閃光(せんこう)や無数の火の粉がつくりだす美を見ていると、時が経つのを忘れそうだ。これぞVRでしか見られない世界と言えるだろう。

 よく見るとはるか遠くでも花火が打ち上げられていたり、地上から見上げる視点のカットもあったりと飽きることがない。

 ドローンが花火の直撃に見舞われるリスクもあったはずだが、チームの熟練の操縦テクニックによって、撮影は無事に成功した。打ち上げが終わると、上空のドローンまで地上の観客たちの歓声が入ってくるのも感慨深い。

8Kで堪能する世界遺産 氷の絶景~クロアチア

【YouTube】360°, Plitvice Lakes in Winter, Croatia, 8K aerial video

 クロアチアの中央にあるプリトヴィツェ湖群国立公園は、60年近く前までは人が踏み入ることのできなかった深い自然に包まれた場所。およそ3万ヘクタールの広大な領域に、16の湖と100近い滝を有しており、ブナやモミなどの多くの植物が生育している。長い時間の中で川が石灰岩を削り、滝、洞窟や鍾乳洞がつくりだされてきた。コケや水に落ちた枝や葉などが石灰華となって堆積(たいせき)して、形成された自然のダムも特徴だ。1979年にはユネスコの世界遺産に登録されている。

 これは1分46秒の短い作品だが、人影もない冬山の凍(い)てついた木々の白色と、石灰の溶け込んだエメラルドグリーンの水の色が調和した、幻想的な景観を楽しむことができる。

 滝の下にできた洞窟の鍾乳石や氷筍(ひょうじゅん)など、自然のつくりだした芸術のディテールを、8Kの高精細な映像で細部にわたるまで堪能できる。

 全編にわたる空撮のスムーズなオペレーションにも注目したい。

 ドローンによる空撮のVR撮影は振動や風による揺れとの闘いだ。AirPanoは独自の工夫を施したジンバル(安定化装置)でブレの低減に成功している。また、撮影はドローンからVRカメラをつり下げておこなっているが、ドローン本体を画像処理で消しているので、視聴者は鳥になったように宙に浮いた気分でコンテンツに没入できる。

限界に挑む過酷な撮影 溶岩流の赤い道~カムチャツカ半島

【YouTube】360°, Eruption of Plosky Tolbachik Volcano, Kamchatka, Russia, 4K aerial video

 カムチャツカ半島のプロスキイ・トルバチク火山は、過去何千年もの歴史のなかで噴火を繰り返してきたことで知られている。

 真冬のエッソ(カムチャツカ中央部)の基地を離陸して、山をはうように流れる溶岩流の赤い道をたどりながら、輸送用ヘリコプターMi-8が飛行していく。外気は-25°C(-13°F)。しかし、溶岩に接近すると、逆にキャビン内はとても暑く感じたという。

 ヘリは夕日を浴びながら進み、火山に近づいていく。陽に照らされた噴煙のハイライトが美しく輝いている。やがて、ヘリが火口に迫ると、ついに我々も真っ赤に燃えるマグマの噴出を目にすることになる。(3:55秒頃)

 ヘリの安全な飛行や、VRカメラの動作条件などを考えると、撮影は機器の限界をも超えた、非常に過酷なシチュエーションであったに違いない。

 2012年に始まった亀裂噴火は、現在も継続している。

ニューヨークから南極まで VRで仮想旅行を~AirPano傑作選

【YouTube】360° Video, The best footage by AirPano. Part I

 AirPanoは、航空パノラマの制作を目的に結成された写真家によるプロジェクトだ。ドローンやヘリによる撮影のみならず、飛行機やボートなど様々な手段で撮影を手がけている。その活動はロシアに止まらず、世界300以上の地域に及ぶ。VR動画の他にも静止画の360度パノラマにも見事な作品が多数あり、毎年、国際的なパノラマのアワードで、優勝を勝ち取っている。

 中心メンバーのセルゲイ・セムノーブにインタビューをした。

 「2006年にVR空撮プロジェクトを始めました。当初はカメラが安定しない空中で360度全方位を撮影・編集することは、とても困難でした。試行錯誤の末に、独自の機材や手法を編み出していきました。ほとんどの人が目にすることが無いであろう、素晴らしい景色と感動を多くの人と共有したいと思っています。私たちが撮影した場所は、普通の旅行者が行けないことも多いのですが、VRなら子どもや体に障がいのある人も見ることができるんですよ」

 「日本の皆さんはとても忙しいと聞いています。我々のコンテンツで仮想旅行を楽しんだり、次の旅行先を決める手助けになったりすればうれしいです」とコメントしている。

 彼らはその功績が認められて、プーチン大統領から表彰され、助成金が授与されている。筆者がロシアを訪れた際には、モスクワの空港のディスプレーで彼らのコンテンツが上映されていた。

 AirPanoの高品質な360度VR動画の美しい旅を、じっくり楽しんでほしい。

お手軽な360度VR動画の楽しみ方

 段ボール製の簡易型VRゴーグルとスマホアプリがあれば、手軽に没入感があるVR動画の視聴を楽しめる。
 YouTubeアプリのインストールはこちらから(iOS版, Android版
 アプリでVR(2眼)表示に切り替え、スマホを取り付けたゴーグルをのぞくと、目の前にVR空間が広がる。ぜひお試しを。

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PROFILE

染瀬直人(そめせ・なおと)写真家、映像作家

360度VRコンテンツクリエーター。日本大学芸術学部写真学科卒業。4K動画撮影、360度VRパノラマ、360度VR動画、ギガピクセルイメージ、タイムラプス、シネマグラフなどを手がける。2014年ソニーイメージングギャラリー銀座で、個展「トーキョー・バーチャル・リアリティー」を開催。YouTube Space Tokyo 360度動画・インストラクター。VRなど新分野を考察する勉強会「VR未来塾」主宰。
www.naotosomese.com

BOOK

360度VR動画メイキングワークフロー(玄光社)染瀬直人著

2016年はVR元年と言われ、国内外の様々なメーカーからカメラやヘッドマウントディスプレイなどの360度動画製品が続々と登場しました。

本書では本格的な実写360度VR動画を制作する人々に向けて、撮影・ステッチ・編集といった一連の制作のワークフローを解説します。

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