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イメージとは全然違った!? フィンランドで挫折を味わった夜。本場のサウナ体験レポート

  • 2018年1月15日

 はじめまして。サウナ男子と申します。このたび朝日新聞デジタルのwebマガジン「&」にて、サウナに関する記事を執筆する運びとなりました。著名なメディアやSNS等でサウナが積極的に取り上げられるなど、サウナ人気が熱を帯びてきている昨今ですが…!

 私からは、昨年末から今年始めにかけて現地で取材した「フィンランドサウナ体験レポート」をお届けいたします。荒削りな文章で恐縮ですが、お付き合いいただければと思います。

  

 フィンランドのサウナに関心を持ったきっかけは、北海道から九州まで、日本の主要なサウナ施設を巡った経験からだった。タナカカツキさんの『マンガ・サ道 ~マンガで読むサウナ道~』に影響され、より”ととのう”サウナに出逢いたいという想いで、各地を巡礼することに。しかし、旅も終盤に差し掛かるうち、「日本の次はサウナの本場で”ととのい”を味わってみたい…!」という願望まで芽生えてしまい、”サウナー”として居ても立ってもいられなくなったのである。

マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~(1) (モーニング KC)

※”ととのい”
 サウナや水風呂を繰り返し往復することで体内血液と脳内酸素の巡りが活発となり、ディープリラックスした状態が生まれること。詳しくは『サ道』を参照。

 日本縦断の旅を終えたのち、休む間もなく7泊8日フィンランドの旅に出た。出発前、フィンランドのサウナの印象は…

■『日本のサウナよりも温度が低く、長くサウナに入ることが出来る』
■『”ととのい”を知り尽くした、熟練サウナーが数多くいる』
■『サウナ室は神聖であり、教会のように振る舞う』

 等々、より本場ならではの洗練されたイメージを抱いてしまっていた。

本場の体験をいち早く味わってみたい…! ヘルシンキ・ヴァンター国際空港に到着した後は、鉄道に飛び乗り、市内の公衆サウナへと直行した。余談だが、写真の”SAUNA”キャップはほぼ毎日着用している

老舗のサウナでさっそく洗礼を浴びる

 ヘルシンキ中央駅から地下鉄で3駅ほど。閑静な住宅街の一角に「サウナ・アルラ」の看板を見つけた。1929年創業の、古くから営業している老舗のサウナだ。※ヘルシンキ市内の公衆サウナは、現在3軒のみの営業にとどまる。

立派な鉄格子のドアの先には、一見、私有地かと見間違えるほど生活感のある空間が広がる。その奥に「SAUNA」と記された看板を見つけて安堵したが、極めてプライベートな場所にそのサウナはあった

 「あんちゃん、ここに来るのは初めてか? サウナ・アルラはサウナ好きが数多く来るナイスなお店なんだ!」受付で13ユーロをなんとか支払った私の背中から、こちらを呼び止める声がする。どうやらこのお店の常連客のようだ。海外は旅慣れていると自負していたが、未知の国で、いきなり英語で話し掛けられる時だけは、つい後ずさりしてしまう。

 「上着は、ロッカーの外にスペースがあるからここに掛けるといい」

 「脱衣所で服を脱いだらまずシャワーを浴びて、それからサウナだぞ?」

脱衣所にて現地の常連さんに、入れ替わり立ち替わりで声を掛けられる。その様は、右も左も分からない新入社員が、熟練の諸先輩方にご指南をいただいているかのようだった

 シャワー室に入っても、

 「サウナ室の手前にあるバケツで水をくむんだ」

 「ストーブに水を掛けるとサウナが温まるからやってみろ」

 英語が片言しか話せない私は「OK…OK…」とただ従うだけで精一杯だった。親切心で声を掛けてくれているのは疑いようもないが、身体つきがひとまわりも違う異国の人々に、”全裸”で囲まれるだけでも冷や汗が止まらない……。

  

 しかし最大の驚きはここからであった。

 「熱い…熱い…!」

 「耳がちぎれる!!」

 サウナ室の最上段に腰掛けていると、経験したことの無い強烈な熱波が顔から下に襲い掛かってきた。『日本のサウナよりも温度が低い』という噂はどこ吹く風。サウナ室の上段は天井に限りなく近く、“ロウリュ”による体感温度は日本のサウナ室を上回るのだ。最上段で立ち上がると天井に頭をぶつけかねないその構造は、日本ではまずお目にかかれない。

異国の緊張感と熱さで放心状態となった私は“ととのい”を感じる間もなく、ただただ休憩室の窓際で涼むほかなかった……。

まるで焼却炉かのような外観のサウナストーブ。柄杓でストーブ内の石に水をかけ、高温の蒸気を一時的に発生させることをフィンランドでは”ロウリュ”というが、この”ロウリュ”を実践してみた時の「ジュワ、ジュワ、ジュワワワー!!」という恐ろしい音が耳から離れなかった。Hotellfinland(http://hotellfinland.fi)より

掴もうとしても掴めない、サウナでのお作法

 「サウナ・アルラ」から歩いてすぐ近くに、別の公衆サウナがある。『コティハルユ・サウナ』。1928年創業のこちらも老舗だ。国際サウナ協会会長のリスト・エローマ氏も「観光客こそ立ち寄るべきディープなサウナ」と太鼓判を押す。

目印となる赤い「SAUNA」の看板はコティハルユ・サウナのシンボルとして、様々なメディアに取り上げられている

 コティハルユ・サウナには、玄関の前に腰かけるスペースがある。真冬のヘルシンキでは外気に触れることがクールダウンとなり、サウナと外気を繰り返し往復することで”ととのい”に近い体験を味わえる。ただし、一見すると、”ととのい”を目的として外気を浴びる利用客は少なく、どちらかというとお酒を片手に知人友人と談笑している。

 さらに玄関前だけではなく、利用客のにぎやかな声が中からもれ聞こえてくる……。更衣室、そしてシャワーからサウナ室まで。ここはパーティ会場かと間違えるほどにぎやかで、その場の雰囲気にただ圧倒される。サウナ・アルラにおいても薄々感づいてはいたが、『サウナ室は神聖であり、教会のように振る舞う』という、どこかで耳にした格言は人々の声にかき消されていった。

全身から湯気を立てて冬の寒空に現れる腰巻きの集団は、何故かフォトジェニックな光景に映るから不思議だ

 そして、ここでも現地の方々に数多く声を掛けられる。「サウナ・アルラ」を経て幾分か冷静になっていたのか、今度は会話が出来た(ように思う)。

 「はじめまして! きみはどこの国からきたんだい?」

 「ニッポン? おぉ、一度だけ訪れたことがあるよ。ぼくはキョウトが好きだねぇ」

 「とくにテンプルが気に入っちゃってさ。キンカクジは最高だったね」

 言葉の垣根を越えて、それでも相手とコミュニケートしたいという意思が、やり取りを継続させていく。文法や単語の使い方は正しくなかったとしても、さして大きな問題にはならない。

 「きみはこんなところで油を売っていて大丈夫か? マリメッコで買い物するほうが先決だろ?」

 最終的にはこのようなジョークも交わせるようになった。

  

 「サウナ・アルラ」でもそうであったように、フィンランドの方々は気さくで親切で、”ととのい”はなくとも、楽しく過ごせる場が本場のサウナである。そんな風に思い始めた矢先だった。

 「ところで、ニッポンのサウナで目にした光景なんだけど」

 日本のサウナをこよなく愛する筆者にとって、耳を疑うような言葉が続いた。

 「なぜ、ニッポンのサウナ室はあんなに静かなんだい?」「スピリチュアル的な何かがあるのか?」

 「サウナというのは、気心知れた人達と、にぎやかに会話をする場だろ?」

 「………………」(筆者)

        ◇

 どうやら筆者と現地の利用客とでは、それぞれが抱いているサウナ観には大きなズレがあるらしい。そのズレを頭と身体で把握するには、一晩の体験では物足りないことを痛感させられた……。

(文・写真 サウナ男子)

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