ミレニアルズトーク Millennials Talk

セルフブランディングだけでは生き残れない

  • 【草野絵美✕石井リナのミレニアルズトーク】
  • 2018年2月6日

 

 SNSコンサルタントの石井リナが、ミレニアル世代を掘り下げる連載「石井リナのミレニアルズトーク」。ミレニアル世代の中でも1990年前後に生まれた人間は、現在27歳前後。社会に出て数年たち、ネットネイティブで育った柔軟な感覚で様々な新しい働き方に取り組んでいる。

 中学時代にガラケーを持ち、インターネットとともに育ってきた環境のミレニアル世代たちは、どういった価値観をなにによって形成してきたのか。バブル世代とジェネレーション世代のハザマに生まれ、双方のハブとなり得る存在のミレニアル世代を深堀る。

 第1回目は、広告代理店で働きながら、80年代の歌謡曲を現代風にアレンジするアーティスト「Satellite Young」(サテライトヤング)をセルフプロデュースし、プライベートでは5歳の母親でもある1990年生まれの草野絵美。

 多面的な活動をしている彼女の発信力やブランディングへの思いに、同い年で友人でもある石井が切り込む。

(左)草野 (右)石井

マイノリティだからこそ、発信していく意味がある

石井リナ(以下:石井):絵美ちゃんは広告代理店で働きながら、アーティスト活動であるSatellite Youngをしていて、そしてお母さんでもある……という珍しい経歴。Satellite Youngは、昨年SXSWに出演したり、BuzzFeedやテレビ番組などで紹介されて一気に知名度が上がったよね。

 絵美ちゃんのSNSを見ていると、ある時は「草野絵美」という一人の女性で、ある時は「アーティスト」。そして、ある時は「お母さん」……と、多面的だよね。私もそういう生き方がしたいな、ってすごく尊敬してる。大学在学中からカメラマンをしたり、起業をしたり……と、常にパワフルな絵美ちゃんだけど、何がその軸になってるんだろう?

草野絵美(以下:草野):私、小学校のときから変わっている子だったんだよね。80年代歌謡曲が大好きな小学生だったし、マイノリティな価値観を持っている人間で、どこに行っても宇宙人みたいだなあ、って思ってた。高校の時は多様性のある学校だったんだけど、そこにはLGBTだったりハーフだったりバックボーンが様々な同世代がいて。

 1年間ユタ州で留学もしたんだけど、宗教観が根付いている場所で自分と他人の価値観を考えさせられたり。そういう環境で生きてきたから、多様性を受け入れる人間でありたいし、自分自身も多面的な人間になってるのかな。

石井:いいよね。私も子供が出来たら、できるだけ色々な人がいる環境で育てたいなと思ってる。マイノリティだという価値観を持っているなかで、傷ついたこととかってあったのかな?

草野:無いって言ったら嘘になると思うけど、引きずらないようにしている。そういう言い方ある?みたいな人がたまにいるし、こういう風に見られているんだろうな、というのが伝わってくることもあるけど、それよりも認めてくれる人の方が周りに多いから、それで傷つくのも時間がもったいないよね。

 大学で起業して子供が出来て、アーティスト活動してるって、上にも同世代にも被る人が誰もいないから、周りと価値観が同じじゃなくて当然だと思ってるし。人と変わった環境で経験を積んだ自分が前に出て発信していくことで広がることがあればいいなって思ってるよ。

石井:絵美ちゃんの活動の軸には、マイノリティであり、オンリーワンだっていう意識があるんだね。その価値観は、日本もグローバルになるなかで、とても大切なことだよね。

  

今を生きるには、セルフブランディングとアウトブランディングが必要

石井:絵美ちゃんが主宰の歌謡エレクトロユニット「Satellite Young」は、80年代のイメージと現代のテクノロジーが融合している世界観がすごく新しいよね。世界観が確立されているからこそ、SNSでもバズりやすいし海外にも届いてると思うんだけど、どうやってブランディングをしていったの?

草野:そもそもSatellite Youngを始めた理由が、音楽がやりたいっていう理由ではなかったんだよね。最初は80年代の生まれる前の世界を再現したいという思いからはじめて。そのうちにMV監督、写真家、アニメーターとコラボレーションすることによって、Satellite Youngの世界観が拡張されていった。あとは、メディアに出るごとに自分の活動にキャッチコピーがついていってブランディングされていった、っていうのもあるかな。

石井:メディアによって切り取られるのは、良い側面も悪い側面もあると思っていて。例えば、自分の予期しない形で発信されたり。

草野:確かに自分の見られたいイメージと違うように解釈されて、発信されてしまうことは起こりうるよね。私の場合は今まで起きてないのだけど、メディアの方の解釈が一般的に分かりやすいのだったらそれでもいいかなって。メディアに出るようになってから、「分かりやすくなることを恐れない」って思うようになった。

石井:確かに……。私も最初は、「こういう人」って定義付けられることに対して、すごく違和感があったんだけど、「SNSコンサルタント」っていう言葉によって、自分がどんな人かわかりやすく伝わるなら、それでいいかなって最近は思えてきた。一方で、セルフブランディングについてはどう捉えてる?

草野:誰しも肩書きのように分かりやすい一面とそうではない部分を持っていると思うから、色んな面をSNSに乗せて見せていくのが今の時代のセルフブランディングだと思う。

 「分かりやすくなることを恐れない」って言ったけど、それはテレビやラジオを介したときの話で、個人で発信できるSNSではアーティストの部分や母の部分とか、マスメディアでは伝わりにくい面を発信することを意識しているかな。

石井:自分から見える自分のイメージだけに頑なにこだわってしまっては、伝わる層も狭くなってしまうと思う。絵美ちゃんのブランディングは色々なクリエイターとのコラボレーションや、メディアによって形成されてきたから、「セルフブランディングだけではない」っていうことだよね。

草野:私の場合はMVやアーティスト写真を通して、様々なクリエイターの方に「草野絵美」や「Satellite Young」を解釈してもらってるから、自分の発信力だけで今のイメージを作れたわけではないのだけど、全部他人に委ねてしまうと、自分の何を表現したいか、どういうインスピレーションが入ってきてこういうアウトプットになったのか、とか説明できる要素はちゃんと持ち合わせていないと説得力のあるものは作れない。

 いまは芸能人もプロデューサーの言うことを聞いていれば売れる、といった時代じゃないし、芸能人もインスタをやらないといけない時代だから自分の軸と他人の目線、両方が必要。セルフブランディングは今の世の中、必須な能力だけど、周りによって作られるブランディングも大切で、それをアウトブランディングと言うなら、その両者が大事だよね。

  

ライバルを蹴落とすのではなく、一緒に上がっていくのが今時の感覚

石井:今までの話を聞いていたら、前の世代の人たちよりも、気にすることは確実に増えている気がする。SNSに何を投稿するかもそうだし、メディアや他者からの評価っていうのも敏感に感じとっているよね。

草野:そうだよね。あと、今の子たちと上の世代との大きな違いで言うと、SNSで個性を発信できるからライバル意識がない。戦うんじゃなくて、一緒に上がっていこうという感じが強いなって。

 今でいうと、渡辺直美さんも、ゆりやんれとりいばあさんが出てきて、インスタで双子コーデをして投稿したり。お互いのフォロワーにリーチできて、相乗効果でファンが増えたりする。そういう時代だからこそ、「ライバル」って感覚がなくなってきてるんじゃないかな。成長しあうって意味でのライバルはいるけど蹴落とそうとしたり嫉妬するのは意味ないし、それはダサいよねっていう感じ。

石井:確かに嫉妬っていう感覚はあんまりない。特に今の10代は「他人は他人、私は私で良し」みたいなスタンスが当たり前になってきてると思う。

 私たちが10代のとき、2000年代はファッションのジャンルや聴いている音楽が同じだと仲良くなったりしたよね。でも今の中高生は、全然違う感覚の子でも友達、っていうような雰囲気がある。Popteenの表紙にも全然違うジャンルの女の子たち3人が載っていることがあって、時代を物語っているなって。

草野:そう思う。色々な共通的が複合的にあるからそこで繋がるし、お互いを認め合って一緒に上がっていきましょうみたいな感じがすごくする。

石井:象徴的な子がイギリスの女優にいて、ミリー・ボビー・ブラウンって13歳の女の子なんだけど。Netflixドラマの「ストレンジャー・シングス」で有名になった子で、SNSのフォロワーが日に日に100万ずつくらい増えてて、ソーシャルパワーも強い。

 フォロワーが1000万になったときにメッセージ動画を配信してて、そのときの言葉が時代を反映してるなって思った。「1000万人ありがとうございます。でも私も同世代の頑張っているヤングスター達をフォローしているので、私がフォローしてる人達も見てね」って言ってたの。

草野:ミリーはすごいよね。スッピンに眼鏡でライブ配信をしている飾らない等身大な感じも、すごく今っぽいと思う。あと、タグ付けしたりコラボするとお互いに伸びるのがソーシャルメディアの特性としてあるから、ライバルじゃなくて友達になったほうがいい、というのもあるかも。YouTubeとかもコラボ動画はアルゴリズム的に伸びるから、やらない理由はないし。

石井:その反面、SNSが日常生活の大半を占める時代になってきたからこそ、SNSで悩み事が増えたと言っている子もいるよね、若い子だと。友人を選んでインスタに載せてるよね、とかさ。

草野:その辺は本当に鈍感になっていかないといけないよね。命に関わること以外は無視。だからあんまり繊細過ぎると苦しむ時代よね。

石井:それはそうかも。これからを生き抜くためには、SNSでの人間関係に対して過剰に反応しないという鈍感力も求められるスキルの1つなんだろうね。

 幼少期からインターネットに触れ、自分と他人を冷静に分析できるミレニアル世代。だからこそ、SNSの流れにも敏感に適応しています。セルフブランディングをしながら、同時に他人の視点も取り入れていく。これは、いまの時代に活躍する彼女だからこそ、気付き習得した必要なスキルの1つなのかもしれません。

草野絵美:
公式サイト:http://emiksn.com/
Twitter:https://twitter.com/emikusano

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Text:保科さほ
Photo:馬込 将充

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