インタビュー

『リメンバー・ミー』の世界へ ピクサーが初VR作品を手がけた理由とは

  • ピクサー・プロデューサー ソンドハイマー氏インタビュー
  • 2018年4月6日

『Coco VR』のオープニング画面©Disney/Pixar

 公開中のディズニー/ピクサーのアニメーション映画最新作『リメンバー・ミー』(原題:Coco)は、 華麗で臨場感あふれる3DCGアニメーションと家族愛を描いた感動的な物語が評価され、先月発表された『第90回アカデミー賞』では長編アニメーション賞と主題歌賞の2部門を受賞した。

 制作したピクサー・アニメーション・スタジオは、この映画のプロモーションのため、初めてVRコンテンツ『Coco VR』を制作し、こちらも話題を呼んでいる。

映画の舞台の住人になりきって記念撮影できる

『Coco VR』の中で記念撮影する筆者。コントローラーを持って手を広げれば自由にポーズをとれる。©Disney/Pixar

 『Coco VR』は、映画の舞台である「死者の国」の住人になれるコンテンツだ。筆者もギアを身につけて試してみた。死者(の骸骨)に変身した自分をスーツに着替えさせたり、紙飛行機を狙った方向に飛ばしたり、さらにはきらきらと輝く高層の建物が美しい景色を360度ぐるぐる見渡しながら電車で移動したりと、すっかり夢中になった。

 「自分の頭を外して持ち上げられますのでやってみてください!」と言われて試してみたが、なかなか頭をつかめず困っていたら、何のことはない、頭は足元に転がっていた、なんて笑える体験もできて楽しかった。

 このVRコンテンツ制作を担当したピクサーのプロデューサー、マーク・ソンドハイマー(Marc Sondheimer)氏が来日した。ソンドハイマー氏は、短編アニメーション映画『ひな鳥の冒険』のプロデューサーとして、第89回アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞している。

 ソンドハイマー氏に、VRコンテンツを作成した狙いや、ピクサーの今後のVR分野でのビジネス展開について聞いた。

ピクサーのプロデューサー、マーク・ソンドハイマー(Marc Sondheimer)氏 撮影:Akira Kudochi

ピクサーがVRコンテンツ制作に乗り出した理由とは

――なぜピクサーは、この時期に初のVRコンテンツを制作したのでしょうか。

「VRはいま飛躍しようとしている技術です。ピクサーはVRにどう取り組むべきかを考えてきましたが、アプローチの仕方ははっきりしませんでした。そこで、ディズニーやOculusというパートナーと一緒に、映画のプロモーションとしての短いコンテンツから始めることにしたのです。結果として、色鮮やかで、信じられないほど見事な世界を描いたと高い評価をいただいた『リメンバー・ミー』は、VRの最初の作品にふさわしかった。ちょうど良い時期に、良い映画で、良いパートナーと一緒に取り組めたと考えています」

――すでに優れたCGアニメーションを制作してきたピクサーにとっては、VRコンテンツの制作は難しくなかったのでは。

「VRコンテンツは、リアルタイムでレンダリング(描画)するものですが、我々が独自のシステムで制作してきた3Dアニメーションは、リアルタイムでレンダリングすることはできません。ここに根本的な違いがありました。また、VRでは、ゲームプレー(操作)やメニュー画面なども必要です。これらの分野では、パートナー企業の支援を受けながら、映画のキャラクターをゲームエンジンの中で動かしました」

――今回のコンテンツでピクサーはVRコンテンツ制作についてのノウハウを手に入れ、今後はVRコンテンツをより積極的に制作するようになるのでしょうか。

「確かに、VRコンテンツについて多くの点を学びました。映画のプロモーションという点では答えはイエスです。ただし、VRコンテンツとして長編の物語をピクサーがつくるのかという点では、まだわかりません。ピクサーは、観る人の心を動かす最高の物語をつくることを目指していますので、いまのところは、VRという手法でどうすれば感動的な物語を伝えることができるかを理解しようと努めている段階です」

公開中の映画『リメンバー・ミー』©2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

――映画のように、受動的に鑑賞するVRコンテンツは成り立つでしょうか。

「VRは基本的にインタラクティブ(双方向)なメディアであり、人々は好きな方向を見ます。一方で、映画では製作側がアングルを定め、見せたいものに焦点を当てます。視点一つとっても、製作者とユーザーのどちらがコントロールするかで大きな違いがあります。可能性はあると思いますが、まだ研究するべき点が多いです」

――映画館ですべての観客がVRゴーグルを装着して、ピクサーのVRコンテンツ作品を鑑賞するような未来は来るでしょうか

「アメリカではまだです。視野が360度あるというのはすばらしい体験になると思いますので、それでコンテンツを鑑賞することは、人々に新しい扉を開くでしょう」

――今回のVRコンテンツづくりを通じて、ピクサーの映画制作に技術的なフィードバックはありましたか。

「いくつかありました。一つの例ですが、主に背景などの美術の分野で、テクスチャーを追加する前のものではありますが、見え方のチェックにVR技術を活用しています」

――ピクサーとして、次のVRコンテンツづくりはもう始まっていますか。

「また映画のプロモーションとしての短いVRコンテンツを制作する可能性はあります。個人の意見になりますが、『トイ・ストーリー』はVR向けの映画だと思います。また私たちのVRコンテンツを紹介しに日本に来たいですね」

(取材・文 &M編集部)

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『リメンバー・ミー』は、『アナと雪の女王/家族の思い出』と同時上映で公開中。

上映情報などはディズニーの公式サイト

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