オトコの別腹

もちっとした塩気、甘すぎぬあんこ、さらっとした味……多忙な日々のつかのまのぜいたく

  • 2018年4月11日

「ながしま」の豆大福

  • 古今亭文菊さん

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 つらかった前座時代に、こっそり食べてました。赤エンドウ豆の入ったもちっとした皮には少し塩気があって、あんこが甘すぎず、さらっとした味。

 師匠の円菊が、寄席の差し入れによく利用していました。取りに行くのはわたしの役目。前座の15年ほど前は、365日休みなく師匠の家に通っていたとき。朝9時には家に行って、寄席のないときはずっとそうじをして、じっとしている時間は全然ありませんでした。いつも怒鳴られていて、精神的には抑圧されていましたね。

 だから、取りに行く時間は、つかの間の解放されるときなんです。自分の分を買って、バス停で食べるこの味は格別でした。ぜいたくをしている気持ちになってね。

 師匠の厳しさの裏には、古典落語の空気感を出すため、地をはいつくばるような経験が必要だという考えがあったのだと思います。6年前、真打ちになって、そのころは笑って話しかけてくれてうれしかった。でも、まもなく亡くなってしまいました。もうあのときの味は味わえなくなりました。

    ◇

 ここんてい・ぶんぎく 落語家。

 ◆「ながしま」 東京都墨田区文花1の1の5(電話03-3612-1239)。110円。午前8時~午後7時。原則火曜日休み。

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