「真面目なひねくれ者」オカモトレイジ(OKAMOTO’S)の揺るがぬ哲学

  • 2018年4月12日

  

 誰しも年を重ねるにつれ、腰が重くなる。ささいな失敗を恐れ、チャレンジ精神より羞恥(しゅうち)心が上回り、何事にも逃げ腰になっていく。その果てに待っているのは思考の硬直だ。

 そんな負の流れを断ち切るにはどうしたらいいのか。答えの一つは若い世代の感性に刺激を受けることだろう。

 この小特集では、新しい時代を切り開く20代のミュージシャンたちに「譲れない価値観」を聞いていく。彼、彼女らの“軸”に触れることで、刺激を受け、凝り固まった思考を解きほぐしていきたい。

 初回に登場するのはOKAMOTO’Sのドラマー、オカモトレイジ。本業はミュージシャンだが、同郷のヒップホップグループの制作スタッフになったり、仲間たちと個展を開いたりと、その活動は自由そのもの。

 多面的な活動へと自身を突き動かすものは何なのか。どこまでも柔軟なオカモトレイジに行動の指針を聞いた。

やってみるとなんでも意外と簡単に実現できる

――今回オカモトレイジさんにお話をうかがいたいと思ったのは、ドラマーという本業に縛られず、幅広い表現活動を展開する柔軟さの背景にあるものを知りたかったからです。そこでまずは、今レイジさんが関心のあることからお聞きします。

オカモトレイジ(以下レイジ) えーと、なんだろう……。韓国の音楽とボウリングですかね。

――……ボウリングですか?

レイジ はい。俺、運動は全然得意じゃなくて。でもボウリングは初めて楽しいと思えた球技だったんです。それでものすごくハマっていたんですけど、少し前にいきなりスランプに陥ってガーターばかりになってしまって。「どうしてだろう?」と試行錯誤していたらようやく問題がわかって、ボールを手前で投げすぎていたんです。そこに気づいてからは、再びいいスコアを出せるようになりました。本当に色々な投げ方を何度も何度も繰り返しましたね。

――普通の人はボウリングに対してそこまで突き詰めて考えないと思うのですが……。

レイジ 突き詰めるというより、ただボウリングがうまくなりたいと思っただけで。難しいゲームをクリアするために何度も挑戦するのと同じ感覚というか……基本的にはなんでも「プレーヤーになってなんぼ」と考えています。やらずに諦めるのはもったいないですし、やってみると意外と簡単に実現できる。「好きな韓国のアイドルのTシャツを着たい」「けど良いデザインがない」「じゃあ作ろう」くらいの感じです。

――そのフットワークの軽さを仕事でも発揮されていますよね。2016年にヒップホップグループ・KANDYTOWNがデビューする際、レイジさんが制作スタッフになったのには驚きました。ミュージシャンが事務的な裏方になるのって、業界的にかなり珍しいことなのでは?

レイジ それは、俺が彼らのきちんとしたアルバムを聴きたかったから、という思いが前提にあります。彼らはこれまで地元に密着した活動しかしていなくて、それがカッコいいところでもありました。俺はそのKANDYTOWNのカッコよさを、そのまま世の中に広げたかった。それで彼らとレコード会社の間に入って、ポジティブなものづくりをするための調整役を担いました。

――そういう新しい試みをする際に、二の足を踏んだり、つまずいてやめたりすることはないんですか?

レイジ つまずくことはよくありますけど、やめたりはしませんね。好きでやっていることなので。最近、DJでも同じようなことを感じました。去年K-POPにハマってDJでもよくかけるようになったのですが、盛り上がる現場とそうじゃない現場にばっくり分かれてしまった。フライヤーにデカデカと名前を入れてもらっているのに盛り上げられなくて、これではダメだなと落ち込みました。

 でも、決してK-POPが悪いわけではなく、問題は常に自分にある。いろいろ考えた末に、「自分が好きなK-POPの中から、現場ごとにみんなが楽しめるものを探せばいい」と答えが出ました。壁にぶつかっては悩み、考え、行動して答えを出す。いつもその繰り返しです。

  

オカモトレイジ

1991年生まれ、東京出身。OKAMOTO'Sのドラマーとして活動し、2010年アリオラジャパンよりCDデビュー。デビュー当時は年間平均100本を超えるライブを展開し、海外公演等も積極的に実施。幅広い音楽的素養を生かし、DJとしても活動中

絶対に他人に迷惑をかけたくない

――そのスタンスはバンドでも同じですか? メンバーのキャラクターが違って、意見がぶつかったりすることもありそうですが。

レイジ バンドというのは特殊な共同体だと思います。4人で1つ。俺らは中学の頃からずっと同じ時間をすごしているので、「何がダサくて、何がイケてるのか」という共通認識のようなものは持っています。もちろん、それぞれ異なる個性を持っていて、好きなものも違う。けど、全員がそれを理解し認め合っているので、意見がぶつかることがあっても、そこで険悪な雰囲気になることはないです。

――OKAMOTO’Sは昔からそういう感じ?

レイジ いやいや(笑)。デビューしてからですね。8年もメジャーのレコード会社で活動していると、酸いも甘いもかみ分けてこんな感じになるというか。自分自身を俯瞰(ふかん)できるようになったのも、デビューして人に見られることを意識するようになってからですし。

――学生の頃はどんなタイプだったんですか?

レイジ 我の強い嫌な奴でしたね。俺自身は中学からですけど、幼稚園から大学まである私立の学校に通っていて、OKAMOTO’Sのメンバーも全員そこ出身。ゆとり教育を何十年も前から採り入れているような学校で、校風もすごく自由で、悪く言うとバカばっかり(笑)。俺自身も全然勉強はできないですし。たまに自分の書いた字が下手すぎて卒倒しそうになります(笑)。そんな学校だから、みんな高校くらいになると当たり前のように悪いことに手を出し始めたりする。俺はそういうのがすごく嫌でした。そんなことで粋がるのはダサいというか。

――思春期ならではのルール違反を楽しむ感覚ですよね。それに対する嫌悪感はどこから来ているのでしょう?

レイジ う〜ん、性格的な問題だと思います。小さい頃から、子供だろうが大人だろうが失礼な人がすごく嫌いで、見るのもイヤだった。だから自分は絶対に他人に迷惑をかけたくないと思っていて。この部分に関してはOKAMOTO’Sのメンバー全員に共通する感覚です。

――4人とも礼儀には厳しいと。

レイジ ミュージシャンって、取材に遅刻してきたり、打ち合わせに来なかったり、そういうイメージがあるじゃないですか。OKAMOTO’Sはロックバンドですけど、メンバー全員がそういうネガティブなロック的アティテュードを持ってないというか。みんな超真面目です(笑)。

Instagramなんて全部うそ

――「真面目」ですか……? こういう言い方も何ですが、レイジさんのInstagramを見ると、いつもふざけている感じがして、真面目ともちょっと印象が違うような。

レイジ Instagramだと、俺は年がら年中遊んでいるように見えると思います。けど、あんなの全部うそですよ。ものすごく作り込んでますから(笑)。

 日常生活の中で起こった面白そうなことを写真や動画で撮りためておいて、家で更新することが多いです。これまで一番反応があったタイミングに投稿してみたり、全く寝てない印象を与えるため夜中3時くらいにいきなり更新してみたり。意図的にやっています。

――なぜそんなことをするんですか?

レイジ 俺やバンドのことを知ってもらう大事なきっかけになると思うからです。完全に仕事ですね、Instagramは。髪形を変えたり、ヒゲを生やしたりするタイミングも、実はきちんと考えています。気まぐれなんて絶対ない。キャプションもノリで書いているように見せていますけど、実は下書きをして、何回も書き換えたりしています(笑)。「これだとちょっと嫌みかな?」とか調整して。

――レイジさんのInstagramは真に受けないほうがいい?

レイジ そもそもSNSなんて信用しないほうがいいですよ。あれはマジックみたいなもの。マジックって、客の視点や意識を散漫にするためにマジシャンたちが尋常でないテクニックを駆使していて、毎回同じネタを見せられても楽しめる。

 SNSもそれと同じで技術の世界。InstagramやTwitterをやるようになって、「印象ってこんな簡単にコントロールできるんだ」と思うようになりましたし、そこを楽しんでやっている部分もあります。俺自身は直接見たもの以外は全部うそだと思っています。自分で見て、聴いて、カッコいいと感じたものこそ価値がある。

  

――今のお話は、周囲に惑わされず自分自身の価値観を信じたほうがいい、というメッセージにも聞こえます。

レイジ そうかもしれないですね。実は俺、「田舎者」が苦手なんです。といっても、俺の中での「田舎者」は地方出身者に対する差別用語ではありません。自分の世界の“首都”に住めていない人、つまり自分の中の軸や価値観、アイデンティティーが見えない人のことを指しています。東京出身でも「田舎者」はいっぱいいます。

――自分自身と正面から向き合うことが出来ていない人というか。

レイジ そうとも言えますね。「自分探し」といって世界旅行をする人がいるじゃないですか? 正直に言うと俺はその安易さや軽薄さが苦手です。大した努力もせずに、自分が生活している場所で居場所を見つけられなかった人が、世界を旅したところで何を見つけられるんだっていう。旅する前にやれることはもっとあるんじゃないかな、と。

――話を聞いていると、根っこの部分は我の強かった高校生の頃とあまり変わっていませんね。

レイジ あははは(笑)。そうかもしれないです。やっぱり自信を持っている人はカッコイイと思うし、俺自身もそうありたいと思っています。だから、自分の中に揺らがない価値観を持ちつつ、他者には配慮する、ということを常に意識しているし、それが行動全般につながっていると思う。俺はそのスタンスをずっと「真面目」と呼んでいます。

 今思うと、自分の中で譲れない価値観って、たぶん何事に対しても真面目でいることなんですよ。この感覚はずっと大事にしていきたいですし、これからも変わることはないでしょうね。

(文・ライター 宮崎敬太、撮影・寺沢美遊)

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