漫画家・まんしゅうきつこと考えるサウナの奥深さ

  • Tent Sauna Session#001
  • 2018年5月15日

  

ホテルとキャンプが異なる“宿泊体験”であるように、温浴施設のサウナとテントサウナも異なる“サウナ体験”なのだと言える。テントサウナならではの“ととのい”を広げるべく関西を拠点に活動する「Tent Sauna Party」をパートナーにスタートした不定期連載「Tent Sauna Session」。記念すべき一回目のゲストは、「SPA!」で実録銭湯漫画『湯遊白書』を連載するまんしゅうきつこさん。水風呂の魅力に開眼し、日々サウナに通うまんしゅうさんをTent Sauna Partyが拠点とする琵琶湖畔に招き、テントサウナに入りながら話を聞いた。

水風呂に潜りたい。

  

  

取材当日は、あいにくのにわか雨。湖畔にはかなり強い風が吹いている。自然との一体感が魅力であるテントサウナにとって、自然環境はそのままサウナの質にも影響を及ぼす。まだ肌寒い2月中旬ということもあり、コンディション的に厳しいサウナ体験となった。

――今日は外気浴も厳しい状況ですが、実際にテントサウナに入ってみていかがでしたか?

すごく良かったです。実は1セット目で深い瞑想(めいそう)状態に入っていました。湖(水温7.8度)は掛水をしないで飛び込めるのがいいですね。この間、男性専用サウナ「ニューウイング」でサウナを体験させてもらった時に思ったんですけど、頭皮に水をつけるのってめちゃくちゃ大事だなって。

  

  

――やっぱり、水風呂は潜りたくなりますよね。

そうですね。けど女湯はプール付きの施設を除いて基本潜ってはいけない雰囲気なので、掛水の時は頭から冷水をザブザブ浴びます。

別に施設が禁止していなければいいと思うんですけどね。私も潜水禁止の貼り紙がない時は潜ってます。男性側もそうだと思いますけど、施設によってサウナのルールって違いますよね。だから郷に入っては、じゃないですけど、新しいところも最初は空気を読んでなじんだほうがいいんですよね。

  

――施設ごとのルールやヌシ(編注:温浴施設の利用に際し、個人的なルールやマナーを設け、時にそれを他の利用者にも求める常連客)の目を気にしなくていいのが、テントサウナの魅力でもあります。

ヌシの話をすることを快く思わないひとがいるんですよ。古くからいる常連さんを大事にしろって。ヌシっていう表現すら使うなっていう界隈(かいわい)の方もいらっしゃるので。でも本人は嫌がってないんです。「わたしヌシだからさ」とか「このひとヌシなんだよ。ちがう、あんたがヌシだよ」なんて。むしろ誇りに思っている感じもありますね。たぶん今のペースで通い続けたら何年後かに私もヌシと陰で言われる可能性もありますけど、どうせなるなら口うるさくて煙たがられるヌシではなく、穏やかで心優しいヌシになろうと思います。

――「SPA!」の連載では、正しい入り方をヌシに教わりながら、まんしゅうさんがサウナにハマっていく過程が描かれています。

最初は水風呂がどれだけいいのかも知らずに、サウナだけ入っていたんですけど、人の動きを観察していると、サウナと水風呂を行ったり来たりしてるじゃないですか。それで(水風呂にも)入ってみようかなって。

ヌシは本当に窓から人の行動を見ていますからね。お風呂とサウナに入る順番や水風呂を待っている人がいたらすぐに出るとか、以前に「体を洗ったあとに熱い湯に入ったら、最初はぬるい湯に入ってから熱湯に行って、次にサウナだよ」って教えてくれて。結局はその人のマイルールなんですけど、ヌシにきびしく仕込まれたので、基本どこにいっても怒られることはないです。それまでは、サウナの入り方も何もわからなかったので。私、最初髪の毛を洗わずにサウナに入っちゃったんです。体洗ったからいいやって座ったら髪の毛洗っておいでって。しかも下に何も敷かないで座っていたのでそれも指摘されて。サウナではタオルかマットを下に敷くこともそこで初めて知ったんです。

――施設独自のルールから解放されること以外で、サウナに求めるものはありますか?

暗さと熱さと静けさ。さらに窓から森が見えたりしたら最高ですよね。20歳くらいの頃から将来は山奥に住んで自給自足で生活したいって言い続けているんですけど、そこに「自分好みのサウナ小屋を作る」が加わりました。当時は鼻で笑われたりしましたけど、10年後くらいに山奥のサウナ小屋に入っている自分を想像できるので実現できそうな気がしてます。

サウナの深みにハマり続ける。

  

――ご著書の『アル中ワンダーランド』には「私は お酒を飲まないと 人と明るくしゃべれないの」というセリフがあり、まんしゅうさんの相手を楽しませることへの強迫観念が描かれています。その点、サウナは自分だけの快楽をむさぼる行為といえますよね。

最近思ったんですけど、サウナの前に運動っていうワンクッションを置いたほうがより気持ちいい。どんだけ快楽に貪欲(どんよく)なんだって感じですけど。

  

  

――人としゃべれないからこそお酒を飲んでアル中になったまんしゅうさんが、アルコール依存を克服して、いまはサウナにハマっている。そこにストーリーを感じてしまいます。お酒も合法ではあるけれど用法・用量をコントロールしないと深みにハマってしまうように、サウナで得られる快感にも中毒性を感じている人は多いと思います。

あまり中毒っていう言葉は使いたくないんですけど、「もう中毒だから、あたしは」っていうおばちゃんに何人も会いました。私自身、ハマりやすい体質なんですよ。お水よりもトマトジュースばっかり飲んでた時期やチョコレートばかり食べてた時期もありますし。いまは完全にサウナと香辛料ですね。ヨガに行ってそのあとサウナに行って香辛料たっぷりのカレーを食べると完全体になった気がします。でも、あんまりマンガの中で中毒って書かないようにはしています。サウナに悪いイメージがついちゃいますから。

  

――取材含めこれまでに数々のサウナに入られていますが、ベスト3を挙げるとしたらどこでしょう。

女湯でサウナが熱くて水風呂が冷たいところってほんとうにすくないので、ニューウイングが1位になっちゃったんです。でも、あそこは男性用なので……。順位付けは難しいですけど、草加健康センターと名古屋のサウナラボと豊島園の「庭の湯」の屋外にあるフィンランドサウナと……あ、習志野にあるリカちゃんハウスみたいな「クアパレス」は、サウナが120度でお水も良かった。

温浴施設に行くことは自分にとって遊園地に行くことに近くて、どちらかといえば非日常だったのですが、いまではコーヒーを飲むくらいライトな感覚で日常に溶け込んでます。

――「湯遊白書」の連載当初は日常を描いた回もありましたが、最近はサウナ体験がメインです。今後の展開はどうなっていくのでしょう?

最近サウナ色が濃くなりすぎているので、別の話を描きたいなとは思っているんです。サウナに飽きることはないと思うのですが、もしかしたら「実録銭湯漫画」から「実録ヨガ漫画」になるなんてことがあるかもしれません。

(文・ライター 金井悟、写真 和田裕也 取材協力・Tent Sauna Party)

  

■プロフィール

まんしゅうきつこ

1975年生まれ、埼玉県出身。日本大学芸術学部卒業。2012年に開設したブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」がネット上で大きな話題に。以降、漫画家、イラストレーターとして活躍。著作に『アル中ワンダーランド』『ハルモヤさん』『まんしゅう家の憂鬱』『まんしゅうきつこのリフォームワンダーランド』。「週刊SPA!」の連載をまとめた『湯遊ワンダーランド』が5月22日に書籍化。

BOOK

『湯遊ワンダーランド』
扶桑社/972円(税込み) まんしゅう きつこ 著

サウナ・水風呂・外気浴――それらをひたすら繰り返すだけ。すると退屈で灰色だった毎日は、少しずつ熱を帯び色づきはじめた。人気漫画家まんしゅうきつこ、お酒の次はサウナにハマる!?  『週刊SPA!』で連載中の実録銭湯漫画『湯遊白書』が、『湯遊ワンダーランド』と改題のうえ、待望の書籍化!

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