若手テーラー、技に日本の美学

  • 2015年9月25日

写真:上木規至=東京都港区南青山、郭允撮影 上木規至=東京都港区南青山、郭允撮影

写真:山神正則=東京都港区南青山、郭允撮影 山神正則=東京都港区南青山、郭允撮影

写真:上木規至が手がけたゼニアの新作 上木規至が手がけたゼニアの新作

写真:平林洋服店の新作ジャケット 平林洋服店の新作ジャケット

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 日本の30~40歳代前半の若手テーラー(注文服の仕立職人)が、東京を中心に数が増え、世界から注目され始めている。イタリアなど本場仕込みの技に加えて、こまやかさや柔らかさ、カジュアル感など日本独特の美学が込められていることが、人気の秘密のようだ。

30~40代に世界が注目

 今月5日、伊メンズブランドの老舗エルメネジルド・ゼニアが都内で発売したのは、生地も仕立ても全て日本製の今期のみの限定ライン。日本人の若手仕立職人数人が製作に携わった。

 丸みを帯びた肩のラインや襟の繊細なハンドステッチ、体に沿いながらも微妙なゆとりを持つクラシックなジャケットやパンツ、またカジュアルなデニムなどがお披露目のイベントに並んだ。

 ゼニアといえば、紳士服ブランドの最高峰の一つ。2010年の創業100周年を機に、各国で企画を展開するが、日本では若手職人とのコラボに的を絞った。

 来日したエルメネジルド・ゼニアCEOはその理由を「本国の職人も驚くほど高度な技術を持つ日本の若手に敬意を表した」と説明。服をデザインしたステファノ・ピラーティは「服に楽しさだけでなく、もてなしの心も詰まっているのに驚いた」と語る。

 このジャケット(43万円~)やパンツ(16万円~)は、東京・南青山で仕立屋チッチオを営む上木規至(のりゆき)(37)が手がけた。肩や襟、袖は柔らかい雰囲気だがシルエットはシャープ。その作風には若々しさと風格が同居する。

 上木は21歳で大阪の仕立工場に就職。その後に勤めた紳士服メーカー、リングヂャケットでイタリア製の仕立てのカッコよさにひかれ、25歳から本場ナポリで「がむしゃらに修業を積んだ」。

 帰国後06年に独立。現代的な感覚も注目されアジアや欧州からの顧客も多い。「常にアンテナを張っていないと時代に乗り遅れる。新しさはあるけれど、正統派の服。その時々に顧客が最も似合うものを提案したい」

こだわりを随所に

 シャツを担当したのは、“山神シャツ”で知られる山神正則(39)。思春期の頃からのシャツ好きが高じて独学でシャツを作り続け、06年に独立した。

 「着心地だけでなく、どこでお召しになるか考えます」と山神。1人で全工程を手がけるので、1日に1着がせいぜい。第二の肌のように体になじみ、動きに沿うシャツを目指す。

 山神は休日でも三つぞろいのスーツで過ごす。毎日着てこそ改善点がみつかるからだという。ボタンをかける時、指に違和感がないように糸の量まで工夫するので、全てのボタンの高さが違う。

ていねいさに共感

 他にも注目される仕立職人は多い。南青山の平林洋服店の平林伸元(39)は「リラックスして着られる注文服」を狙う。適度なゆとりを持たせたサイズ感などが支持され、多くのセレクトショップのオリジナルスーツも手がけてきた。シルクのシアサッカーなど国産の独自素材も開発。「今っぽい空気感があり、日本の気候や日本人の体形に合う服を作りたい」という。

 こうした若手職人が増えた背景には、時代の後押しもある。多感な10代が1990年代、カジュアルブームや内外のデザイナーブランドブームの洗礼を受けた。その後クラシコイタリアなどの手作りの伝統的な紳士服が新たに注目されたのも見ている。

 仕立服に詳しい大野陽(あきら)メンズ・イーエックス誌編集長は「日本人のきめ細かさが生きる仕事。ていねいに一着を手作りする精神は日本の若い男性の共感を呼びやすい。イタリアのまねではなく、柔軟な発想による日本独自の仕立服は今後さらに増えていくのでは」と話している。(編集委員・高橋牧子)

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