出石尚三 紳士服飾研究

「スパッツの研究」 もとは紳士用の洒落者小道具

  • 文 出石尚三
  • 2015年11月2日

写真:(イラストレーション 桑原節)
(イラストレーション 桑原節)

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 ご存じの通り、スパッツは保温と装飾とを兼ねた、タイツに似た脚衣(パンツ)です。タイツと異なるところは、一般的に足首までであることでしょう。主に女性が着用することが多いそのスパッツを、なぜ「紳士服飾研究」で取り上げるのか――。

 もともとは、男性用のアイテムだったからです。英国で18世紀に登場し、第二次世界大戦頃まではごく一般的な装飾品だったといわれています。最流行期は1920年代。その当時の洒落(しゃれ)者は、まず例外なくスパッツを愛用したものです。スパッツ、ケイン(ステッキ)、そしてブートニエール(飾り花)は、洒落者にとっての三種の神器ともいえるものでした。

 スパッツの源流は「スパッターダッシーズ」。これを略して「スパッツ」と呼ばれるようになったのです。スパッターダッシーズは17世紀から使われていた泥除(よ)けのこと。今と違い、昔の道路は舗装も少なく、雨が降るとぬかるむわけです。すると、靴が汚れ、パンツも汚れます。それで、靴やパンツを守るための泥除けがスパッターダッシーズでした。

 現在は「脚絆(きゃはん)」という言葉をほとんど使うことがありませんが、スパッターダッシーズは「西洋脚絆」とも呼べるものです。

 この実用的なスパッターダッシーズが時代とともに、足元のアクセサリーとなっていくのです。形も変わり、20世紀初めの頃は、モーニング・コートなどに合わせました。つまり、スパッツは昼間に限ってのアイテムとなります。

 ざっと100年ほど前の紳士用の洒落者小道具が、現在の女性たちの必需品ともいえるほどのアイテムに。服飾品とは、なんと面白いことでしょうか。

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PROFILE

出石尚三(いづいし・しょうぞう)

1944年12月16日生まれ。香川県高松市出身。射手座のB型。身長177cm、体重75キロ。服飾評論家。ファッション・エッセイスト。国際服飾学会会員。主にメンズ・ファッションの記事を執筆。著書も多数。好きな作家はサマセット・モーム。好きな画家はロートレック。好きな音楽家はショパン。好きな花は薔薇。好きな色はピンク。好きな言葉は「夢」「希望」「愛」。

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