ファッション大国イタリアが深刻な不況にあえいでいる。2001年には約7万3千の関連企業があったが、リーマン・ショック後の2010年には約5万4千社に激減した。生き残りの鍵は何か、逆境の中でも成長を続けている作り手に聞いた。
ミラノから南へ車で1時間余り。パルマ県ソラーニャに、紳士服作りではイタリア有数の企業として知られるカルーゾがある。15の高級ブランドから生産委託を受けるなど、年17万枚のスーツやコート、13万枚のパンツを作っている。
従業員は約600人。パタンナーは各ブランドのデザイナーから届くスケッチを元に、パソコン上で型紙を作っていた。生産段階では、縫い子がモニターに仕様の詳細を呼び出しながら仕上げていく。伝統に育まれた高い技術を現代的な形で進化させた現場だ。
先頭に立つのは、ウンベルト・アンジェローニ最高経営責任者(CEO)。ブリオーニを世界的な企業に育て上げた実績を持つ。カルーゾを08年に買収。他社からの人材の獲得にも熱心で、生産管理やパターン作り、素材のデザインなど各分野に専門家を配する。「大半の国内企業は過去の遺産を食いつぶしているだけで、将来像を描けていない。私たちはテーラリングを進化させ、ユニークな服を提供していくことができる」と自信を見せる。
他社からの請負だけでなく、抑えた価格で旬な服を提供する自社ブランド「カルーゾ」は日本でも徐々に浸透している。手縫いを駆使した最高級ブランド「ウマン」も展開。全体の売り上げは昨年、過去最高の84億円に達したという。
「豪華な服をセレブに着せて売っていくというようなビジネスは行き詰まっている。時代は変わった。私たちは虚栄の値段は付けない。価値に見合う値段の服こそが求められている」
消費者が「どこでだれが作った服なのか」にこだわる風潮の中で、サルトリア(仕立屋)も支持されている。イタリア南部、シチリア島のパレルモに店を構えるクリーミは、カルメロとマウロの親子が営む。
19世紀に英国貴族が滞在したパレルモでは、英国的な要素とシチリアの伝統が融合した独自のスタイルがある。袖ぐりを徹底して小さくするのは「優雅さの追求だ」とマウロ。動きやすさも兼ね備えたスーツに仕上げるには高い技術が要求され、体の線に沿うようにひざの上で曲線を利用して縫い進める。スーツで25万円前後からと高価だが、「しっかり顧客をつかんでいるから不況の影響もない」とカルメロは話す。
6月のミラノ・メンズコレクション期間中に開かれたイタリアファッション評議会の記者会見では、危機に直面するイタリアの現状についての質問が相次いだ。だが、役員を務める高級ブランドの経営者からは、「伝統を前に進める」といった抽象的な答えばかりが目立った。
成熟した先進国市場でブランドビジネスが伸び悩むようになった今、生き残るのは、確かな技術の裏付けがあり、個性が光る服を提供するという「当たり前」を実践できる作り手なのだろう。(中島耕太郎)
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