ビジネス靴の鉄則は、難しくはない。鞄とベルトが黒ならば黒を、茶色ならば茶色の靴を。スリップオンではなく、紐靴を選ぶ。ここまでは、言うに及ばないビジネスマンの常識である。10万円を超えるような高級靴を愛する靴フェチの男性もいるが、そこまでいくと趣味の領域。高い靴を買うことは、マストではない。それよりも、すり減ったかかとはそのままにせず、すぐにソールの手入れをすることを心がけるべきだと思う。そういった意味では、ビジネス靴の選び方は、おしゃれよりもマナーの領域に属する。
難しいのは、カジュアル靴の選び方。どんなものを選ぶかで、コーディネートを引き立てることもあれば、凡庸になってしまう場合もあるからだ。意外性のある靴でコーディネートにひとひねり加えた人は、おしゃれに見える。
例えば、ジーンズにスニーカーではなく、オールデンのように丸いフォルムのローファーを合わせる。軽快なショーツにデッキシューズではなく、ごついマウンテンブーツ。ウールのパンツには、白いキャンバス地スニーカーといった具合だ。そんな上級者になるには、相応のファッション経験が必要。なかなか、一朝一夕にはいかない。
今年の夏、カラーソールのカジュアル靴がヒットしている。これならば、コーディネートにそれほど頓着せずとも意外性をアピールすることができるだろう。歩くたびに足元にカラフルな色が映えて、軽快でチャーミングな印象を与える。
ロックポートは、アメリカのボストン生まれのシューズブランド。最新のファッショントレンドと独自のテクノロジーを駆使した、軽量シューズに定評がある。イエローやライムグリーンのソールが鮮やかで楽しい。スエードのウイングチップを選べば、カジュアルだけでなく、ジャケットスタイルなどにも合わせられる。
スピングルムーヴは、ソールとアッパーを加硫釜で接着するバルカナイズ製法で作られる。こちらのブランドの府中工場(広島県)は、80年の歴史を誇り、国内でこの製法ができる数少ないファクトリーである。巻き上げるようなソール形状の特徴が、色を差すことでさらに強調されている。
スペイン生まれのカジュアルシューズ、カンペール。“農夫”を意味するブランド名からもわかるとおり、ナチュラルなテイストとポッテリとしたフォルムで人気が高い。ブラウンのアッパーにオレンジのソールを組み合わせると、大地と太陽を思わせるようで、履いていて楽しい。
ビジネスウエアの着こなしに、「意外性」は必要ない。驚かせるとしたら、仕事のデキのよさで驚かせてほしい。一方でカジュアルウエアでは、「意外性」を心がけることが、おしゃれへの第一歩のようにも思う。靴のソールという意外なところに意外な色を取り入れることの効果は、思いのほか絶大である。

朝日新聞出版・カスタム出版チームeditor at large兼 アエラスタイルマガジン編集長。男性ファッション誌「MEN’S CLUB」や「GQ JAPAN」などの編集を手掛けた後、2008年4月の会社設立と同時に朝日新聞出版に入社。ニッポンのビジネスマンに着こなしを提案する季刊誌「アエラスタイルマガジン」を、クロスメディアで展開している。
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