モードな街角

イギリスの西の果て、ペンザンスで過ごす休日

  • 文 武・マッカートニー
  • 2013年8月1日
マウント・へイヴン・ホテルから眺めるセイント・ミシェル・マウントの夕暮れ。景色を眺めながら、ゆっくりと地ビールを楽しむ

写真:ホテルの外観。ここが150年前は馬小屋だった。小さな建物で、ほとんどの部屋から海とセイント・ミシェル・マウントが眺められる。スタッフも親切でフレンドリー、サービスのレベルも高いホテルの外観。ここが150年前は馬小屋だった。小さな建物で、ほとんどの部屋から海とセイント・ミシェル・マウントが眺められる。スタッフも親切でフレンドリー、サービスのレベルも高い

写真:ムール貝、アンコウほか5種類以上の魚介類が入った、リッチな味わいの「漁師汁」。その時々に厨房にそろうほぼすべての魚介類が、この一皿に凝縮されるムール貝、アンコウほか5種類以上の魚介類が入った、リッチな味わいの「漁師汁」。その時々に厨房にそろうほぼすべての魚介類が、この一皿に凝縮される

写真:シェフのリー・グローブ氏。伝統にほどよく新しさを加えることが、今、彼にとっての挑戦シェフのリー・グローブ氏。伝統にほどよく新しさを加えることが、今、彼にとっての挑戦

写真:菅木志雄の竹の作品。気の塞ぐような日本の現代社会にインスパイアされ、鉄枠に閉じ込められた、ちょっと古びた竹をたばねてインスタレーションにしている菅木志雄の竹の作品。気の塞ぐような日本の現代社会にインスパイアされ、鉄枠に閉じ込められた、ちょっと古びた竹をたばねてインスタレーションにしている

写真:ジェームス・タレルの作品「スカイスペース」。この中から見上げた空と、暗い内部のコントラストが印象的だジェームス・タレルの作品「スカイスペース」。この中から見上げた空と、暗い内部のコントラストが印象的だ

写真:彫刻庭園のカフェ。クリーンな内装、柔らかな光が心地よい。日曜の午後、家族連れがくつろいでいた彫刻庭園のカフェ。クリーンな内装、柔らかな光が心地よい。日曜の午後、家族連れがくつろいでいた

 この1カ月間、晴天が続いているロンドン。7月下旬は、6年ぶりとなる気温33度以上を記録した。この国の夏はいつも短く、長持ちしてせいぜい2週間。最悪の場合、去年のようにほとんど晴れの日がないまま、秋を迎えるという悲しいこともある。イギリス人は夏、イタリアやスペインなど確実に太陽を浴びられる場所に逃げるしかない。しかし今年の天候は、「イギリスの夏を楽しもう」という気にさせてくれるのだ。

 そこで最近タイミングよく、イギリス人の友人数人から、南西の端の地域、コーンウォールに行くことを薦められた。「グーグル画像を検索してごらん。シチリアみたいな景色が広がっていて、イギリスにいるって信じられないと思うよ」。

 なんと、パソコンの画面には言われたとおり、白い砂、青い海……と絵に描いたような風景が広がっていた。コーンウォール行きを即決!しかもその西の最果て、ペンザンスを目指すことにした。

 ロンドンのパディントン駅から終点のペンザンスまで、電車で約6時間。ロンドンの都会的な街並みから、緑と海岸線、ビクトリア調の家が連なる街へとゆっくりと変化していく車窓の風景を楽しみながら、ペンザンスに到着。潮のにおいとさわやかな海風が、異国に来たような気分にさせてくれる。

 まずは、「マウント・ヘイヴン・ホテル」にチェックイン。ここは、英国の環境保護団体ナショナル・トラストによって保存されている美しく小さな島、セイント・ミシェル・マウントが一望できる絶好の位置にある。11年前に現在のオーナーが物件を買い取り、客室20程度のブティックホテルをスタートした。今や、ブティックホテルという概念は当たり前だが、当時としては斬新だっただろう。しかも、ロンドンの都会などではなく、ペンザンスで……。

 景色はもちろん、筆者がもう一つ楽しみにしていたのは、6月にヘッドシェフに就任したばかりのリー・グローブによる料理だった。彼は、料理人が対決するBBCの番組『マスターシェフ』に2010年に出演し、準決勝まで進出した腕の持ち主。

 「料理にクリエイティビティは大切だけど、創作に意欲を燃やすいろいろなセレブシェフも台頭し、最近飽和状態になってきたなと感じていました。そのとき、マウント・ヘイブンから『これまでのメニューを壊すことなく、新しいことができないか』という相談を受け、参加することを決めたのです」と、グローブ氏は話す。

「既存のお客さまに大きな変化を感じさせない範囲で、メニューに僕なりのアレンジをちょっと加える、というのは簡単そうで難しい。そこにやりがいを感じています」

地魚のスープや盛り合わせなどからは、素材を厳選していることや、モダンさを少し加わえていることを感じさせる。

 翌日は、昨年オープンしたばかりのトレメンヘーレ彫刻庭園に。ここは、修道士が管理していた場所を1290年に陸軍副官のトレメンヘーレが買収、以後600年にわたって一族が所有していた歴史ある土地だ。ジェームス・タレルや菅木志雄などの現代アートの作品が、風景に見事に溶け込んでいた。本格的なランチが楽しめるカフェやお土産がそろうショップもあるので、要チェックだ。

 庭園には熱帯植物が多く、イギリスの冬を越せるものなのか疑問に思った筆者。タクシーの運転手に聞いてみると、「もちろん。この地域は、西の湾岸の海流が常に湿気と暖かい風を送るから、冬でもロンドンみたいに冷えないんだよ」。納得。まるで違う国である。

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PROFILE

武・マッカートニー

東京都生まれ。東京でファッション誌の編集経験を経て単身渡英、英国王立芸術院を卒業。卒業後もロンドンに拠点を置き、フリーランスで英国はもちろん、ヨーロッパや日本の雑誌やブログに寄稿、翻訳業などを続けている。過去にはビクトリア&アルバート美術館におけるエキシビションカタログに寄稿したこともある。

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