イタリアの商店<第37回>イタリアの老舗帽子ブランド工房を訪ねて

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 本欄第19回で「わずか6平方メートルの帽子店」を訪問したとき、ショーケースに飾られていた品の多くは、フィレンツェの工房によるものだった。今回はそうした帽子店に美しくモダンなアイテムを提供する“源流”を紹介しよう。1938年創業の老舗帽子メーカー「ラファエロ・ベッティーニ」である。
 なぜフィレンツェがイタリア屈指の「帽子の里」なのか? はじまりは18世紀。ラファエロ・ベッティーニが本拠とするフィレンツェ県シーニャ一帯で、麦わら帽子作りに適した、茎が長く柔らかい麦の栽培に成功したのだ。3代目オーナーのジョヴァンニ・パピーニ氏の祖父も、14歳で帽子づくりの世界に入った。今日も熟練職人たちが、昔ながらの製法で黙々と縫っている。
 ブランドは、世界屈指の紳士モードの晴れ舞台として知られる「ピッティ・イマージネ・ウオモ」の常連として知られるが、そのアイテムが誕生する現場は、素朴な空気に包まれていた。それでも、ミシンが奏でるリズムとともに、帽子の頂上部分からつばまで縫い上げるさまは、壮観だ。
 英語でイタリアの麦わら帽子を指す「Leghorn」とは、かつてフィレンツェ製の帽子を船積みしていたトスカーナの港湾都市リボルノに由来する。今日もパピーニ氏の帽子は世界に輸出され、パリ、東京といった街でファッショニスタたちを引きつける。
(文 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真 大矢麻里 Mari OYA、Raffaello Bettini Collection)

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    PROFILE

    大矢アキオ(おおや・あきお) Akio Lorenzo OYA

    コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。東京生まれ、国立音大卒(ヴァイオリン専攻)。二玄社『SUPER CAR GRAPHIC』編集記者を経て独立。イタリア・シエナに渡る。雑誌、webに連載多数。日本のさまざまなラジオ番組でコメンテーターとしても活躍中。イタリア在住20年ならではの国際的視点によるライフスタイル、クルマ、デザインに関する語り口には、根強いファンがいる。『Hotするイタリア―イタリアでは30万円で別荘が持てるって?』(二玄社)、『イタリア式クルマ生活術』『カンティーナを巡る冒険旅行』(いずれも光人社)、『イタリア発シアワセの秘密 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)など数々の著書・訳書あり

    大矢麻里

    大矢麻里(おおや・まり) Mari OYA

    イタリアコラムニスト。東京生まれ。短大卒業後、幼稚園教諭、大手総合商社勤務などを経て、1996年にイタリア・トスカーナの古都シエナに移り住む。 国立シエナ外国人大学で学び、現地の料理学校で通訳・アシスタントを務めるかたわら執筆活動を開始。NHKラジオテキスト『まいにちイタリア語』をはじめ、イタリア文化や生活関連の連載・執筆多数。 NHK『マイあさラジオ』など、ラジオ番組でもリポーターとして活躍中。著書に『イタリアの小さな工房めぐり』(新潮社)がある。

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