イタリアの商店<第38回>「ワインの量り売り」を引き継いだ若者

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 イタリアで日々の食卓には、クリスマスを除いて日本で知られているような名産ワインは登場しない。かわりに上るのはイタリアワインの格付けでいう「VINO DA TAVOLA(ヴィーノ・ダ・ターヴォラ)」、テーブルワインである。

 それでも十分にうまい。イタリアの「D.O.C.G.」「D.O.C.」といった厳密な規定の格付けから、ちょっと外れた品であってもだ。

 ジャコモ・グイディさんは1986年生まれの今年31歳。以前は旅行業界で働いていた。「きっかけはロンドン在住時代でした」。海の向こうからイタリアを眺めたことで、故郷では消えつつある、ひとつの良き習慣に気がついた。

 テーブルワインの量り売りだ。その昔、人々は農家や専門店に空き瓶を提げて行き、ワインを量り売りしてもらっていた。必要なときに必要な量だけ買いに行く。繰り返し使用する瓶は、エコ生活の元祖ともいえる。

 そうした折、ジャコモさんは、故郷シエナ市内に残る数少ない量り売りワイン店が、店主の高齢を理由に店じまいするのを知った。そこで2009年にその営業権を買い取った。改装にあたっては、趣味で集めたアンティークをちりばめた。

 「扱うワインはキャンティ地方の農家をつぶさに巡り、自ら厳選しています」とジャコモさん。中部トスカーナの良き伝統を北部でも再現すべく、今年ミラノにフランチャイズ1号店を開店した。

 店の片隅には「ヴィーノ・ディ・ジェズゥ」と名付けられたサーバーがある。訳せばイエズス(キリスト)のワインだ。ジャコモさんたちが選んだワインを一定期間お客に味見してもらう。継続的に扱うか否か「最後の審判」を下すのは、お客なのだ。

(文 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA、大矢麻里 Mari OYA)

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    PROFILE

    大矢アキオ(おおや・あきお) Akio Lorenzo OYA

    コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。東京生まれ、国立音大卒(ヴァイオリン専攻)。二玄社『SUPER CAR GRAPHIC』編集記者を経て独立。イタリア・シエナに渡る。雑誌、webに連載多数。日本のさまざまなラジオ番組でコメンテーターとしても活躍中。イタリア在住20年ならではの国際的視点によるライフスタイル、クルマ、デザインに関する語り口には、根強いファンがいる。『Hotするイタリア―イタリアでは30万円で別荘が持てるって?』(二玄社)、『イタリア式クルマ生活術』『カンティーナを巡る冒険旅行』(いずれも光人社)、『イタリア発シアワセの秘密 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)など数々の著書・訳書あり

    大矢麻里

    大矢麻里(おおや・まり) Mari OYA

    イタリアコラムニスト。東京生まれ。短大卒業後、幼稚園教諭、大手総合商社勤務などを経て、1996年にイタリア・トスカーナの古都シエナに移り住む。国立シエナ外国人大学で学び、現地の料理学校で通訳・アシスタントを務めるかたわら執筆活動を開始。NHKラジオテキスト『まいにちイタリア語』をはじめ、イタリア文化や生活関連の連載・執筆多数。 NHK『マイあさラジオ』など、ラジオ番組でもリポーターとして活躍中。著書に『イタリアの小さな工房めぐり』(新潮社)がある。

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